近年は“アウトドアのインドア施設”として、各地にクライミングジムが急増し、クライミングを楽しむ人々が増えている。そもそもクライミングとは岩壁をよじ登ることで、ロープを使用して登る「ルートクライミング」や、自分の手足だけで登る「ボルダリング」などのカテゴリーがある。

 そんななか、老舗登山用品店「好日山荘」が自社クライミングジムを展開したり、各社からクライミング入門誌が続々と発売されたりといった動きもある。その要因として2020年の東京五輪に「スポーツクライミング(※1)」が追加されたことが大きいと思われ、今後クライミング業界はますます盛り上がっていくものと考えられる。

 では現場ではどのように変化を感じているのか。各社に聞いた。

※1「スポーツクライミング」とは、リードクライミング、スピードクライミング、ボルダリングの3種目からなる複合種目のこと

老舗登山用品店が全国で16店舗のジムを運営

 1924年創業の「好日山荘」は、神戸市に本社を置くアウトドア用品店だ。登山、キャンプなどのアイテムを多数取り扱い、新宿、池袋、銀座といった都心部を含め全国に52店舗を構える。

 その好日山荘がクライミングジムの経営を始めたのは2010年4月。「グラビティリサーチ」という屋号で神戸市に1号店をオープンした。翌2011年には大阪難波に国内最大級の広さを持つ2号店を出店し、2017年7月現在、全国で16店舗を運営している。

 なぜ、アウトドア用品店がクライミングジムを始めたのか。

未経験者~上級者レベルまで楽しめる。必要な道具は施設でレンタル可能
未経験者~上級者レベルまで楽しめる。必要な道具は施設でレンタル可能
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実は、登山ブームの減退がきっかけだった

 グラビティリサーチ広報担当の土方尚樹氏は「昨今の登山ブームの減退で縮小していく市場に対し、新たな顧客を獲得するための手段の一つとして始めた」と内情を明かす。言われてみれば、2009年ごろからの“山ガール”ブームも徐々に落ち着きを見せはじめ、アウトドア業界としては次の一手を模索しているように感じられる。

 一方、クライミング人口は増えており、これは「ジムが増加していることと、五輪競技に追加されたことでさまざまなメディアに露出するようになったことが大きい」と土方氏。

 近年のクライミングジムは駅前の好立地であったり、明るくきれいで入りやすい雰囲気で、親切なスタッフもいたりと、誰もが気軽に体験しやすい環境になってきているという。同社でも全店ベースで利用者数は年々増加し、リピーターも増えているそうだ。

 「20~30代の利用者が最も多いですが、小学生から80代の方まで、年齢層は幅広いです。男女比も多少男性のほうが多いものの、女性のお客様もたくさん来ていただいています」(土方氏)。

 グラビティリサーチも駅から徒歩数分の店舗が多く、清潔感のある更衣室や手足洗い場があるなど使い勝手がいい。またジムには母体となる好日山荘が併設されており、最新のクライミングギアはもちろん、ウエアなどもその場でチェックできる。あちこち歩き回らずに済むという点も、増えてきているという女性客の心をつかんでいるようである。

一部の店舗ではロープエリアも設置。壁の高さを必要とするロープクライミングを行える施設は貴重な存在
一部の店舗ではロープエリアも設置。壁の高さを必要とするロープクライミングを行える施設は貴重な存在
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日本代表選手と戦える「クライミングコンペ」も人口増加の理由

 また多くのプロクライマーをサポートしている「ザ・ノース・フェイス」でPRを担当する永山貴博氏は、「クライミングはスポーツ全体の枠で見ると、まだまだ競技人口の少ないジャンル。国内のコンペに参加すれば、素人でも五輪の日本代表クラスのクライマーと戦うことができる。身近でプロの技術を目の当たりにできたり、温度を感じられたりするのも魅力なのでは」と、クライミング人口が増加した理由について話す。特に五輪の舞台をけん引する選手たちと同世代の10~20代の増加が目立つという。同世代だからこそモチベーションの向上にもつながるだろうし、親近感も湧くのだろう。

