星野リゾート(長野県軽井沢町)は、宿泊客が宿泊施設のウェブサイト上でパラグライダーやラフティングといったアウトドア・レジャーを予約できるようにする取り組みを進めている。紹介するアウトドア・レジャーは星野リゾートが提供するサービスに限らない。星野リゾートが宿泊施設の周辺でさまざまなサービスを提供する事業者を開拓している。こうした取り組みは、ホテル業界でも極めて珍しい。体験したいアウトドア・レジャーの予約の空き状況に併せて旅行の予定を組む、といった使い方も可能だ。

 観光庁発表による2016年の宿泊施設の客室稼働率は、全体平均で60.0%となった。旅館は37.9%、リゾートホテルは57.3%と低迷する一方、星野リゾートは平均70%以上という驚異的な客室稼働率を記録。その星野リゾートが、予約時点から宿泊施設の土地に併せた価値の提案をすることで、顧客満足度を高めようとしている。

「星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳」のサイトでは様々なアウトドア・レジャーを提案
「星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳」のサイトでは様々なアウトドア・レジャーを提案
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「八ヶ岳ワイナリー散歩」など地域ならではのアウトドア・レジャーも用意する
「八ヶ岳ワイナリー散歩」など地域ならではのアウトドア・レジャーも用意する
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レジャー予約の複雑さが機会損失に

 最初にこの取り組みを始めたのは「星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳」だ。リゾナーレ八ヶ岳はワインの産地で名高い山梨と長野の県境に位置する。同施設の周辺では冬はスキー、夏には渓谷でのトレッキングと豊富なアウトドア・レジャーを楽しめる。これらのアウトドア・レジャーを目的とした宿泊客も多く、「宿泊客の獲得やリピート利用を促すうえで、アウトドア・レジャーは特に重要な要素になっていた」(グループマーケティング統括リゾナーレマーケティングユニットディレクターの嶋田泰也氏)。

 ところが、以前のウェブサイトではこれらのアウトドア・レジャーをネットで予約できる仕組みが整っていなかった。リゾナーレ八ヶ岳の宿泊予約は9割がウェブサイトから。にもかかわらず、周辺で利用できるアウトドア・レジャーの予約については、宿泊客がリゾナーレ八ヶ岳やアウトドア・レジャー事業者に電話で問い合わせをする必要があった。

 しかも、リゾナーレ八ヶ岳が問い合わせを受けた場合、担当者がその都度、アウトドア・レジャー事業者に予約の可否を確認して顧客に連絡をしていた。すでに予約で埋まっている場合にはそれが原因で宿泊を再検討されるなど、機会損失にもつながっていた。

 また、宿泊予約とアウトドア・レジャーの予約情報を一元管理していなかったため、管理が複雑化。顧客が宿泊施設をキャンセルした場合に、アウトドア・レジャーの予約はキャンセルできていないという事態を引き起こしていた。この課題を解決して宿泊客により充実した旅行を楽しんでもらうために、アウトドア・レジャーの予約サイトを運営するそとあそび(東京都品川区)の強力を得た。

 そとあそびは、パラグライダーやラフティング、乗馬、スキューバダイビングといったアウトドア・レジャーの予約サイト「そとあそび」を運営している。同サイトには40ジャンル、3000プランが掲載されており、利用者はジャンルや地域などから好みのレジャーを探し出して予約できる。それまで電話やFAXでしか予約できなかったアウトドア・レジャーをネット予約で可能にしたベンチャー企業だ。

 消費者向けサービスを提供する一方で、アウトドア・レジャー事業者向けには予約台帳システム「ウラカタ」を提供している。これは、レジャー事業者が、電話やウェブから受け付けた予約情報を一元管理するためのツール。事業者は予約可能な日程や在庫情報を登録することで、ウェブからの予約の受け付けが可能になり、同時に在庫管理も簡便になる。

星野リゾートの会員IDでアウトドア・レジャーを予約できる
星野リゾートの会員IDでアウトドア・レジャーを予約できる
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レジャー予約データを接客にも活用

 星野リゾートはこのウラカタを活用した。リゾナーレ八ヶ岳と取り引きのあるアウトドア・レジャー事業者に対して、ウラカタに在庫情報を登録してもらう。この在庫情報を、リゾナーレ八ヶ岳のウェブサイト上の「アクティビティ」のページに掲載している。宿泊客はアクティビティのページにあるカレンダーから、宿泊日時を指定すると予約可能なアウトドア・レジャーの一覧が表示される。好みのレジャーを選び、予約可能であればそのまま予約できる。

 ウラカタの利用に併せて、予約システムも既存の会員システムと連携した。宿泊客は星野リゾートの会員IDでアウトドア・レジャーを予約できる。予約するための会員IDが一本化されたことで、宿泊予約とアウトドア・レジャーの予約を一元管理できるようになった。宿泊施設の予約キャンセル時に、システム的にアウトドア・レジャーも自動キャンセルされる仕組みも開発した。

 データの一元管理は施設内での接客にも効力を発揮する。従来は、宿泊客がどんなアウトドア・レジャーを予約・利用しているのかは、施設側では全く把握できていなかった。今回のシステム連携により、宿泊施設側でも過去まで遡って把握可能になった。これにより「フロントで宿泊客に対して、以前利用したアウトドア・レジャーに関連するサービスを案内して利用を促すといった接客もできるようになる」(嶋田氏)。

スキー教室「雪ッズ70」など段階的に学べるアウトドア・レジャーの提案に予約データを活用する
スキー教室「雪ッズ70」など段階的に学べるアウトドア・レジャーの提案に予約データを活用する
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 例えば、段階的に学べるアウトドア・レジャーはその一例だ。星野リゾートは今冬、70のステップでスキーを学ぶ子供向けのスキー教室「雪ッズ70」をリゾナーレ八ヶ岳と「星野リゾート アルツ磐梯」で提供する。このスキー教室でステップ30まで進めた顧客が、次に宿泊予約をしたときに次のステップの利用を促すといった具合だ。

 予約の煩わしさを解消したことで、「アウトドア・レジャーの予約が増加。売り上げが実際に増えている」と嶋田氏は言う。宿泊予約の段階から、周辺での遊びも含めて総合的に提案する。そうした、おもてなしの強化でリピート利用の拡大を狙う。現在、リゾナーレ八ヶ岳への導入を皮切りに、「星野リゾート 青森屋」「星野リゾート 界 加賀」のほか8つの施設のサイトで運用をしており、今後、さらに他の施設のサイトへと対応範囲を広げていく方針だ。

(文/中村勇介=日経トレンディネット)

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