鮮度のある言葉を届けたかった

―――シャープさん(Twitterアカウントの愛称)としてTwitterアカウントを開設、担当されていますが、アカウント開設のきっかけは?

中の人: 私は元々テレビCMなど、マス広告の制作を担当していました。広告の流れがマスからWeb、そしてSNSへと移り変わり、企業もSNSを始めるブームが起こりました。2011年の震災でSNSのパワーが認識されたこともあり、広告代理店からも提案されることが増えていました。そこで当時のボスが、外注せずに社内でやろうと私を指名しました。担当者は私一人です。

 マス広告の制作時は広告代理店からのプレゼンをもとに、社内の調整を経て、広告を世に出す仕事でした。広告案、特にコピーが各部署を回る中でさまざまな思惑が乗せられ、はじめとは似ても似つかないものになってしまうことに忸怩(じくじ)たる思いを感じていました。言葉を届けるのが仕事なのに届かない言葉に変えてしまう、そんな徒労感がありました。

 そこで、Twitterをやるのであれば、言葉の鮮度を持ってできるだけそのまま届けたいと考えました。生々しい、タイムリーな言葉を、すぐ発信したいと。それを条件としてスタートしました。

 といっても、始めの一年ほどは淡々とニュースリリースをわかりやすく流すようなツイートをしていました。ニュースリリースは正確さを突きつめるため、時に何を言っているのかわからない、生活者の言葉から乖離(かいり)することがあります。そうした様式美を削いでTwitterに流すということをやっていました。

 そんな矢先、経営悪化に伴う希望退職が、大々的に報道された日がありました。そこで、「(´-`).。oO( きょうは眠れるかな…)」と体温をのせた言葉をつぶやいたんです。人間的なアカウントに踏み出した瞬間ですね。

 こうした企業の内側の人間がどんな気持ちになるのかを外に出してみようと思ったのです。このツイートの反響は予想以上に大きくて驚きました。

シャープTwitterの中の人「SNSで未来の顧客をつくる」(画像)
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――ということは、現在のアカウントは人間性にあふれていますが、それは中の人の人格ではないということですか?

中の人: 「シャープの一社員が話している」という感じです。表現が難しいのですが、その社員は私ではありません。私の人格は半分ぐらいで、残りはアカウントを運営していくうちに、フォロワーとの関係性で作られていった人格です。

――フォロワーとの関係が非常にうまくいっているように見えます

中の人: あまりタイムラインは見ないんですよ。フォロワーとのコミュニケーションを続けるうちに「通知」に寄せられるリプライの中に、フォロワーの人が「シャープのことがつぶやかれていたよ」というお知らせもあれば、Twitterで話題になっていることを大喜利のようにふられる、そういう関係性になりました。

 そもそもTwitterのフォロワーとは、共犯関係を結ぶことで絆が深まると考えています。例えば、「猫の日」に「ニャープ株式会社」と名前を変えても、「名前を変えた」とはつぶやきません。フォロワーの誰かがそれを見つけてくれて、広めてくれる。フォロワーからすれば、いち早く変化を見つけたという気持ちになりますよね。今日(※)はプロフィール画像に猫の耳をあしらいましたが、夕方にはさりげなく元の画像に戻そうかなと考えています。それぐらいがちょうどいいんです。

※ このインタビューは2月22日、猫の日に行われました。