 大手クライミングジムがキッズスクールを積極的に運営していることも、若い世代の利用が増えた理由の一つだろう。2017年5月放送のTBS『情熱大陸』では21歳の若きプロフリークライマー楢崎智亜(ならさきともあ)氏がクローズアップされており、彼の存在も若者たちに大きな影響を与えたに違いない。

クライミング誌も好調

 エイ出版社のアウトドア編集部、糠田光海氏もまたクライミング誌の売れ行きが好調だと話す。同社が2013年2月に発行した『インドアボルダリングBOOK』は在庫が早くに底をついたという。スポーツクライミングが五輪の正式種目となったのも後押しとなり、今年3月に同タイトルを再編集して発行。加えて外岩でのクライミングに特化した『クライムオン!!』を7月に創刊している。自身もクライミングジム通いをしている糠田氏は「ここ5~6年は10代の若い女性が大幅に増えたようだ」と話す。

エイ出版社『最新版 インドアボルダリングBOOK』(1500円)には、ボルダリングのハウツーが分かりやすく解説されている
エイ出版社『最新版 インドアボルダリングBOOK』(1500円)には、ボルダリングのハウツーが分かりやすく解説されている
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 最後に、ビジネスパーソンがクライミングを始める際に、ぜひ使ってもらいたいアイテムを紹介しよう。基本は「クライミングシューズ」「チョーク&チョークバッグ」「動きやすい服装」があればOKだ。たいていのクライミングジムは2000円あれば1日中遊ぶことができるし、天候に左右されないため、外で行うアウトドアアクティビティーと違って日時も限定されにくいので、自慢できるアイテムを手に、挑戦してもらいたい。

レッドチリ「デュランゴVCR」

レッドチリ「デュランゴVCR」(9500円)
レッドチリ「デュランゴVCR」(9500円)
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 足裏がフラットで、幅の広いラスト(靴を作るための原型)を採用しているため、長時間の使用でも痛みが出にくい。高いホールド力のあるベルクロ仕様。アッパーにはデニム地を使い、ファッショナブルさを持ち合わせている。

ラ・スポルティバ「フィナーレVS」

ラ・スポルティバ「フィナーレVS」(1万5500円)
ラ・スポルティバ「フィナーレVS」(1万5500円)
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 イタリアの工場でひとつひとつ手作業で作られたモデル。2本締めのベルクロテープで着脱しやすく、クライミングシューズのキツさに慣れていないビギナーの足にやさしくフィットする。アッパーの通気性がよく、長時間履いても足が蒸れにくい。

ブラックダイヤモンド「ウルトラライトチョークバッグ」「ホワイトゴールド50gチョークボール」

左:ブラックダイヤモンド「ホワイトゴールド50gチョークボール」(756円)、右:ブラックダイヤモンド「ウルトラライトチョークバッグ」(3300円)
左:ブラックダイヤモンド「ホワイトゴールド50gチョークボール」(756円)、右:ブラックダイヤモンド「ウルトラライトチョークバッグ」(3300円)
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 「ウルトラライトチョークバッグ」は、超軽量のダイネックスファブリックを使用し、重量40gという驚きの軽さ。手を差し込みやすい形状もポイント。「ホワイトゴールド50gチョークボール」は、ボールを握るだけで簡単にチョークを付けられるタイプで、チョークが飛散しにくい。

 東京五輪まであと3年。今春にはリードクライミングの日本代表が選出され、着々と準備が整っていく。日本には世界に通用する有望な選手たちが多くいる。選手の活躍に期待するとともに、今後のクライミング業界の動向も目が離せない。

(文/山畑理絵)

山畑理絵(やまはた・りえ)
フリーランスライター/アロマテラピーインストラクター(AEAJ認定)
音楽プロダクションの制作、アウトドアショップの販売員を経てライターになる。のんびり日帰りハイクからテント泊縦走、トレイルランニング、ボルダリング、スキー、キャンプなど、四季を通してフィールド三昧の日々。雑誌「ランドネ」「PEAKS」「山と渓谷」など、アウトドア媒体をメーンにライター活動をするかたわら、AEAJ認定のアロマテラピーインストラクターとして、「山とアロマ」をテーマに神出鬼没なワークショップを展開している。