製造所直送、週替わりでまったく違う味わいのビールが飲める店

 マイクロブルワリーで醸造されたビールとの「一期一会」を楽しむ店も増えつつある。東京都調布市のジャクソンホールもそんな店の一軒だ。

 「お一人様から大人数、若い方からお年を召した方まで、お客様はバラエティーに富んでいますが、今も『NANA』のファンの方がいらっしゃいます」と新井克至店長が言うように、同店は1999年に開店してまもなく「行列のできる店」となった。理由は、矢沢あいの大ヒット漫画『NANA』に実名で登場し、ファンの聖地となったからだ。

甲州街道沿いにあるワイオミング・バー「ジャクソンホール」
甲州街道沿いにあるワイオミング・バー「ジャクソンホール」
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ジャクソンホールの新井克至店長
ジャクソンホールの新井克至店長
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 2008年、現在の甲州街道沿いに移転した頃から、クラフトビールを充実させ始め、瓶10種類、たる生3種類のクラフトビールをそろえる今は、おいしい酒と料理を求める客層がメインだ。そんな舌の肥えた客に人気なのが、同店オリジナルの自家醸造ビール「セント・ロビンソン」だ。

瓶詰めされた「セント・ロビンソン」と漫画『NANA』にも登場した一番人気のフード「ジャクソン・バーガー」
瓶詰めされた「セント・ロビンソン」と漫画『NANA』にも登場した一番人気のフード「ジャクソン・バーガー」
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 この自家醸造ビールの誕生について、ジャクソンホールのオーナーの池森薫氏は「『クラフトビール』という言葉がまだなかった頃、日本の『地ビール』はおいしくなかった。『アメリカのクラフトビールのようにラベルがかわいくて、中身がおいしいビールをつくりたい』と思って挑戦しました」と当時を振り返る。

 2015年、池森氏は栃木県のマイクロブルワリーで3カ月間修業して、ビールの醸造に必要な免許を取得し、同年6月、ジャクソンホールから徒歩15分ほど新宿側に寄った甲州街道沿いにマイクロブルワリー「調布ビアワークス」をオープンした。

 この醸造所には、200リッターの醸造タンクが2本あり、「以前は料理人、今は醸造家です」という池森氏によって、それぞれ別々の味で、オリジナルのビールが醸造され、「セント・ロビンソン」の名でジャクソン ホールで提供される。

「セント・ロビンソン」のマイクロブルワリー調布ビアワークス
「セント・ロビンソン」のマイクロブルワリー調布ビアワークス
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醸造タンク2本では、それぞれ別の味の自家ビールが醸造されている
醸造タンク2本では、それぞれ別の味の自家ビールが醸造されている
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 工場には5人ほどが並べるカウンターも併設され、週4日の営業時間内は始終満席。1つのタンクはほぼ1週間で飲み切られるため、例えば、5種類のモルトがブレンドされた「ルビーエール」、3種のモルトとホップにラベンダーを漬け込んだ「ラベンダーハーブエール」、ひのきの香りを抑えてホップを強調した「檜のセッションIPA」など、毎回、個性豊かに醸造されたビールは、たとえどんなに気に入ろうとも、基本的に2度と同じ味には出合えない「一期一会」の味わいとなる。

 「私は自由が好きなんです。ビールはお酒づくりの中でも最もフリースタイルですし、飲み方もフリースタイル」と言う池森氏の店は、それぞれで違う。「“お酒とたばこを楽しめる”という雰囲気も好きなので『ジャクソン ホール』は喫煙、『調布ビアワークス』はビール専門で、香りも大事なので禁煙です」(池森氏)

 最後に、これからの展望について尋ねると、池森氏は笑顔で答えた。「みなさん、ワインみたいに味わうおいしいビールの魅力をあまりご存じない。これからも、スタッフが本心から『うちの店のビールは世界一うまい』と思えるようなビールをつくるために、もっと勉強したいですね」。