氷を“ゆるめる”ことがおいしさの秘密?

 ブームの流れを時系列に紹介してきたが、かき氷そのものに進化がなければこれほどまでのブームにはならないだろう。昔のかき氷との違いはどこにあるのか?

 一番の違いは、フワフワで口どけがいい氷の食感かもしれない。“かもしれない”と書いたのは40代以降の年配の方からすると「懐かしい」と感じる可能性があるからだ。実は、かつてかき氷の多くはこの食感に近いものだった。ただし、せっかくフワフワに削った氷をこぼさないようにとお店の人や親に手でつぶされた記憶のある人も多いのではないだろうか。一方、30代よりも若い世代では、フワフワの氷を生まれて初めての食感と感じることが多いらしく、人気店の店内では「なにこれ!」と目を丸くしている人を見かける。

 世代間で食感のとらえ方が違うのは、かき氷の作り方にある。40代以降なら、現在の人気店と同じように、幅や高さが10センチ以上あるブロック氷を回転させて刃物で削って作ったかき氷を記憶しているはずだ。ところが1970年代以降、一般家庭の冷蔵庫でも作れる幅数センチの角氷(キューブ氷)でもかき氷が作れる機械が浸透した。こちらは氷を削るというよりも細かく砕いているので、食感としてはフワフワではなくサクサクしたものになる。若い世代にとっては「かき氷=サクサクした食感」というイメージになっているのだろう。

フワフワの食感のかき氷は、ブロック氷を刃物で削ってつくる。sasaki106/PIXTA(ピクスタ)
フワフワの食感のかき氷は、ブロック氷を刃物で削ってつくる。sasaki106/PIXTA(ピクスタ)
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 また、最近は口どけを考慮して、氷の温度に気を使っているお店がほとんど。氷の温度は冷凍庫から取り出した状態では、冷凍庫の温度とほぼ同じという。一般に冷凍庫の温度はマイナス18度前後で、このままかき氷を作ると氷が冷たすぎて口どけが悪い。そこで、冷凍庫から取り出したブロック氷を一度、冷蔵庫に移すなどしてマイナス3度前後に“ゆるめる”作業が必要になる。こうして温度管理された氷でかき氷を作ると、口どけがよく頭がキーンとなり難いのだ。

 ちなみにかき氷店が使う氷には、大きく天然氷と純氷の2種類がある。天然氷とは、文字通り自然の力で作った氷だ。冬場に専用の池に水を張り、徐々に凍らせていく。厚さが15センチ前後になったら池から切り出して、大切に保存する。一方の純氷は機械で作る氷。ただし、製法は時間をかけてゆっくり凍らせるなど、家庭用冷蔵庫で角氷を作るのとは大きく異なっている。

 天然氷と純氷の違いは主に味に出る。純氷はほぼ水だけを凍らせるので無味無臭なのに対して、天然氷はミネラル分を含む沢の水や湧水をそのまま凍らせるので甘みを感じる人が多いらしい。シロップをかけないで氷だけを食べ比べれば、多くの人が天然氷と純氷の違いを認識できるレベルという。とはいえ、シロップをかけてしまうとその違いは分からなくなってしまうケースも多いようだ。