ここ最近、若い女性を中心にタピオカを使ったドリンクが人気を集めている。タピオカは1990年代に一時的にブームとなったが、数年前から日本での人気が再燃。タピオカブームを生み出したと言われる台湾から有名ブランドの進出が相次いでいる。だが、第一次ブームから20年近くなった今、なぜ再び盛り上がりを見せているのだろうか。
台湾スイーツの1つとして注目
現在のタピオカドリンクブームの主役はアイスミルクティーにタピオカを入れた「タピオカミルクティー」だ。台湾で古くから茶藝館(台湾の伝統的なスタイルの中国茶カフェ)を経営している劉漢介氏が立ち上げたカフェ「春水堂(チュンスイタン)」が考案したと言われている。その春水堂の海外1号店が、2013年7月にオープンした「春水堂 代官山店」(関連記事 「“発祥の店”上陸で『タピオカミルクティー』人気再燃! でも実は中国茶の店だった!? 」)。 同店のオープンが日本での再ブームのきっかけとなった。
春水堂を運営するオアシスティーラウンジの木川瑞季氏は、今回のタピオカミルクティーのブームについて2つの理由を挙げる。
まず、ここ10年弱で台湾旅行や台湾の食に対する人気が急激に高まっていること。海外旅行先に関する人気ランキング(日本旅行業協会、2015年)では長年にわたり首位を独占していたハワイを抜いて台湾がトップに立っている。また、2014年、15年には台湾を代表するスイーツ店の日本1号店が次々にオープンし、話題を呼んだ(関連記事 「この夏は“進化系かき氷”ラッシュ! 泡、味チェンジ、ドロドロ系…」「表参道“日本初上陸”の仕掛け人、次に狙うのは? トランジットジェネラルオフィス 中村貞裕氏」)
2つ目の理由は健康に対する意識の高まりだ。「『茶は健康にいい』というイメージがあるため、健康意識の高い女性などを中心に茶を専門に扱う店に足を運ぶようになっている。もともと日本人は茶が好きだが、春水堂が日本に進出する以前は本格的な入れ方で茶を提供する店がほとんどなかった」(木川氏)。つまり、タピオカそのものより中国茶などの茶専門店が注目をされるようになり、その結果として主力商品であるタピオカミルクティーの人気が高まっているのだという。
また、テイクアウト率が高いのもタピオカミルクティーの特徴。春水堂の売上の4割はテイクアウトだという。2018年7月20日にはテイクアウト中心の新ブランド 「TP TEA」をニュウマン新宿にオープンしている。
「コーヒーに飽きた人」がターゲット
台湾発のタピオカドリンクを扱うブランドで最も勢いがあるのが、2006年に台湾でスタートした「ゴンチャ」。現在は16の国と地域で約1400店舗を展開している。2015年9月に東京・原宿に日本1号店をオープンし、その後約3年間で16店舗にまで増やした。
春水堂と大きく異なるのはカスタマイズの幅広さ。基本のお茶は「ジャスミン グリーンティー」「ウーロンティー」「阿里山 ウーロンティー」「ブラックティー」の4種類から選び、甘さ、氷の量も4段階から選べる。また、トッピングはパール(タピオカ)、ミルクフォーム、アロエ、ナタデココ、バジルシード、グラスジェリーの6種類から最大3つまで選べる。グランドメニューは30種類ほどで、アレンジの組み合わせで2000種類ほどにもなるという。
ゴンチャを運営するゴンチャジャパンの葛目良輔社長兼COOも、「タピオカドリンクのブームが続いているのは本格的な中国茶が飲めるからではないか」と分析している。「シアトル系、サードウェーブとコーヒーブームが続くなか、そのほかの選択肢も欲しいと感じている人は多い」(葛目社長)というのがその理由だ。
また、ターゲットは「コーヒーに飽きている人、もしくはコーヒーが苦手でカフェが好きな人」。そのため、海外のゴンチャでは取り扱っているコーヒーを、「一般的なカフェと混同されてしまう恐れがある」(葛目社長)として日本では扱っていない。店舗の雰囲気も重視し、カフェが似合うトレンドスポットなどに出店しているという。
「海外の人気店が日本に進出する場合、1号店オープン時が最も来店客数が多く、店舗数が増えるのに従って集客が落ちていくことが多い」(葛目社長)。だが、ゴンチャは店舗数が増えても既存店の客数が増加し続けているという。「まだ需要を満たしきれていない状況。2020年までに100店舗に増やしたい」と葛目社長は意気込む。
初出では「葛目良輔社長兼CEO」としておりましたが、「葛目良輔社長兼COO」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。 [2018/8/16 11:30]
5ブランドを一気飲み比べ!
春水堂、ゴンチャ以外にもタピオカドリンクを扱う5ブランドを取材し、代表的な商品を実際に味わってみた。
2017年8月に表参道に1号店をオープンした「THE ALLEY(ジ アレイ)」の人気メニュー「ロイヤルNO.9 タピオカミルクティー」はフルーツのような華やかな香りが印象的。小山緑茶など茶が好きな人が好むメニューもそろえている。
1997年に台北で創業し、2017年2月に渋谷に1号店を出した「CoCo都可(ココトカ)」はミルクの風味、甘さ、お茶の香りがどれも強く、特にタピオカはほかのブランドに比べて最もかみごたえがあった。また、2013年9月に茨城・つくばに1号店をオープンした「Chatime(チャタイム)」はタピオカそのものの甘さが強く、デザート感覚で楽しめる。
日本発も! 国内にタピオカの自社工場あり
台湾の人気店進出が続くなか、日本生まれのブランドも。2003年に新宿に1号店をオープンした「PearlLady(パールレディ)」は国内にタピオカの自社工場を持っており、「ブラック」「カラー」「チョコたぴ」(チョコレート入り)など、オリジナリティーのあるタピオカを使用しているのが特徴。同じく日本生まれの「BullPulu(ブルプル)」は2012年、亀有に1号店をオープン。台湾茶ベースなどバリエーションが豊富なのが売りだ。
ブランドによって味がまったく異なる!
7ブランドを比べて、同じ「タピオカミルクティー」というメニュー名でも、お茶の香りの強さ、甘さ、さらにタピオカのサイズや質感にそれぞれ特徴があることが分かった。タピオカの粒の大きさが変わるだけで食感も異なり、かみごたえの強弱も変わってくる。これだけの違いがあるために、それぞれのブランドのファンがつき、共存しているのだろう。
ブームが盛り上がることによって近隣に類似ブランドが乱立することもあるが、「専門性の高い茶の店が新たにオープンすることで集客力が高まり、周辺の同業店舗の売上も伸びる傾向がある」とゴンチャジャパンの葛目社長は話す。さらにタピオカはホットドリンクとの相性も良い。そのため、季節による売り上げの変動が少ないこともブームが長続きする要因かもしれない。また、タピオカが入っていることで満腹感も得られて、カフェでドリンクと甘いものを頼むよりは安上がりという点も若年層から支持を集めた理由の一つだろう。
(文/桑原恵美子)
記事のタイトルを「タピオカドリンク大戦争 コーヒーに飽きた人から支持」から「タピオカドリンク大戦争 ブーム再燃の理由とは?」に変更しました[2019/12/10 13:30]