アルコールとの親和性は高いが、本格展開に遅れ

 外食業界では、ここ数年、仕事帰りなどにアルコールをちょっとだけ楽しむサービス「ちょい飲み」が広がっている。「吉野家」や「天丼てんや」などでは、夕方以降、アルコールを片手に食事している客の姿が当たり前のように見られる。

 KFCといえば、オリジナルチキンのイメージが強く、フライドチキンはアルコールとの親和性が高いといえる。だが、アルコールを提供する店舗は一部。他社の後塵を拝している。

 KFCの一部店舗は、2000年ごろに缶ビールを飲めるようにしていたこともあった。だが、もともとKFCは車での来店が中心となるロードサイド店が多く、そうした店舗ではアルコールの提供はなじまない。一方、都心部の店はスペースが狭く、冷蔵庫を置くのが難しいといった課題があった。

 だが、今回の高田馬場の業態開発にもみられるように、アルコールの提供に後ろ向きだったわけではない。2015年7月から9月には関東と大阪、奈良の駅前や繁華街、ショッピングセンターを中心に計72店舗でビールをテスト販売した。オリジナルチキン2ピースと生ビール1杯で840円といったセットなどを用意。Pontaカードの顧客データからは、30~40代男性の1~3人といった少人数の利用客が多く、新規顧客の獲得や再来店の促進につながったという結果が出ている。

 一定の結果が出た理由としては、アピール面の改善も挙げられる。これまでビールを提供していた一部の店では、ポスターなどによる告知などを積極的には行っていなかった。一方、2015年のテスト販売の際には、手書きの黒板によるアピールなども行っている。

2015年夏に実験的にビールを提供していた店では、手書きの黒板で顧客にアピールした。今年も121店で、4月から期間限定で販売を行う予定。こうした黒板をよく見かけるようになるかもしれない
2015年夏に実験的にビールを提供していた店では、手書きの黒板で顧客にアピールした。今年も121店で、4月から期間限定で販売を行う予定。こうした黒板をよく見かけるようになるかもしれない

 日本ケンタッキー・フライド・チキンの近藤正樹社長は、以前、日経ビジネスの取材に対し、「これからの時代は、画一的な店を作っていくのではなく、店の立地や時間帯、顧客に合わせて、店ごとに提供するメニューやサービスを変えていく必要がある」と語っている。

 同社によれば、現状では全店でアルコールを提供することまでは考えていないが、今年も4月下旬から秋にかけて繁華街にある通常店舗など121店で、昨年と同様のビールのテスト販売を実施する予定だ。その際には、2015年時と同様に、アピール面での工夫も凝らす考えだという。一方、高田馬場店のようなバル業態については、立地などを勘案しながら、新規出店や既存店からの転換を検討していく

  ちょい飲みで客数を伸ばしている競合からは「ケンタッキーのオリジナルチキンとアルコールと組み合わせに飛びつく消費者は多いはず。ハレの日しかKFCを食べていなかった顧客の掘り起こしになるだろうし、業界での競争は激しくなるだろう」との声が聞こえてくる。

 KFCはちょい飲みの「台風の目」となるかもしれない。

(文/河野 紀子=日経ビジネス)