2017年3月、テレビアニメ「けものフレンズ」(テレビ東京系)の最終回放送後、ネットには“けもフレロス”の声があふれた。

 動物がテーマの冒険モノで、前評判は高くなかった。だが、尻上がりにファンは増え、ネット上では「たーのしー!」「すごーい!」といった、作品中で出てきた“ゆるい”ワードが爆発的に拡散。一見すると日常系のゆるいアニメだが、背後に見え隠れする不穏さとのギャップにアニメ好き以外の層も反応し、人気が急上昇した。最終話の放送前に「ニコニコ生放送」で配信された振り返り放送では、アニメの一挙放送番組で歴代最高となる270万超のコメント数を記録する事態に。さらには、作中に登場したキャラクターの“本物”に会おうと、動物園にファンが集まる現象まで発生した。

 はたして、これほどまでに人々を熱狂させた理由は何か。アニメで注目を集めた「けものフレンズ」プロジェクトを、コンセプトデザインを手がける吉崎観音氏とともに立ち上げたKADOKAWAの梶井斉氏に聞いた。

KADOKAWA コミック&キャラクター局 第7編集部 コミックス編集部 編集長の梶井斉氏 (C)けものフレンズプロジェクト/KFPA
KADOKAWA コミック&キャラクター局 第7編集部 コミックス編集部 編集長の梶井斉氏 (C)けものフレンズプロジェクト/KFPA
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アニメ『けものフレンズ』は超巨大総合動物園「ジャパリパーク」が舞台。記憶喪失の迷子「かばんちゃん」がアニマルガールの「サーバル」たちの力を借りながら、自分が何者かを探すための旅に出る(C)けものフレンズプロジェクト/KFPA
アニメ『けものフレンズ』は超巨大総合動物園「ジャパリパーク」が舞台。記憶喪失の迷子「かばんちゃん」がアニマルガールの「サーバル」たちの力を借りながら、自分が何者かを探すための旅に出る(C)けものフレンズプロジェクト/KFPA
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――単刀直入に聞きます。これだけ多くの方が熱狂するコンテンツになった理由をどのように分析されてますでしょうか。

 KADOKAWAの梶井斉氏(以下、梶井):真面目に作ったからだと思います。ありきたりな答えですが、“ヒットを仕掛ける”場合、たいていは「こうすれば話題になるだろう」といったマーケティングに基づいた施策や奇をてらったプロモーションを考えがちです。

 しかし、お膳立てしたものではなく、自主的に参加してもらえる題材を提供しなければいけません。それがプロジェクトの原点である動物に対して真摯に取り組んで作品を作ることだったんです。

 動物の何気ないしぐさや習性などを、アニメのキャラクターに取り込む。(コンセプトデザインを手掛けた)吉崎観音先生のキャラクターはかわいいだけではなく、元になった動物の特徴を忠実にデザインへ落とし込んでいるんです。細部をよく見てほしいんですが、こんな擬人化は今までないと思います。それを題材に、お話として12話を見て堪能できるよう、たつき監督が伏線を張り、セリフを吟味し、仕掛けを施したんです。アニメに関しては、吉崎先生と監督が話をしながら構築しました。

 仕掛けというのは打ち上げ花火のような一過性のプロモーションではなく、キャラクターも含めた作品全体に練りこむことが大切だと思います。そこを視聴者の皆さんにくみ取っていただけたので、支持が広まったのだと思います。

――アニメはスタート時よりも回が進むごとにファンが増えておりましたが、一気にファンが広がったきっかけとなる出来事やストーリー展開はありますか。

梶井: 徐々に「けものフレンズ」の世界を見せていくよう、たつき監督が構成を考えました。1話で人類発祥の地であるアフリカをイメージさせるサバンナ、2話でフレンズにさまざまな種類がいることを見せ、3話で絶滅動物、4話ではUMA(未確認生物)や文明の名残のような廃墟を提示。火が付いたのは、SNSで“考察班”といわれる人々が出てきてからだと思いますが、それが広まったのが3話、4話あたりだったと思います。

