ユニー・ファミリーマートホールディングス(ユニー・ファミマ)とドンキホーテホールディングス(ドンキ)は2017年6月13日、業務提携の検討を発表した。「コンビニとドンキが提携して何のメリットがあるのか」と不思議に思った人も多いだろう。そこで、今回の提携の狙いをユニー・ファミマ、ドンキのそれぞれの視点から推測する。

 まず今回の話のポイントのひとつは、ドンキ側からユニー・ファミマに声をかけた点にある。発表当日にドンキ側が開いた電話会見で、ドンキホーテホールディングス専務兼CFOの高橋光夫氏が「5月初旬にドンキ側から話を持ちかけた」と語っている。

 なぜ、ドンキは提携先としてユニー・ファミマを選んだのか。高橋専務は同じ電話会見で「セブン&アイ・ホールディングスは首都圏を中心にイトーヨーカドーを展開しており、既存のドン・キホーテ店舗との競合がある。ローソンはコンビニ事業が中心」とも述べている。この発言から、コンビニ事業だけでなく、GMS(総合スーパー)事業を手掛けるユニーの店舗網もポイントになったと考えられる。

MEGAドン・キホーテ渋谷本店
MEGAドン・キホーテ渋谷本店
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 ドンキは2020年に500店の目標を掲げており、直近の2017年6月期第3四半期時点の店舗数は360店。今期は30店程度の新規出店を計画しており、2017年5月時点で22店を出店している。

 一方、ユニーは大型GMS「アピタ」(97店)と中小型GMS「ピアゴ」(113店)の2業態を運営しており、店舗数は合わせて210店。ドンキにとってユニーの店舗網は魅力的であるはずだ。両社は提携の検討事項として店舗の実験的な共同運営や相互利用を掲げている。

 加えて、ユニーの店舗網に白羽の矢を立てたのはドンキらしい選択ともいえる。ユニーが運営するアピタやピアゴは店舗ごとに面積や形状が異なっており、標準化された店舗形態で展開する流通チェーンだと出店が難しい。ところが、ドンキは既存の建物を活用した居抜き出店を得意としており、200店以上を展開している。ドンキには居抜き店舗を活用する独自のノウハウがあるのだ。

 ただし、居抜き出店にはいつどのような立地の店舗が不動産市場に出回るのか、予測できないという課題がある。ユニーは不採算店舗の整理・統合を検討しており、しかもその店舗が既存のドン・キホーテとは競合しない点が、提携交渉に至った強い動機だろう。

ユニーの大型GMS「アピタ」
ユニーの大型GMS「アピタ」
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ドンキは「PB拡大」も狙う?

 店舗網の拡大に加え、次に考えられるのが「PB(プライベートブランド)の拡大」だ。

 ドンキは仕入れ商品の4割を流通市場の余剰在庫を購入するスポット調達で仕入れている。メーカーの廃盤商品や賞味期限が近い商品を通常とは異なるルートで仕入れることで、他社よりも平均で10~35%安い価格を実現しているのだ。

 ただスポット調達はメーカーの商品政策に左右されるなど、安定供給に課題がある。そこで、安定的に低価格商品を調達する仕組みとしてドンキが注力しているのが、PB商品の開発だ。ドンキは衣食住の全てにわたってPB「情熱価格」を展開し、その売り上げ構成比は1割を超える水準となっている。

 今回の提携検討事項には、「商品特性や顧客層が異なる両社の商品の開発ノウハウを共有することで、魅力ある商品の開発と仕入力強化によるコストダウン・効率化を目指す」とある。ドンキとユニーが共同でPB商品を開発することも考えられる。

 ちなみに、セブン&アイグループのPB「セブンプレミアム」はコンビニ、食品スーパー、GMS、百貨店と業態を横断して売れる商品を開発したことが成功要因といわれるが、その牽引役となったのは圧倒的な店舗数をもつコンビニだ。低価格販売を志向するドンキとファミマが共通のPBを開発することは難しいかもしれないが、ドンキは高付加価値型PBの開発にも取り組んでおり、将来的にはドンキ、ユニー、ファミリーマート共通で販売するPB商品開発の可能性もあるだろう。

ユニー・ファミマの狙いは「GMS事業の再生」か

 ユニー・ファミマ側の狙いは何か。それは、ユニー・ファミマ発足時から大きな課題となっていた、ユニーが展開するGMS(総合スーパー)事業の再生だろう。

 ユニー・ファミマのコンビニ事業は3位のファミリーマートと4位のサークルKサンクスが統合することによって店舗数が約1万8000店となり、約1万2000店のローソンを抜き去り、業界トップのセブン-イレブン(約1万9000店)に肉薄している。

