家電メーカーのバルミューダは2017年9月6日、キッチン家電「Hello Kitchen!シリーズ」の第4弾目としてオーブンレンジ「BALMUDA The Range(バルミューダ ザ・レンジ)」を発表した。直販価格はブラックとホワイトが4万3500円、ステンレスが5万4500円。11月末から12月上旬より出荷予定となっている。

バルミューダが2017年11月末以降に発売する「バルミューダ ザ・レンジ」。写真はステンレスモデルで、直販価格は5万4500円
バルミューダが2017年11月末以降に発売する「バルミューダ ザ・レンジ」。写真はステンレスモデルで、直販価格は5万4500円
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ブラックモデル(直販価格4万3500円)
ブラックモデル(直販価格4万3500円)
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ホワイトモデル(直販価格4万3500円)
ホワイトモデル(直販価格4万3500円)
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 バルミューダ ザ・レンジは庫内容量18Lのコンパクトなオーブンレンジだ。多くのメーカーがさまざまな自動調理モードを搭載しているが、バルミューダ ザ・レンジは「おまかせ 自動あたため」「手動あたため」「飲み物」「冷凍ごはん」「解凍」「オーブン」の5モードのみ搭載。とはいえ、シンプルでスタイリッシュな見た目に電子レンジの「あたため」と「解凍」、オーブン機能と、よく使う機能はしっかりと押さえているという印象だ。

 バルミューダの寺尾玄社長は、さまざまな迷走を経てバルミューダ ザ・レンジにたどり着いたという。

バルミューダの寺尾玄社長
バルミューダの寺尾玄社長
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 「電気炊飯器の開発を経て、『冷凍ご飯を売ろう、専用のレンジを作ってセットにしよう』というアイデアもあったし、冷凍ご飯と飲み物程度なら温められる『世界最小のレンジを作ろう』と考えたこともありました。企画倒れになったり、いろんなチャレンジをして、やっと社会に提案できるちょうどいい電子レンジを仕立てることができました。キッチンを“少し楽しくする”オーブンレンジです」(寺尾社長)

 同社は現在コーヒーメーカーなど複数の家電を並行して開発しているが、「自宅にあるオーブンレンジの具合が悪くなったことから、急ピッチで開発を進めた」と寺尾社長は話す。

 「家電量販店で電子レンジコーナーを見ると、ワインレッドしかない。しかし、どう考えても私の家のキッチンにワインレッドは合わないんですよ。また、ボタンが多すぎて操作方法が分からない。『操作が複雑でおしゃれじゃない』のは問題だなと。放っておくとこのうちのどれかを選ばざるを得ないため、開発チームに急がせて作ったのが、今回のバルミューダ ザ・レンジです」(寺尾社長)

 その特徴の1つは、先述した“シンプルな操作”だ。「おまかせ 自動あたため」は庫内の温度センサーで食材の温度を測りながら最適な温度まで温める電子レンジ機能。「手動あたため」はワット数と時間を指定するものだ。ワット数は100/500/600/800W(800Wは最長3分まで)から選べる。

「飲み物」モードはコーヒーやミルク、お酒などを温めるモードで、「冷凍ごはん」モードは冷凍したご飯(1杯分150g、2杯分300gを選べる)を温める専用モードだ。「解凍」モードは重さを指定して「解凍」もしくは「半解凍」を選び、食品を解凍できるというもの。「オーブン」は100~250℃まで10℃刻みで設定でき、予熱も発酵も可能だという。

左のレバーで動作モードを選択する
左のレバーで動作モードを選択する
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右のダイヤルで温度などを選択する
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中央のディスプレーにモードやワット数、温度設定などが表示される
中央のディスプレーにモードやワット数、温度設定などが表示される
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 多くのメーカーが採用している自動調理モードは搭載していないが、「アクアパッツァを作りますか? パエリアを作りますか?」と寺尾社長は問いかけ、電子レンジのマイクロウェーブ加熱(電磁波によって食材の内部の分子を振動させて加熱する方式)のすばらしさをアピールした。

 「電子レンジはそもそもすばらしい道具なのです。我々がオーブンレンジ作りに取り組むにあたって重視したのは、新しい“コト”を起こすのではなく、電子レンジの“再パッケージング”です。そこで機能を必要最小限にし、直感的に使いやすくシンプルにまとめました」(寺尾社長)

 寺尾社長は以前から「バルミューダは『モノ』より『体験』を売っている」と話している。そこで「とても簡単においしいものが出てくるいい体験は何か」と話していたところ、社内から「レストランじゃないか」という声が上がったのだそうだ。そこでレストランをイメージするようなデザインに仕上げたと寺尾社長は話す。

ギターとドラムの音が出来上がりを知らせる

 もう1つユニークなのが「音」だ。多くのオーブンレンジはタッチしたりダイヤルしたりするたびに電子音が鳴るが、バルミューダ ザ・レンジは、左側にあるモード選択レバーを回すたびにギターの弦をはじく音が聞こえ、タイマーのカウントダウン中にはドラムがリズムを刻む音が聞こえてくる。