 監督の仕込んだ伏線に反応してくれる人々が現れて、ネット上で議論が盛り上がりました。こちらからネタバレのような情報を出していたら、決してこうはなっていません。ここは視聴者の方に委ねるしかなかったのですが、拾っていただけてうれしかったです。

「けものフレンズ」は“みんなのもの”

――ライトなアニメ好きの層だけでなく、動物が好きな層、さらにはSF好きまで、非常に幅広い層の注目を集めたと思います。どのような層をターゲットにしていたのでしょうか。

梶井: 動物好きはもちろんのこと、キャラのかわいさに反応する人、SF的要素に反応する人、それぞれが楽しめるような作りになっていると思います。

 アニメに限りませんが、「どの層に」と的を絞ると作品自体は作りやすくなり、局地的なヒットは狙えるかもしれません。しかしそれでは広がりは望めません。このプロジェクトは細くてもいいから長く続けていきたかったので、そういった一過性のものにならないよう頭を悩ませました。立脚点は「子供にも楽しんでもらえるもの」なので、もともと間口は広かったんです。

――ガイドラインに沿った二次創作を広く認めました。珍しいと思いますが、どのような思いがあったのでしょうか。

梶井: プロジェクトの立ち上げ当時、これは「誰々が作ったもの」ではなくて、「さまざまな人がかかわって世界を広げてほしい」という思いがありました。権利を主張するのではなく、“プロジェクトに共感してくれるみんなのもの”なんです。個人で自由に創作活動を楽しんでいただきたかったので、公式サイトでも早いうちから二次創作に関するガイドラインを設けました。同人で盛り上がるとネットやイベントを通じて多くの人に知ってもらえますし、その熱気・活力はプロジェクト自体にもパワーを与えてくれます。

――ファンの多くが、不思議なストーリーの“奥行き”や謎解き要素に反応をしており、ネット上で激しい議論が交わされました。当初からこのようなファンの楽しみ方を想定していたのでしょうか。

梶井: たつき監督はテレビ放送だけでなく、ネット視聴のことも考えて作品を作っていました。大画面で眺めていても楽しめる、ネットで時折画面を止めて細部を見ても楽しめる、という作りです。仕掛けに気付いてもらうフォーマットとして、繰り返し視聴できるネット配信は打ってつけでした。判明したネタを肴に、コメント機能で盛り上がることもできますし。アニメにとどまらない、プロジェクトのさまざまな取り組みを知ってもらえる機会になりました。ここまでの爆発は誰も予想しえなかったですが、ネットユーザーを意識していたのは確かです。

――今後のプロジェクトの展開についてお教えください。

梶井: 新作映像を制作することはすでに発表していますが、中身についてはいろいろと……。ほかには舞台が決定しています。声優がそのまま出る舞台です。あまりない形だと思うんですが、今から楽しみです。

 また、大きくはゲームでしょうか。まずはスマホアプリとして、前回とは全く違ったシステムで今年のサービススタートを目指しています。

 書籍についてはコミックスや小説以外に、お子さんでも楽しんでもらえるような企画を検討中です。ほかにもいろいろ話を進めていますので、準備ができ次第お知らせしていきたいと思います。ゴールデンウィークあたりからさまざまな動物園とのコラボがスタートしましたが、これはプロジェクト立ち上げ当初からの夢だったんです。動物園へ足を運ぶきっかけになれれば、と。ほかにもお話をいただいている動物園がございますので、永続的で有機的なつながりができるよう、プロジェクトに賛同いただける方々と一緒に考えていきたいと思います。「動物への寄与」は、プロジェクトの目標でもありますので。

テレビアニメでブレーク。超巨大動物園「ジャパリパーク」が舞台で、さまざまなアニマルガールが登場する(C)けものフレンズプロジェクト/KFPA
テレビアニメでブレーク。超巨大動物園「ジャパリパーク」が舞台で、さまざまなアニマルガールが登場する(C)けものフレンズプロジェクト/KFPA
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「けものフレンズプロジェクト」として最初に吉崎氏が描いたキービジュアル。(C)けものフレンズプロジェクト
「けものフレンズプロジェクト」として最初に吉崎氏が描いたキービジュアル。(C)けものフレンズプロジェクト
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(文/森岡大地=日経トレンディ)

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