最大の賛辞は「鑑賞後に大人が語り合うこと」

 『アナと雪の女王』では人と違うことのコンプレックス、『ベイマックス』では大切な人を失う哀しみ。そして本作では偏見。特に、近年のウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ作品は、大人こそ共感する普遍的な問題や悩みが、強くストーリーに反映されている。

スペンサー氏: アニメーション作品と聞くと、「子供向け」「ファミリー向け」と思う人もいるかもしれません。でも携わっている我々にとって、アニメーションは一つの表現方法。見てくれた誰もが何かを得られる、そんな作品を常に目指しています。さまざまなアイデアを盛り込んで、大人も共感できる作品になるよう取り組んでいます。

 大人も共感するメッセージ性と、子供も喜ぶ娯楽性の両立。これを実現するために役立っているのが、「ストーリートラスト」という仕組みだ。

ブッシュ氏: ストーリートラストは、その企画に携わってないスタッフも参加して、作品がより良くなるアイデアを出しあう場です。

スペンサー氏: この手法は、(ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオとピクサー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務める)ジョン・ラセターがウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオにやってきた10年前(06年)から取り入れられましたが、我々の映画作りやアプローチ方法を根本から変えました。

 『シュガー・ラッシュ』(13年)あたりからさらに機能しはじめ、『アナ雪』や『ベイマックス』のような作品の誕生につながったと思います。

ブッシュ氏: ストーリートラストはさまざまな段階で行うのですが、『ズートピア』では、まず僕が台本を書き、それを基に絵コンテを書いて編集したものを「第一試写」として上映し、ほぼ全ての従業員が見て意見を出し合いました。

 その後は10~20人の先鋭が集まって、特定のことを話し合う。例えば、「もう少し自然に、ジョディとニックを仲たがいさせるようなストーリー展開はないか」など、細かい点について意見を交わします。このとき、肩書は関係ないんです。ベストアイデアであれば、誰のアイデアであっても採用されます。 私も、『アナ雪』や『ベイマックス』のストーリートラストに参加したんですよ。

大ヒット連発で黄金期再びのディズニー、“大人の共感”がヒットのカギ(画像)
[画像のクリックで拡大表示]

 夢が叶う楽園“ズートピア”に隠された事件を追うウサギのジュディとキツネのニックに、どんな結末が待ち構えるのだろうか。

ブッシュ氏: 偏見といった普遍的な問題であるからこそ、簡単な答えはありません。見た人がそれぞれに何かを感じ、考えてもらうきっかけになるだけでも作った甲斐があります。最大の賛辞は、鑑賞後に大人同士で話し合ってくれること。そういう作品を目指しましたし、そういう作品であってほしいと思っています。

『ズートピア』
『ズートピア』
製作総指揮:ジョン・ラセター
製作:クラーク・スペンサー
監督:バイロン・ハワード『塔の上のラプンツェル』/リッチ・ムーア『シュガー・ラッシュ』
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C)2016 Disney. All Rights Reserved.
2016年4月23日(土)全国ロードショー
[画像のクリックで拡大表示]

(文/羽田健治 写真/吉澤咲子)