ダイソンがドライヤーを開発した理由は?

 とはいえ、羽根のない扇風機として7年も前に実用化済みの技術を横展開した点では、決して大きな驚きがあるわけではない。考えようによっては、羽根のない扇風機を手のひらサイズにしただけともとれるだろう。だが実際に使ってみると、十分に新しさを感じさせる製品だ。

 直進性の高い風は女性の長い髪を素早く乾かせそうなほど強力で、時短につながる印象。「地肌にまでしっかり風が当たるので、髪の根元のクセを直しやすい」(ダイソン)。ブローやスタイリングなどに使える3種のアダプターが付属しており、磁力でワンタッチで着脱できるのも便利だ。

 変わったデザインも見かけだけではない。重心が持ち手に移動したことで、従来型のドライヤーより持ちやすく、しかも軽く感じるようになっている。「空気の吸入口に長い髪を巻き込みにくいのも利点」(同社)という。

ブローやスタイリングなどに使える3種のアダプターが付属。磁力でワンタッチで着脱できる。(撮影/山本琢磨)
ブローやスタイリングなどに使える3種のアダプターが付属。磁力でワンタッチで着脱できる。(撮影/山本琢磨)
持ち手の下端には金属製のフィルターがあり、拭くだけでほこりが取れる
持ち手の下端には金属製のフィルターがあり、拭くだけでほこりが取れる

 それにしても、サイクロン掃除機で有名なダイソンがなぜドライヤーなのか。その理由は「羽根のない扇風機として知られるエアマルチプライアーの技術を小型化したら何ができるか、アイデアを突き詰めてドライヤーに行き着いた」(ダイソン)という。

 新ジャンルへの進出は、ダイソンにとって決して珍しくはない。羽根のない扇風機に代表される空調家電は、今や同社の屋台骨の一つに成長した。過去にはドラム式洗濯機を発売したこともあるなど、むしろ技術的に“枯れた”とされる分野でこれまでにない製品を投入することが、ダイソンらしさといえる。

 2015年に過去最高の売り上げと利益をたたき出したダイソンは、ここ数年でロボット掃除機やLEDライトなど、次々に新ジャンルへと参入してきた。いずれもまだ主力製品には育っていないが、ドライヤーが頭一つ抜ける可能性はある。というのも、実勢価格こそ税別4万5000円とドライヤーとしては高価だが、従来型製品との違いがわかりやすいからだ。

 また、小型モーターの新規開発や生産ラインの新設など、中核技術にそれなりの投資をした点からも、本気度がうかがえる。ダイソンが美容の世界に“新風”を吹き込み、金字塔を打ち立てられるのか注目だ。

(文/瀧本大輔=日経トレンディ)