公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 常務理事・事務局長 葦原一正氏
公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 常務理事・事務局長 葦原一正氏
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 2シーズン目の「B.LEAGUE 2017-18シーズン」が現在、終盤戦に入っている男子プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」。世界初の全面LEDコートで開幕戦が行われた1シーズン目は、総入場者数が226万人という好成績で幕を閉じた。2017-18シーズンは、観客動員数10%増を目指してきたが、ほぼ達成の見通しもついているという。

 着実にファンを増やしているBリーグ。選手たちの熱いプレーもさることながら、エンターテインメント性を追求しているという観客サービス、スマホとSNSを中心としたマーケティング活動が果たす役割も大きい。ちなみにBリーグのTwitter、Facebook、Instagram、LINEの総フォロワー数は460万人以上に。これはJリーグを超えた数字である。

 Bリーグ躍進の秘密をBリーグ常務理事・事務局長 葦原一正氏に聞いた。

非日常を演出するエンターテインメント空間

 Bリーグのミッションは、「世界に通用する選手やチームの輩出」「エンターテインメント性の追求」「夢のアリーナの実現」。選手が活躍できる環境を整えるとともに、お客さんを楽しませる観客サービスもしっかりとミッションのなかに入っている。

 観客は10~30代と若い。これは事前の調査から潜在的なバスケットボールのファンが若者に多いことが明らかになったため、マーケティングの対象を若者層中心に設定した結果だ。観客のメインが40代以上と言われている野球とは異なる。また、ブランドイメージの定点観測では、さまざまな形容詞を基にブランドの印象を測るが、「かっこいい」「革新的」という言葉を重要視している。

 プロ野球チームのマーケティングを8年間やってきた葦原氏は、野球とBリーグの観戦スタイルの違いを以下のように話す。

 「野球は“居酒屋型”の観戦スタイルです。約3時間試合を見つつ、観戦に来た人たちと話したりビールを飲んだり。正直、コミュニケーション中心で試合を見ていない人も少なくない。一方でバスケは“映画型”の観戦なんです。約2時間の試合の間に、プレーは1クォーター(=10分)を4回。ハーフタイムにはチアのダンスショーをやったり、観客参加型のイベントをやったりします。ハーフタイムでもお客さんは席を立たず、ビールやご飯を買わない方が多いです。スピード感のある試合展開と、エンターテイメント性あふれる演出を2時間集中して楽しむのがBリーグ流の観戦です」

2018年1月14日に熊本で行われた「B.LEAGUE ALL-STAR GAME」のオープニングアクト
2018年1月14日に熊本で行われた「B.LEAGUE ALL-STAR GAME」のオープニングアクト
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千葉ジェッツ専属のチアリーダーズ「STAR JETS」とマスコットキャラクター「ジャンボくん」によるパフォーマンス
千葉ジェッツ専属のチアリーダーズ「STAR JETS」とマスコットキャラクター「ジャンボくん」によるパフォーマンス
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期待値の低さを逆に利用する

 観客を喜ばせる仕掛けは多彩だ。2016年9月に開催されたBリーグの開幕戦は、世界初となるLEDコートでの公式試合となった。コート内の床やラインがLEDでCGとして描かれており、その床が崩れるような映像を見せるといったド派手な演出に驚いたファンも多かったはずだ。

 さすがにここまでの演出は難しいが、現在でも千葉ジェッツ、大阪エヴェッサなどの一部のチームでは、プロジェクションマッピングによる演出が観客を楽しませているという。照明が消されたコートに投影される多様な映像は、ゲーム前の気持ちを盛り上げてくれる。その狙いについて、葦原氏はこう語る。

 「正直、バスケに対する期待値は低い人が多いと思います。しかし、試合会場に来ればプロジェクションマッピングなどエンターテイメント性あふれる演出、選手によるスーパープレーが繰り広げられます。やはり男女ともに、ギャップには弱いものです。お客さんの期待値をコントロールして、その差分が大きければみんな驚き、喜んでくれます。とことんエンターテインメント性を追求していきたいですね」

ゲーム前に行われる千葉ジェッツのプロジェクションマッピング。Bリーグで最多入場者数をほこる同チームのホーム戦では、このアリーナ演出を毎回見ることができる
ゲーム前に行われる千葉ジェッツのプロジェクションマッピング。Bリーグで最多入場者数をほこる同チームのホーム戦では、このアリーナ演出を毎回見ることができる
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ストリート文化を尊重したオシャレなグッズ

 プライベートでも使えるようなストリート性の強いグッズもBリーグの特徴だ。「クールでかっこいい」を軸にしたグッズを展開。黒を基調とした応援タオルやチームパーカーなどは、男女ともに人気を得ている。

