東レとの協同開発で次世代のアウトドアシーンを担う存在に

パタゴニア×東レ・ミルズ「フルレンジ・インサレーション」

 1973年に米国で創設されたパタゴニアは、アウトドアスポーツに適した機能的な製品を世に送り出すだけでなく、環境的および社会的責任をも担える企業を目指し、多岐にわたる活動をしている。そんな米国生まれのパタゴニアが、日本の繊維メーカー大手である東レと開発した素材が「FullRange(フルレンジ)」だ。パタゴニアで「ナノエア」と名のつく製品すべてに、このフルレンジが使用されている。

フルレンジの正体はこれ。複数のポリエステル繊維から作られている。ダウンと違って繊維移動を起こしにくいため、安定した保温力が得られる
フルレンジの正体はこれ。複数のポリエステル繊維から作られている。ダウンと違って繊維移動を起こしにくいため、安定した保温力が得られる
[画像のクリックで拡大表示]

 パタゴニア日本支社マーケティング部PRの松原聖恵氏によれば、「フルレンジは、数種類の異なるポリエステル繊維から作られたマルチ・デニールの化繊インサレーション(※断熱性のある化学繊維)です。弊社では自社工場を持って生産していないため、今回、東レ社にリクエストをし、共同で開発に取り組みました。フルレンジの特徴は軽量で、通気性と伸縮性に優れている点。加えて疎水性も備えているので、ぬれても保温性とかさを維持し、すばやく乾くところです。それに、繊維移動を起こしにくい安定性と高い伸縮性といった独自要素を持ち合わせているのも特徴」だという。2014年の秋冬から、このフルレンジを使用したナノエアを展開を始め、2016年の秋冬には『ナノエア・ライト』を、2017年の春夏(今期)からは『ナノエア・ライト・ハイブリッド』をリリースしている。

「ナノエア・ライト・ハイブリッド・ジャケット」(2万6000円)。前身ごろに40グラムのフルレンジを封入し、背中・両脇・腕の後ろ側には保温性・伸縮性・通気性を備えたニットパネルを配置。止まったり動いたりを繰り返す山での着用に最適なモデル
「ナノエア・ライト・ハイブリッド・ジャケット」(2万6000円)。前身ごろに40グラムのフルレンジを封入し、背中・両脇・腕の後ろ側には保温性・伸縮性・通気性を備えたニットパネルを配置。止まったり動いたりを繰り返す山での着用に最適なモデル
[画像のクリックで拡大表示]

 フルレンジの開発に至ったきっかけは、“日々の山行”にあったという。

 「パタゴニアのアルパイン・チームは、ライン管理者からデザイナーまで皆クライマーです。そんな私たちが山へ行くなかで気が付いたこと。それは“ウエアを着替えるために、多くの時間と労力を費やしている”ということでした。そこで通気性に優れていて、かつ 寒冷な山で動いたり止まったりを繰り返すような激しい有酸素運動に対応できる化繊のインサレーションを作ることにしたんです」(松原氏)。

 そこで何種類ものナノエア製品を作り、時間をかけてクライマーとフィールドテストをし、素材それぞれの層に目を向けて解決策を追求。「完成したナノエアのジャケットはメカニカル・ストレッチ織りによって4方向に伸縮し、40CFM(※CFMは流量をあわらす単位)という通気性を発揮する」(松原氏)。これは現在の市場ではほかにないほど高い通気性なのだという。

「ナノエア・フーディ」(3万8000円)。2014年の秋冬に発表された、フルレンジ初搭載モデル。フード付きのほかジャケットとベストタイプも展開
「ナノエア・フーディ」(3万8000円)。2014年の秋冬に発表された、フルレンジ初搭載モデル。フード付きのほかジャケットとベストタイプも展開
[画像のクリックで拡大表示]

 パタゴニアはこれまでにもプリマロフト社と開発した、環境に配慮したプリマロフト・ゴールドインサレーション・エコ(パタゴニアのナノパフ製品に使用)や、リサイクル・ポリエステル90%からできたサーモグリーン(おもにスポーツウエアやスノーウエアに使用)など、化繊インサレーションを使用した製品リリースしている。こうした化繊中綿の開発に力を入れている理由を松原氏は、「たしかに重量に対する保温性が高いのはダウンです。しかし、化繊インサレーションはぬれても温かく耐久性に優れていて長期間使えるほか、外的要因にも強く、ウエアが裂けたとしても中身が飛び出して性能を失うリスクが少ないんです。アウトドアフィールドで使用するには非常に適している素材であり、まだまだ開発の可能性があると考えているので、今後も新しい独自の化繊インサレーション開発を追求し、展開していきたいと思っています」と話す。

 パタゴニアの化繊インサレーションの進化が、私たちユーザーのアウトドアシーンに与える快適性は大きなものになりそうだ。