動物の特徴をそのまま描くことで、“違い”を浮き彫りにする
『ズートピア』に登場する動物たちは、人間のように服を着て二本足で歩き、それぞれに仕事を持つ。いずれも可愛らしく描かれているが、多くのアニメーション作品にみられる、より人間に近づけるようなデフォルメはされていない。
例えば、動物ごとの体の大きさはそのまま表現。キリンはとても大きく、ネズミは非常に小さい。そのためキリンは背の高い人、ネズミは低い人に見える。また肉食動物、草食動物という違いや、動物特有の行動や習慣もそのまま取りいれている。
笑いを誘うのは、免許証発行センターに勤めるナマケモノたちだ。非常に動作が遅いうえ、すぐに雑談を始める。結果、業務が滞り、行列を作る他の動物たちをイラつかせる。
スペンサー氏: 米国の免許センターは処理が遅いことで有名なんですね。そこで、ナマケモノの習性をあてはめました。米国に限らず、お役所仕事に触れたことがある大人なら共感してくれると思います。ゆっくり動いて、見た目にも楽しいですから、もちろん子供も一緒に笑うシーンです。
このように動物の習性をユーモアに生かす一方で、体格や性格などの「違い」を浮き彫りにする狙いもある。「ナマケモノはトロイ」「キツネはズルイ」といったように、『ズートピア』に登場する動物たちは、それぞれ何らかのイメージや偏見を持たれているのだ。
映画のなかでウサギのジュディは、ある動物に対する「偏見」を思わず露呈しまう。普段は意識していないが、心の奥底にあった偏見が自然に口に出て、傷つけてしまう。このシーンは、大人こそ強く身につまされるだろう。
ブッシュ氏: 我々ディズニーの語るストーリーには、普遍的な悩みや感情は不可欠です。「世界の人々が普遍的に感じることはなにか」「いま、どのようなことに感動しているか」。そういったものを、常にアンテナを張って感じていなければいけない。これらを、娯楽性を失わずに人々に伝えるストーリーテリングを模索しています。