会社のお金を使わなければ自由が手に入る
――これから企業アカウントを開設したいと考えている企業も多いと思います
中の人: 企業アカウントを開設したいとよく相談されるのですが、皆さん「うちの会社は堅くて」とおっしゃいます。でも、シャープだって堅い(笑)。
アカウントを開設するとき、まずその効果を想定すると思います。企業が広告を打つときは、大きなお金が効果に見合うものかどうかチェックしますね。これぐらいお金を出せば、この程度のリターンが戻ってくるという数式が出来上がっているわけです。そのやり方に慣れているので、Twitterアカウントにもそれを求めてしまう。
でも、ツイートは無料でできます。あらかじめ効果を想定させる根拠がなくなるわけです。会社のお金を使わなければ、案外自由にできるものです。その労力より、われわれは生活者とどういう関係を築きたいのか、そこを前向きに夢想すべきだと思う。
もちろん、最初の頃は「メリットはあるのか」と上司に聞かれることはありました。しかし、最近は減りましたね。
普段は、常にパソコンでTwitterを開いています。実生活とTwitterが常に並行していて、頭の中はアプリを2つ立ち上げているような感覚です。
なぜパソコンでTwitterをするかといえば、誤字を防ぐためとリンクがしやすいからです。私は正確性の面からパソコンでないと自信を持ってツイートできません。
――アカウント運営となると、炎上を恐れる企業も多いかと思いますが、アドバイスはありますか
中の人: アカウントを始めた当初は、返信することを禁じられていました。でもソーシャルで一方通行のほうが不自然ですよね。苦情しか来ないのではと考えられていたんです。
でも実際は、そうではなかった。お客さんは文句を言う存在ではない。ファンになってくれることもある。その事実を積み上げて示していくしかありません。ソーシャルは反応が目に見えるので、一つひとつ、悪いことばかりではないというエピソードを見せることができます。
今は、ほぼ100%返信するようにしていますが、返信が来ないからといって怒られたことはまずありません。それは、「一社員がやっている」という前提条件が世間と共有できているからだと考えています。
Twitterアカウントは、例えば商店街にある、八百屋さんの気のいいお兄さんくらいのイメージでやっています。常連さんとおつきあいするように、こちらから前置きなしに売りつけることはせず、世間話でもしながら商品も薦めているような感覚です。そのようなスタンスをフォロワーと共有することは、時間をかけて丁寧にやるべきだと考えています。
企業アカウントは、生活者をマスマーケティング的に「属性」とかターゲットとかいう、ある種のかたまりとしてしか向き合えないのであれば、やらないほうがましです。一人ひとりのお客さんと向き合う気持ちが大事です。
――炎上はどうして起こると思いますか
中の人: 先ほども言いましたが、ソーシャルは、友人・知人に加えて、好きなモノや価値観でつながり合う世界です。企業アカウントが炎上で気を付ける点を挙げるとすれば、誰かが好きなモノに対してわざわざ嫌いだという必要はないということですね。誰かの好きを傷つけないことが大切です。