スーパーカブは残ると見られるものの
では、ガソリンエンジンで走る原付が完全になくなるかというと、それはなさそうだ。2016年10月、ホンダとヤマハが原付の協業、つまりはOEM配給を進めるという発表があった。「ホンダとヤマハが手を組むとは、一体どういうことだ?」と話題になったが、これは原付を残すための秘策。生産を一元化することで量産効果を上げ、排出ガス対策によるコストアップを吸収しようというわけだ。
また、ホンダの「スーパーカブ」は110ccモデルが継続されるのは当然ながら、50ccのスーパーカブも残るという予想もある。根拠は確かではないが、強いて理由を挙げるなら「ホンダの旗艦モデル」だから残るはずと筆者は想像する。
スーパーカブが残るのなら、同系のエンジンを使用するモンキーも残っていいように思えるのだが、話は簡単ではない。
「レジャーバイクを受け入れてくれる市場がないんです。現在、モンキーは最も値段の高い原付バイクになりました。いちばん小さくて、いちばん高いんです」(ホンダ 広報担当)という現実が立ちはだかる。結果、メーカーは苦渋の決断を迫られる。
確かに、安価な50ccスクーターなら十数万円で買えるが、モンキーの「50周年アニバーサリー」は軽く30万円を超える。2009年にインジェクションを搭載してモンキーが復活した際、「この時勢によく作った」と、賞賛の声が上がったのを覚えている。それだけ手間とコストのかかったモデルなのだ。
通常、クルマにしてもバイクにしても、わざわざ生産終了がメーカーからアナウンスされることはない。人知れず消えていくなり、次のモデルにバトンタッチされるのが常だ。しかしモンキーは正式に生産終了がアナウンスされた。それだけでもモンキーがいかに多くのユーザーに愛され、いかにメーカーに大切に育てられてきたか分かるだろう。
モンキーは、オーナーはもちろん、関わる人すべてにとって幸せなバイクだった。見ているだけでも楽しくなった。こんなバイク、これからはもう登場しないだろう。いいバイクだった。
(文/西尾 淳=WINDY Co.)