三菱と日産が初めて共同開発した重要なモデルだった

 eKワゴンはその後、2014年のマイナーチェンジで1リットル当たり30㎞の燃費を達成。減速時のエネルギーを蓄電池にため、加速時に補助的に利用する回生システムや、変速プログラムの最適化、エンジン吸気ダクトの改良などを行った。それで加速性能なども改善されたのだろうと思い、その後は気にも留めていなかった。ちなみに2015年のマイナーチェンジではさらに燃費が向上し、同30.4㎞とされている。

 三菱自の発表によると、今回の不正の該当車は「2013年6月から生産している車両」ということなので、最初の段階から“水増し”された数値が公表されていたということなのだろう。たった500㎞程度の試乗ではあったが、その結果は間違ってはいなかったのだ、と感じた。

 このeKワゴンは、三菱自が日産と初めて共同開発した戦略的に重要なモデルだった。開発の舞台裏を紹介したドキュメンタリー番組では、当初の目標燃費はもっと低かったが、ライバルメーカーが想定を上回る燃費のモデルを先に発売したため、急きょ目標が変更されるというエピソードが紹介されていた。ちなみに今回の不正が発覚した発端は、日産からの問い合わせだったという。

三菱「eKワゴン」の実燃費は発売直後からスペックと乖離(画像)
[画像のクリックで拡大表示]
三菱「eKワゴン」の実燃費は発売直後からスペックと乖離(画像)
[画像のクリックで拡大表示]
発売時の、三菱自の発表会と日産の発表会。双方とも燃費の良さを力説していたのだが

 個人的な話で恐縮だが、記者の妻の実家は岡山県にある。それだけに、岡山県倉敷市にある水島製作所で生産されるeKワゴンには親近感を持っている。三菱自の販売低迷で青息吐息の状態だった同製作所は、eKワゴンをはじめとする軽自動車を日産へ供給することで生産量が伸び、息を吹き返した経緯がある。

 今回の問題は三菱自、日産だけでなく、周辺自治体に点在する部品メーカーにとっても大きな問題だ。一日も早い真相究明と信頼回復への取り組みを期待したい。

(文/佐藤嘉彦=日経トレンディ、写真/高山 透、山本琢磨)