クルマよりずいぶん遅れてやってきた二輪ABS

 クルマやバイクにかかわらず、ブレーキはタイヤの回転が停止するロック寸前の強く利かせた状態が制動力が最も高い。しかし強く利かせすぎて車輪がロックすると、逆に制動距離は長くなってしまう。そこで、車輪がロックしかけると(車速に対して車輪の回転速度が極端に落ちてロックしそうになると)ブレーキの圧力を瞬間的に下げて(リリースして)ロックを回避する。その後すぐにブレーキの圧力を戻し、制動力を最大に働かせるということを自動的に繰り返すことで、車輪をロックさせないようにする装置が作られた。これがABSだ。

 ABSの構成は、車輪の回転数を見張るセンサー、ブレーキの油圧を制御する回路(アクチュエーター、モジュレーターなど呼び方はいろいろ)、それと全体をコントロールするECU(Electronic Control Unit)などからなっている。

 クルマでは早い時期からABSが実用化された。初のABSは1970年代に登場し、1980年代には多くのクルマに搭載が広がっていった。対してバイクはというと、1988年の「BMW K100RS」に搭載されたのが初めて。しかしこれは突出して早く、バイクでABSが一般化したのは2000年代も後半に入ってからだ。

二輪としてABSが搭載されたBMW「K100」系。写真は1989年に登場したBMW「K100RS 16V」。シートの下に「ABS」の文字が見える
二輪としてABSが搭載されたBMW「K100」系。写真は1989年に登場したBMW「K100RS 16V」。シートの下に「ABS」の文字が見える
[画像のクリックで拡大表示]
BMW「K100」に搭載されたABSの図。アクチュエーターがブレーキ圧をコントロールしている。図ではバッテリーやECUなどを省略している
BMW「K100」に搭載されたABSの図。アクチュエーターがブレーキ圧をコントロールしている。図ではバッテリーやECUなどを省略している
[画像のクリックで拡大表示]

 バイクは車輪のロックが転倒に直結するため、クルマ以上にABSが有効なはず。しかしクルマに比べてバイクでの採用が遅れたのにはいくつか理由がある。

 まずABSのユニット(アクチュエーターなど)が大きかったため。バイクに無理なく搭載するために、小型・軽量なユニットの開発を待たなければならなかった。

 もう一つは、バイクが非常にデリケートであるということ。古いクルマのABSを利かせたことがあるだろうか? バコンバコンとブレーキペダルにキックバックが盛大に返ってくる。タイヤが4つあり、転倒の危険のないクルマならキックバックが多少大きくてもなんとかなるが、バイクなら転倒してしまうかもしれない。バイク用ABSはクルマ用に比べ、ブレーキのロック⇔リリースの動作が非常に速く、なおかつキックバックが少なくてスムーズに動作することが求められる。その開発に時間が必要だったのだ。

 そして三つ目はコスト。クルマ用でもバイク用でも、ABSの構造は基本的に変わらない。するとクルマに比べて価格の低いバイクには、ABSのコストが大きくのしかかってくる。これらがバイクへのABS搭載が遅れた主な理由だ。

バイク用のABSの進化。初期のものから比べると、最新ABSは10分の1の重さになっているのだから驚く(資料提供:ボッシュ)
バイク用のABSの進化。初期のものから比べると、最新ABSは10分の1の重さになっているのだから驚く(資料提供:ボッシュ)
[画像のクリックで拡大表示]
バイク用ABSの主なユニット。左側のブレーキディスクの内側にある連続した溝で車輪の回転を検知し、ブレーキ圧を制御する
バイク用ABSの主なユニット。左側のブレーキディスクの内側にある連続した溝で車輪の回転を検知し、ブレーキ圧を制御する
[画像のクリックで拡大表示]