占い師の「猿酒」から、中華料理店主の油絵まで

 文化屋雑貨点には7月1日のオープンから何度か様子を観に行ったが、連日お客さんの波は途切れない様子。店頭にはかき氷ののぼりが立ち、キラーくんがかき氷を売っている。旧式の氷かき器を導入し、秩父から仕入れてきたシロップや多彩なリキュール類をそろえている。こうした、「そこまでする必要ある?」というこだわりを貫くのはいかにもキラーくんの仕事だ。何をすれば商売になるかではなく、“どんなものを売りたいか”から商売が始まる。かき氷、おいしかった。(小学生は200円。大人は500円。アルコール入りは600円~)

 店内にはジャンルもカテゴリもばらばらのさまざまな品々が並ぶ。野菜やパンまである。

 オープン前から出展者の注目を集めていたのは、占い師のパウロ野中さんが出品した猿酒。巨大なビンのなか、猿の頭が丸ごと酒に浸かっている。4万円也。蛇酒(4万円)、亀酒(2万円)もあり。

猿酒(4万円)、亀酒(2万円)が並ぶ
猿酒(4万円)、亀酒(2万円)が並ぶ
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 店の最奥部の壁には、油絵の風景画が並んでいる。これも売り物。描いたのは会場であるTETOKAの隣にある「中華ひかり」の店主・紺野浩晃さん。紺野さんは趣味で描き続けている油絵を店の壁に飾っていたのだが、それが展示の準備中にこの店を訪れて焼きそばを食べていた太郎さんの目に留まり、あれよあれよと出品することに。

 太郎さんは「ひかりさんの絵があることでこの場所がグッと面白くなって、これで今回の企画は絶対成功すると思った」と言う。「見てくださいよ、ほら。最高でしょ。あの油絵を置いたらね、ちょっとアートっぽいものが霞んで、ダサくなっちゃうんですよ」

 ちなみに中華ひかり、昼は11時から14時くらいまで、夜はゆったりだいたい19時ごろから営業(紺野さんの気分や調子によって前後する)。昔ながらのラーメンや餃子、焼きそばなどを食べながら、店内の油絵も楽しめる。そして紺野さんの朗らかで和やかな人柄が、とても魅力的。

奥の壁に並ぶのが「中華ひかり」の店主・紺野浩晃さんの油絵
奥の壁に並ぶのが「中華ひかり」の店主・紺野浩晃さんの油絵
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 入り口正面の棚に並ぶアクセサリーは、手作りアクセサリーを制作している二人組「シスター社」によるもの。雑多きわまりない商品群のなかにあって、シスター社のアクセサリーは数少ない文化屋的雰囲気を感じられる商品かもしれない。アクセサリーを手に取り、感動した様子で凝った細部に見入る女性のお客さんも多い。

入り口正面の棚に並ぶ「シスター社」のアクセサリー
入り口正面の棚に並ぶ「シスター社」のアクセサリー
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 ヴィンテージのパーツを用い、すべて手作りで制作するという姿勢、そして手ごろな価格帯というのも、文化屋に通じるところ。それもそのはず、シスター社のお姉さんのほう・ハンナさんは、開店間もない時期から文化屋に通っている筋金入りの文化屋ファン。

 初めてファイヤー通りのお店に行ったのは、大学生になって最初にひとりで東京を訪れたときだそう。「anan」などの雑誌で文化屋の記事を見て、ずっと憧れていたお店だったという。「小さなころから、他人が持ってるものとは違うのを欲しがる子で、でも他の子と違っていればなんでもいいわけじゃなかった。そのころは文化屋さんみたいなお店も、文化屋が売ってるような商品も、どこにもなかったの」とハンナさんはいう。

 色や形。柄や雰囲気。今は多すぎるほどの選択肢のなかから好みのものを選ぶことができるが、以前は日用品や家具を選ぶにしても、洋服やアクセサリーを選ぶにしても、選択肢はもっとずっと限られていた。

「まだ文化屋ができる前に、『あっこれだ』って思ったことがあって、それはね、大阪万博のとき。当時は日本と中国の間に国交がなかったから、中国の展示場も大阪万博のときにはなかったんだけど、どこかのコーナーにちょこっとだけ、中国の日用品なんかが展示されてたの。そこに幾何学模様のホーローの鍋があったのね。それ見たときに、『あ、私が好きなのはこの感じ』って思った覚えがある。雑誌で文化屋のことを知ったときも、同じ感じがしたんだと思う」

 なるほど、たしかに文化屋にとって中国はひとつの重要な要素。文化屋が日本に雑貨、雑貨屋という概念をつくったと言われるが、ハンナさんの万博の話は日本における雑貨の源流、そして文化屋の源流を想像させて興味深い。