 一方、ユニーとファミリーマートとの統合メリットは当初から見えにくかった。GMSは衣食住の生活必需品をフルラインで展開することでワンストップショッピングの利便性を提供する業態。だが、消費者ニーズの多様化に対応した専門店の台頭、ユニクロやニトリといったSPA(製造小売業)の出現により、GMSは不振にあえいでいる。GMSの先駆企業だったダイエーはイオンの完全子会社となり、イオンリテールやイトーヨーカ堂も一時、営業損失を計上するなど状況は厳しい。ユニーの業績も停滞が続いている。

 そんななか、GMSの長崎屋を「MEGAドン・キホーテ」として再生したドンキから提携の声がかかったというわけだ。

ドンキはGMSを「MEGAドン・キホーテ」として再生

 ドンキは2007年に会社更生法が終結したGMSの長崎屋をグループ傘下に収め、2008年から店舗を「MEGAドン・キホーテ」へ業態転換する改革を開始した。創業当初から居抜き出店を得意としていたドンキだが、長崎屋の再生で店舗面積が大きいGMSの再生ノウハウを確立する。

 MEGAドン・キホーテは若者・カップル層をターゲットにしたドン・キホーテに対し、顧客ターゲットを主婦・ファミリー層に拡大。ドンキが得意とするコスプレグッズなどのアミューズメント性が高い商品と、GMSの強みである衣食住の実用品、生鮮食品を含む食料品、日用品を展開した。買収初年度である2007年の長崎屋は売上高1200億円、営業損失50億円だったが、2011年には売上高1244億円、営業利益7億円とV字回復を果たした。

 MEGAドン・キホーテの売り場面積は8000~1万平米、アイテム数は6万~10万だ。近年は売り場面積3000~5000平米、アイテム数4万~8万と中型の「NEW MEGAドン・キホーテ」も出店している。一方、ユニーが展開するアピタとピアゴの店舗面積は、3000~1万平米程度であり、MEGAドン・キホーテが出店しやすい店舗規模といえる。

 正式発表はないものの、ユニーは店舗の競争力確保のために主力の東海地区に経営資源を集中させることも検討しているもよう。東海地区以外の店舗をドンキへ譲渡することも考えられる。今までアピタやピアゴだった店舗がある日、ドンキとなることもあるかもしれない。さらに提携検討事項には「店舗の実験的な共同運営」も含まれているため、アピタの一部にドンキが出店することもあり得るだろう。

ドンキ各店舗のフォーマット
店舗タイプ 売り場面積 アイテム数 商品構成の特徴 主要顧客
ドン・キホーテ 1000~3000平米 4万~6万 アミューズメント&
バラエティショップ
若者・カップル層
MEGA
ドン・キホーテ
8000~1万平米 6万~10万 衣食住の実用品が中心 主婦・ファミリー層
NEW MEGA
ドン・キホーテ
3000~5000平米 4万~8万 衣=実用衣料を中心
食=生鮮食品を抑制
主婦・ファミリー層
注:ドンキホーテホールディングス会社案内から作成


あくまで「提携」ではなく、「提携を検討」のワケ

 ではなぜ、今回の発表で両社とも「業務提携」ではなく、「業務提携の検討開始」という点を強調していたのか。その理由について、ドンキホーテホールディングスの高橋専務は「小売業はそれぞれの店舗や間接部門が重要であり、両社の現場に即した形で協業するために、あえて検討段階で発表した」と語っている。

 ドンキは破綻企業の再生を手掛けてきたが、ユニーはGMS大手の一角を担う企業であり、これまでとは事情が異なる。イオンが手がけたダイエーの再生でも、かつて小売業界トップだったダイエー社員の意識改革が課題になっていたという。かつて売上高、営業利益率、店舗数でGMSの優良企業だったユニーの社員が新興企業ともいえるドンキと手を組むことに抵抗があるかもしれない。

 高橋専務は「具体的な施策は今後の検討事項だ。お客さまにとって当社の店舗とユニー・ファミマの店舗がファーストチョイスの店であることを目指す」と述べている。

 お客から「来店したい」と思われる店舗を作ることは、小売業にとって共通の課題ともいえる。ユニー・ファミマとドンキという異色の組み合わせによって、どんな新たな施策が生まれるのか。そのカギは現場の社員の意識改革にあるといえる。

(文/流通ニュース編集部

流通ニュース
2008年9月に創刊した小売・通販・中間流通・メーカーの最新ビジネスニュースを配信するインターネットメディア。スーパー、コンビニ、ECサイト、外食、百貨店、アパレル、家電量販店など流通全般の取材を行っている。