 「忙しくてイライラとしている、朝の殺伐とした感じを少しでも何とかできないかと考えたのがきっかけです」(寺尾社長)

 楽器の音は、バルミューダ ザ・トースターと同じ電子音に変えることも可能だが、わざわざプロのミュージシャンに依頼して録音した楽器の音を内蔵するというのはなかなかユニークだ。しかも、音量を調節できる。こうした遊び心に引かれる人も多いのではないだろうか。

■バルミューダ ザ・レンジの操作音を寺尾社長が解説
右側のダイヤルを長押しすることで設定画面が表示される。操作音をザ・トースターと同じ音に変更したり、音量を変更したりできる
右側のダイヤルを長押しすることで設定画面が表示される。操作音をザ・トースターと同じ音に変更したり、音量を変更したりできる
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グリルもスチーム調理もないワケは?

 バルミューダ ザ・レンジは多くのオーブンレンジが搭載している「グリル調理」(天面のヒーターで焼き目を付ける調理)機能や「過熱水蒸気調理」(100℃以上に加熱した水蒸気で行う調理)機能は搭載していない。その理由を問うと寺尾社長は、普段の調理における電子レンジ(マイクロウェーブ加熱)のすばらしさと、特別な料理を作るためのオーブン機能の重要性について語った。

「オーブン機能を省いた単機能レンジを発売するという考え方ももちろんありましたが、売れないだろうなと思いました。単体レンジは年間100万~120万台の安定した需要がありますが、買われるのはどちらかというと一人暮らしの方です。家族で使う場合は、週末になにか特別な料理を作りたいという願いがあるのです。そのたまに作る特別な料理を調理できるオーブン機能は省けないと思いました」(寺尾社長)

 一方で、なぜグリル機能や過熱水蒸気調理を含めたスチーム調理機能を省いたのか。

 「オーブンとグリルの違いは上火と下火の違いです。上火で焼き付けたいなら『ザ・トースター』という最強マシンがあるので、こちらはオーブンができればいいと考えました」(寺尾社長)

扉部分にレストランの外構をイメージしたようなライトが内蔵されており、調理終了後などに光るようになっている
扉部分にレストランの外構をイメージしたようなライトが内蔵されており、調理終了後などに光るようになっている
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 寺尾社長は続ける。「スチームオーブンも確かにいい。でもマイクロウェーブを使って温めるというのはすごい技術なのです。レンジは、そもそもすばらしい。だからこそ90%台後半まで普及し、みんなが使っています。でも、そもそもそれだけすごいということをみんな忘れていて、どちらかというと『これはキッチンに合わないよね』などと言いながら(不満を抱えながら)買っているのが電子レンジの実態だと思っています。でも本当はすごいのです。今回、我々はスチームなどを使ってものを温めることを考えるよりも、この技術(マイクロウェーブ加熱)をリスペクトして、再パッケージしたのが今回の商品です」

 バルミューダ ザ・レンジはシンプルな機能を搭載しつつも、ギターやドラムなどのアコースティックな操作音や、調理が終わるとスポットライトのような光がともるなどの仕組みを採用している。

 「1分で食べ物が温まるというのは、そもそもすごくうれしいことなんです。そこでもう1回、シンプルだけどとても力強く調理してくれることを前に押し出して、あとは全部簡単にする。それに音や光などのちょっとした楽しみを付けました」(寺尾社長)

 筆者はバルミューダ ザ・レンジを実際に見て触ってみて、無駄なものをそぎ落とした潔さにバルミューダらしさを感じた。グリル機能やスチーム機能は決して無駄なものではないが、「たまに食べる特別な料理を作るためには、オーブンさえあればいい」という考え方は十分に理解できる。機能を増やせば増やすほど操作が煩雑になり、初心者にとって使いにくくなるためだ。コンパクトで設置場所に困らず、ブラック、ホワイト、シルバー(ステンレス)のカラーはインテリアにもなじみやすい。操作パネルの文字も最小限だが、ディスプレーにモードや設定温度などが表示されるので、誰でも迷わずに使えることだろう。

 スチーム機能を搭載していないオーブンレンジとしては、5万円前後という価格帯は決して安くはない。とはいえ、大手メーカー各社のプレミアムモデルが発売当初10万円以上もするのと比べると、リーズナブルにも思えてくる。シンプルかつスタイリッシュなデザイン、シンプルな機能と操作性、さらには音や光の、ほんのちょっとした遊び心。バルミューダ ザ・レンジがキッチンに入ってくることを想像すると、ワクワクするという人も多いのではないだろうか。ザ・トースターやザ・ゴハンなどに続いて、またヒット商品になりそうだ。

(文・写真/安蔵 靖志=IT・家電ジャーナリスト)

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