日経BP社が主催する大型イベント・セミナー「D3 WEEK]。2017年は7月26日(水)から28日(金)の3日間、「Beyond The Customer First」をテーマに、東京・アカデミーヒルズ(六本木ヒルズ49階)で開催する。その開催に先立ち、「D3 WEEK」のイベントイメージを感じていただくために、昨年のD3 WEEKで開催した講演の様子をお届けする。

 「D3 WEEK 2016」の2日目には、「新プラットフォーム『Coke ON』が拓く、日本コカ・コーラのデジタルマーケティング3.0戦略」と題して、日本コカ・コーラ マーケティング本部 IMC iマーケティング統括部長豊浦洋祐氏が講演。コカ・コーラが考えるIMC(インテグレーテッド・マーケティング・コミュニケーション)について明かした。

日本コカ・コーラ マーケティング本部 IMC iマーケティング統括部長豊浦洋祐氏
日本コカ・コーラ マーケティング本部 IMC iマーケティング統括部長豊浦洋祐氏
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 「2000年にIMC1.0として、1つのコアとなるクリエリティブアイデアを、さまざまな生活者との接点で包括的に使っていくやり方を導入した。それが2004年くらいからはIMC2.0となり、生活者を中心にすえた統合マーケティングへと進化。さらに近年はIMC3.0へと進んでいる。現代はデジタルプラットフォームの台頭により、生活者自身が情報を発信する時代であり、そのパワーをどこまで最大化できるかが大きな着眼点になる。テレビCMのようなマスマーケティングだけではなく、ソーシャルのなかで言の葉になるようなコンテンツを作り、ソーシャルで流通させることを狙っている」

 そして、それに足並みを揃える形で、同社のデジタルマーケティングも3.0へと進化しているという。それを牽引するのがスマートフォン向けアプリの「Coke ON」だ。

 豊浦氏は導入の経緯をこのように話す。「数多あるアプリの中でコカ・コーラだけにしかできないものは何かと考えたとき、飲料メーカーとして生活者との接点が持てるモーメントにアプリを導入することで、アプリを起動するたびに気持ちが“ON”になるような体験を提供したいと考えた」。これらは“買う”“飲む”“楽しむ”、の3つのモーメントを想定して提供されている。

 “買う”モーメントにおいては、今年4月8日から「Coke ON」を使った自販機ロイヤリティープログラムを開始した。アプリ対応自販機とアプリをダウンロードしたスマホをブルートゥースで接続し、製品を1本購入するごとにスタンプを1つ獲得。15個集めれば、希望商品1本と無料で引き換えられるドリンクチケットを、アプリ上で入手できるというものだ。アプリ画面上に表示された商品を選択し、チケットを自販機に向かってスワイプすると商品が出てくるという仕掛けになっている。現在、東京、大阪など主要都市部に対応自販機が設置されており、既に販売は増加傾向にあるという。

サンプリングに有効活用できる

 “飲む”モーメントにおいては、サンプリングに有効という。「これまで10万、20万といった大規模なサンプリングを行う場合、取引先のコンビニエンスストアなど流通側のサポートがなければ実現不可能だった。しかし対応自販機があれば、自前のオペレーションで可能になる」。

 第一弾として、6月からコカ・コーラの10万本のサンプリングが実施された。自販機のPOPを活用して「Coke ON」の告知を行い、アプリユーザーにはプッシュメッセージを配信。1週間に2万5000本というドリンクチケットの配布を、4週に渡って展開した。

 さらに8月から始まるリオ・オリンピックでは、オリンピックのワールドワイドパートナーならではの試みとして、“ゴールドメダルサンプリング”の実施を予定する。これは日本人選手が金メダルを獲得するたび、コカ・コーラのチケットを配布するものだ。「これまでにもさまざまなリアルタイムマーケティング施策を行ってきたが、今回は、日本中が盛り上がっているシーンでの飲用体験を伴う、究極のリアルタイムマーケティングだと考えている」。

 また熱中症予防対策にアクエリアスを訴求するため、西日本で実験的に気温・エリア連動サンプリングも実施している。これは気温35度を超えた猛暑日に、そのエリアにだけ、アプリを通じてドリンクチケットを配布するというものだ。今後は冬に氷点下に達したエリアにだけジョージアのホットコーヒーを提供するといったことも検討されている。

 アプリを活用することで、誰がいつどこでのどのブランドの商品を購入したのかが分かることから、購入したブランドに関連する価値の高いコンテンツを配信。右手に飲料を持ち、左手のスマホでそれを楽しんでもらうような飲用体験を提供していく。

 “楽しむ”モーメントにおいては、スタンプラリーをデジタル化するなど、これまでできなかったイベント体験を創出していく。現在、同社がスポンサーとなっている「お台場みんなの夢大陸」と「六本木ヒルズ夏祭り」の会場でアプリの告知が掲出されており、そのイベントエリアでアプリをダウンロードするとドリンクチケットが入手できるなど、さまざまな特典を用意してアプリの普及を促進している。今年の目標としては、対応自販機を14万台設置、アプリは200万ダウンロードを目指すという。

 最後に豊浦氏は将来の展望をこう話した。

「現在は自販機とつながるアプリという体裁だが、それだけにとどまらない本当の意味でのエンタープライズアプリに進化させていく。弊社は全国に98万台の自販機を持っている。これは国内最大級、すなわち世界最大級の規模だ。1台でも多くの対応自販機と1人でも多くのアプリユーザーという両輪で、世界最大のCRMプラットフォームができると考えている。そしてこれからは、これまでのコンテンツを中心としたマーケティング手法ではなく、売り上げに直接的に貢献する、そして実体験による価値提供を基軸にした施策を実施していく。これが今後、我々の目指す方向である。IMCではなくIMS(インテグレーテッド・マーケティング・サービス)と言ってもいいかもしれない」

(文/ライター 藤野 太一)