“ニートでクズ”の持つリアリティーが人を惹きつける

 『おそ松くん』では全員同じ顔で見分けがつかず、それゆえのギャグやストーリーが成立していた6つ子が、みんな強烈な個性を持ったことが『おそ松さん』の大きなポイントだ。 それぞれメンバーカラーがあり服の色でも見分けることができるが、性格はもちろん、顔つきや姿勢、細かいセリフに至るまで特徴があるので、ひときわ愛着の湧く「推し松(6つ 子のうちのお気に入り)」ができる。これまで数多く作られてきたイケメンが甘い言葉をささやくようなアニメに食傷気味だった女性ファンにとって、6人全員がニートでクズというリアリティーのある設定が新鮮だったこともある。それぞれキャラの立った6つ子たちが、よく練られた脚本と一流の声優の演技によっていきいきと動き回るさまに多くの女性が心掴まれているのだ。

アニメ『銀魂』を手がけた藤田監督×松原氏がシリーズ構成

 では、女性ばかりに向けたアニメなのかと言えば、そうではない。監督を務めるのは、アニメ『銀魂』でも攻めたギャグで話題になる回をたびたび世に送り出した藤田陽一氏だ。藤田監督は、コント番組やバラエティー番組に対しての敬愛の念をたびたびインタビューなどで語っている。 また、シリーズ構成を担当している松原秀氏は、以前はナインティナインのラジオ番組に ネタハガキを送る“ハガキ職人”で、その後、芸人の道にも進んだのだという。この二人が紡ぐテンポのよいギャグやシュールなストーリー、そして絶妙な“間”は、アニメというよりもコント番組を見ているかのようだ。人間が演じるコントでは制約がある部分も、アニメなら制約を超えて描けるぶん、いっそう振り切れている。内容も、たびたびダウンタウンなどのコントネタやとんねるずなどのバラエティー番組の雰囲気が散りばめられているほか、お笑いの極意について熱く語る回(第20話「イヤミの学校」)があるなど、男性やお笑い好きの人もおおいに楽しめる。