東京駅は羽田よりも“ラビリンス”

 ランチの後は自由行動の時間を経て、再びバスに乗り込み、東京駅へと向かう。この頃になると、皆さんすっかりお友達になっている。中にはLINEのIDを交換している人もいた。それぞれ一人参加だなんて、ちょっと信じられない。

 バスの中でも和気あいあい。「羽田空港まで行くときは『ひとり旅』についてご説明しました。ここでちょっとおさらい。『ひとり旅』○×クイズをやってみましょう」という河内さん。問題を読み上げると、あちこちから「マル!」や「バツ!」という声が聞こえて、まるで修学旅行である。

 さて、記者が「わざわざ集合場所を確認する必要があるのか?」と思っていたのは羽田空港よりも東京駅だ。だが、集合場所に到着して「ああー、なるほど!」と思った。東京駅の集合場所は東海道・山陽新幹線の日本橋口を出てすぐ。新幹線の改札からなら近いが、在来線や地下鉄からだと非常に分かりにくいのだ。

 河内さんは地図を見せながら説明する。「東京駅に来るには、JR、地下鉄などいろいろあります。でも、お薦めはJR。なるべくJRで来てください。そして、八重洲北口を出ます。地図には複数の改札口が書いてありますが、全部無視。八重洲北口だけを覚えてください!」。

東京駅構内の地図のコピーを片手に説明する河内さん
東京駅構内の地図のコピーを片手に説明する河内さん
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東京駅構内も旗の後ろを歩いてルートを確認する
東京駅構内も旗の後ろを歩いてルートを確認する
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 続いて、八重洲北口から集合場所までのルートを実際に歩いて確認する。「八重洲北口を出た正面は大丸。この景色を覚えてください」「本屋とスターバックス・コーヒーの間を抜けてください」など、特徴を1つずつ押さえていく。集合時間は朝早いことも多いが、本屋やスターバックス・コーヒーは早朝から営業しているので、目印になりやすいそうだ。なるほど。

なぜ大盛況? “集合場所確認”ツアーに参加した【前編】(画像)
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なぜ大盛況? “集合場所確認”ツアーに参加した【前編】(画像)
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JRの八重洲北口(左)から出て、正面の景色(右)。確かに「DAIMARU」の文字。「この景色を覚えるのが大切です」(河内さん)

 もう一つ感心したのが、お手洗いについてのアドバイス。「東京駅は改札を出るとお手洗いがほとんどありません。集合するときは、改札を出る前にお手洗いを済ませたほうがいいです。もしくは、新幹線に乗るまで待ちましょう」(河内さん)

 考えてみればそうだった。大丸や地下の東京駅1番街にはあるのだが、遠い。後で河内さんに聞いてみると「東京駅は、羽田以上にラビリンス。迷われると、僕たちもなかなか見つけることができません。なるべく動かないようにしていただきたいんです」とのこと。前述のように、羽田には時計台や出口など各所に目印となる数字がついていたが、東京駅にはそんなものはない。通路も細く入り組んでいる。

 実は、この集合場所確認ツアーも、羽田空港に比べると東京駅はあっさりしていた。集合場所周辺を確認後、バスに戻って解散の場となる新宿または上野に向かう。今回はおまけでステーションギャラリー見学がついていたものの、羽田空港のような自由行動はなかった。それも、東京駅がラビリンスだからなのだという。

 集合場所確認ツアーの取材が決まった当初は、正直「羽田空港や東京駅がいくら広いとはいえ、1日かけて案内するほどのものではないのでは?」と思っていた。羽田空港に着いて、第2旅客ターミナルを歩いているときも、「こんなに丁寧に説明する必要があるのか」と疑問だった。そう、記者はこのツアーを侮っていたのである。

 でも、参加者の皆さんの表情を見ているうちに、漠然と不安を抱えている人にとって、実際にその場所に行って、その場所の景色を見て、思いつく疑問をすべて添乗員にぶつけられるということが、いかに大切なのかがわかった。ある参加者が言っていた「これでバッチリとは言えないわ。でも一度来たことで、少し自信になった」という言葉が印象的だ。添乗員2人がかりで不安を消して自信を与えてくれるなら、4900円は安いかもしれない。おいしいランチコースもついていたし。

 そして、1人で参加しても友達ができた、楽しかったという経験は次の旅への背中を押すのだとも思う。「最初は日帰りから参加して、次は国内旅行。いずれは海外旅行にも一人で行ってみたいんです」と照れくさそうに話してくれた人もいた。そんな皆さんのこれからの一人旅が、たくさんの出会いと楽しみにあふれますように――そう祈りつつ、後編ではクラブツーリズムに企画のきっかけを聞きに行く。

(文/平野亜矢=日経トレンディネット)