雑貨とは「モノに新たな価値を発見し、光を当てること」

 さて、今回の展示、文化屋雑貨店からの〈あなたが文化屋に置きたいものを〉というリクエストは、簡単なようでいてなかなか難しい。雑貨とはいったい何なのか、ということを考えはじめると、わかるようでわからない。

 やはり出展者である大阪のスタンダードブックストアの中川和彦さんと6月にお会いしたとき、「文化屋点、なに出すか決めましたか?」と聞くと、「いやー、まだなんですよ。どうしよう」と中川さんも結構悩んでおられた(中川さんは結局古本を出品。でもただの古本にあらず。本屋さんならではのすばらしいコンセプトの商品だった)。

 僕が悩みに悩んで出品したのは、十年ほど前から家や旅先、街なかなどで、カメラ代わりにテレコ(テープレコーダー)を使って趣味で録りためた環境音のカセットテープ。特別な音は入っていない、風や木、電車、鳥の鳴く声などを10分のカセットテープに編集(ダビング)して、短い文章をライナーノーツとして封入した(1本500円)。

僕が出品したカセットテープ(1本500円)
僕が出品したカセットテープ(1本500円)
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 自分なりに文化屋や太郎さんの理念、雑貨の価値とは何か、などを考えたとき、それは世間一般では価値を持たないものに、手を加えたり、編集したりすることで、価値を与えることなのではないかと思った。もう少し正確に言えば、忘れられたり、見えなくなっていたりする価値を発見し、再び光を当てる、ということになるか。発見者のアイデアと、手間をかけることで、あるものに新たな意味や価値を与えること。

 倉庫の片隅で忘れ去られていた何かが、文化屋という場を通過することで、商品として生まれ変わる。その過程が文化屋の要なのではないか。そこには隠れた魅力を発見する目と、そしてそこに価値を生む手がある。

 というわけで、我が家で無用の産物として眠っていた膨大なカセットテープの山を押し入れから引っ張り出し、そこにある僕の個人的な記憶や思い出といえるそれらから短い時間を切り出してみることにした。僕は小説家だが、作品としてではなく雑貨、あくまでレディメイドな製造物として出品したかったので、ライナーノーツにも記名はしていない。今はカセットテープを再生する機器がない家も多いが、そこに誰かが録音した何かの音が入っている、と想像しながら聴かずに飾っておくのでもいい。そこには、そのモノと内容物である音に向けた想像力という価値が生まれる(はず)。

 僕の商品はともかく、会場には出展者それぞれの文化屋観、雑貨観が息づいた商品がひしめいている。下は20歳の大学生から、上は71歳の紺野さんまで(その差50歳!)、世代も職業も違う人たちの目と手が作り出す、商売は二の次の多様性。「なんだこれ?」という変なものがたくさんある。

 見る人によって、興味を持つ商品はきっと全然違って、見ている側が試されているような気にもなる。雑貨に興味があろうがなかろうが、気になるものを探してみよう。きっと何か面白いと思えるものがあるはずだし、たとえ何も面白くなかったとしても、店を出るときには、あなたはあなたにとっての面白さとは何か、について考え始めているはずだ。

「第1回文化屋雑貨点」は2016年7月1日~31日、営業時間は12~20時(水曜定休)。場所は「手と花(TETOKA)」(東京都千代田区神田司町2‐16‐8)
「第1回文化屋雑貨点」は2016年7月1日~31日、営業時間は12~20時(水曜定休)。場所は「手と花(TETOKA)」(東京都千代田区神田司町2‐16‐8)
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(文/滝口悠生、写真/シバタススム)