 「グッス販売はリーグ全体の売り上げを担うほか、ブランディングの役割があります。着て、身に着けて、応援してもらうことでコート全体の雰囲気もつくってくれます。ターゲットはやはり若い人。バスケはストリート文化とのつながりも根強いので、ストリート性のある、クールな商品製作を意識しています」(葦原氏)

 2017年12月には、クリエイティブ・ディレクターであるm-floのVERBALさんを中心に、オフィシャルカルチャーブランド「RUN THE FLOOR」が始動した。ウェブのオンライン販売のほかに、ポップアップストアを新宿やオールスター開催地の熊本で期間限定で開催した。

2017-18シーズン開幕記念スポーツタオル。「BUILD UP」をテーマにしたシーズンキービジュアルが映える
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B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2018大会で、オフィシャル・カルチャーブランド「RUN THE FLOOR」から発売された限定Tシャツ
B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2018大会で、オフィシャル・カルチャーブランド「RUN THE FLOOR」から発売された限定Tシャツ
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誘い誘われ――イケメン選手の存在

 多くのプロスポーツで、新規顧客の開拓は課題だ。そのためにもターゲット層を明確にし、テレビCMや中づり広告などで消費者とのタッチポイントをつくろうと試みる。しかしBリーグの観戦に来たことがないライトファンには、「極論、情報は届かない」と葦原氏さんは言う。そこで重要になるのがコアファンのリコメンドだ。

 「初めて試合観戦に来たお客さんに来場調査をしたのです。最初はあの選手が好きだから、SNSで話題になっていたからと、来場理由を答えます。でも質問を重ねていくと、10人中10人が友人や恋人に『誘われたから』と言いました。ビックリしたと同時に、それが本質だと思ったんですよ。それからはライトファンに向けたマーケティングをほぼやめました。コアファンにどういう情報を伝えると、友人を誘いたくなるか、自慢したくなるか、SNSなどでシェアしたくなるか――。その視点を大事にマーケティング戦略を考えています」

 では、シェアをしたくなる、友達を誘いたくなる情報とは何なのか。

 「多くの人は、カッコいい趣味を自慢したくなるものです。プロジェクションマッピングの演出やストリート系のグッズ販売なども友達に教えたくなりますが、何よりBリーグにはイケメン選手が多いんです(笑)。最前列のシートは、イケメン選手を撮影するために集まった多くの女性客でにぎわっています」

 実は観客の女性比率が高いのもBリーグの特徴。来場者の女性比率は46%、1シーズン目の王者決定戦は20~30代の女性を中心に、50%を超えたという。

 また、バレンタインの時期に開催した2018年の「B.LEAGUEモテ男 No.1決定戦!!」では、“Bリーグイチのモテ男”を決めるために20万票超の投票が集まった。そこで1位に選ばれたのが比江島慎選手だ。コートの外では誠実で真面目な選手として知られ、プレーでは日本代表のエースとしても活躍し、1対1の圧倒的なスキルで観客を魅了する。そのギャップにひかれる女性客が多いのだという。

 「写真では分からない、プレーを見たからこそ伝わるカッコよさがあります。ぜひそのギャップを目の当たりにしてほしいです」(広報担当の兼井明子さん)

「B.LEAGUEモテ男 No.1決定戦!!」で1位に選ばれた比江島慎選手。シーホース三河所属。普段の人柄とプレーのギャップに魅せられる比江島ファンが続出しているという
「B.LEAGUEモテ男 No.1決定戦!!」で1位に選ばれた比江島慎選手。シーホース三河所属。普段の人柄とプレーのギャップに魅せられる比江島ファンが続出しているという
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試合後はハイタッチと見送りを欠かさない川崎ブレイブサンダース。ファンが直接「おめでとう」と声をかけたり、プレゼントを手渡したりできる。選手と距離が近いのもBリーグならでは
試合後はハイタッチと見送りを欠かさない川崎ブレイブサンダース。ファンが直接「おめでとう」と声をかけたり、プレゼントを手渡したりできる。選手と距離が近いのもBリーグならでは
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 Bリーグでは今後、リーグ統一の企画を全国の参加クラブで行う「B.FES」に力を入れている。3月9日から4月8日にかけて、「B.FES 2018春」が初開催され、「いまバスケで日本を盛り上げろ」をテーマに7つのイベントが行われる。注目なのは『スラムダンク』の作者である井上雄彦先生が描き下ろした限定Tシャツの配布もしくは販売。こちらもSNSなどで話題になりそうな企画だ。

 ゴールデンウイークに向けてリーグ戦も佳境を迎えたBリーグ。その最大の魅力は選手のプレーだ。実はバスケは、野球やサッカーと比べてコートが狭いこともあって観客と選手の距離が非常に近い。一度観戦して、その迫力に生で接してもらいたい。

(文/田中一成)

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