ワタ状ではなく“シート状”がカギ

ファイントラック「ファインポリゴン」

 2004年に神戸で誕生した「ファイントラック」。彼らは世の中で常識とされていることを「本当にそれは常識なのか?」と問うことから商品開発をはじめ、これまで多くの“新常識”を提唱してきた。なかでも、「ファインポリゴン」素材の登場は画期的だった。なぜなら、化繊はワタ状で封入することが主流であったのに対し、シート状にすることを考案したからだ。

ファインポリゴンの拡大画像。極薄で究極の軽さを持つ特殊なシート生地を、最先端の収縮加工で立体構造に仕上げた、世界初のシート状立体保温素材。2013年より同社製品に採用されている
ファインポリゴンの拡大画像。極薄で究極の軽さを持つ特殊なシート生地を、最先端の収縮加工で立体構造に仕上げた、世界初のシート状立体保温素材。2013年より同社製品に採用されている
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 ファインポリゴンは「軽くて温かく、水にぬれてもかさを維持できる」「保水しないので乾きが早い」「シート形状で偏りや抜け出しの心配がないため、コールドスポット(冷たいと感じる冷覚点)の発生を抑えた縫製が可能になり、均一な保温力を得られる」という特徴があり、ダウンや化繊綿のデメリットを見事にカバーしている。

 開発背景について、同社の広報担当 畑中恵里氏は「保温素材として最も一般的なダウンは軽くて温かいですが、ぬれに弱いことを考えると、過酷なフィールドにおいて最適の素材とはいえません。さらに、従来の化繊中綿のようにダウンを模倣したワタ状の保温素材では重くかさばるだけではなく、素材の中に水を抱えてしまうので、ぬれるとさらに重くなりなかなか乾きません。自分たちが本当にアウトドアフィールドで使いたいと思うモノを作るためには、これまでの常識にとらわれない発想で、ぬれに強くかつ軽くてコンパクトな保温素材の開発が必要だったんです」と話す。

 課題に直面するなかで、「ワタではなくシートならどうか?」というアイデアからファインポリゴンの開発がスタート。「薄い紙を重ねてくしゃくしゃにしてみると、いい具合にロフト(かさ)が形成されます。これを復元力が高く吸水しない生地で作れば、保温素材として使えるのではないか?と考えました」(畑本氏)

 しかし、アイデアが浮かんだはいいものの実現までの道のりはほど遠かったという。「いざ開発に取り掛かってみると、適した素材が見つからなかったり、ようやく理想的な素材を作り上げられたと思ったら、今度は裁断と縫製が非常に難しかったりと、課題が続出しました。“ファイントラック指定工場”としてタッグを組んだ実績ある工場のスタッフと何度も議論、試作、調整を重ね、着想から3年掛かりでようやく商品化できたんです」と畑本氏。モノづくりにかけるアツイ情熱が世界初の素材を生み出すことになった。

「ドラウトポリゴン3フーディ」(2万4000円)。ファインポリゴンを3枚封入したモデル。表地は耐久はっ水、裏地は吸汗性のある生地を使い、抜群の通気性とスムーズな汗処理を可能にした。これにより、快適さを維持し続けながら行動することができる
「ドラウトポリゴン3フーディ」(2万4000円)。ファインポリゴンを3枚封入したモデル。表地は耐久はっ水、裏地は吸汗性のある生地を使い、抜群の通気性とスムーズな汗処理を可能にした。これにより、快適さを維持し続けながら行動することができる
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 自分たちが「本当に欲しい」と思うモノを考案してから素材開発し、その素材を裁断するためだけの専用機械までも専門メーカーと共同で開発する。ファイントラックのモノづくりにおける妥協しない姿勢は本当にカッコイイと思うし、そういった人たちが手掛けたオンリーワンの製品を身にまとって山に行けるありがたみは、日々痛感している。