インターネットを中心に“第4のチョコ”が話題になっている。スイスでチョコレートの製造、販売を行うバリー・カレボーが2017年9月に発表した「ルビーチョコレート」がそれだ。ネスレ日本は2018年1月19日にルビーチョコレートをウエハースの上にコーティングした「キットカット ショコラトリー サブリム ルビー(以下、サブリム ルビー)」を発売し、注目を浴びている。ネスレ日本がバリー・カレボーとルビーチョコレートの6カ月間の独占販売契約を締結し、バレンタインデーに向けて世界で初めて商品化したものだという。

「キットカット ショコラトリー サブリム ルビー」(400円)。日本と韓国で展開する「キットカット」の専門店「キットカット ショコラトリー」などで、2017年1月19日から25日まで、5000本の期間・数量限定で販売
「キットカット ショコラトリー サブリム ルビー」(400円)。日本と韓国で展開する「キットカット」の専門店「キットカット ショコラトリー」などで、2017年1月19日から25日まで、5000本の期間・数量限定で販売
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2月1日に発売した「キットカット ショコラトリー サブリム バレンタインアソート」(5本入り1800円、7本入り2400円)。ルビー、ミルク、ビター、ホワイトなどが入った限定のバレンタインギフト。「キットカット ショコラトリー」の店舗と国内約80カ所のポップアップ型ストア、オンラインショップで販売中
2月1日に発売した「キットカット ショコラトリー サブリム バレンタインアソート」(5本入り1800円、7本入り2400円)。ルビー、ミルク、ビター、ホワイトなどが入った限定のバレンタインギフト。「キットカット ショコラトリー」の店舗と国内約80カ所のポップアップ型ストア、オンラインショップで販売中
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 チョコレートは大まかにいうとブラック(ビター)、ミルク、ホワイトという3種類に分類されるが、1930年代に米国のネスレがホワイトチョコレートを発表して以来、「(ルビーチョコレートは)80年ぶりとなる新カテゴリーのチョコレートの登場」(ネスレ日本担当者)だという。原料となるルビーカカオは天然のピンク色とベリーのような爽やかな酸味を持つカカオ豆で、見た目は確かにこれまでのブラック、ミルク、ホワイトとは大きく異なる。

ルビーチョコレートは南米エクアドルやブラジル、西アフリカのコートジボワールなどで栽培された「ルビーカカオ」と呼ばれている豆から作られているという
ルビーチョコレートは南米エクアドルやブラジル、西アフリカのコートジボワールなどで栽培された「ルビーカカオ」と呼ばれている豆から作られているという
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 実は以前から“第4のチョコレート”と呼ばれるチョコレートがもう1つある。フランスでチョコレートの製造、販売を行うヴァローナが開発した「ブロンドチョコレート」だ。ミルクチョコレートとホワイトチョコレートの中間のようなブロンド(金)色で、ビスケットやキャラメルの香ばしい風味を感じさせるチョコレート。日本では2013年から発売されている。2017年ごろから菓子やアイスクリームにもブロンドチョコレートの名を冠した商品が登場し始め、じわじわと種類が増えている。

ブロンドのターゲットは「製菓市場」

 ヴァローナの日本法人であるヴァローナ・ジャポンによると、ブロンドチョコレートはホワイトチョコレートの製作途中に誤って加熱器具に入れたまま放置してしまったことで偶然できたものだという。その後数年間開発を重ね、2012年に「ブロンド・ドゥルセ」という商品名で発売。2013年に日本展開する際に「ブラック、ミルク、ホワイトに次ぐ、世界初のブロンドチョコレートと銘打った」と同社マーケティング部の榎本聖子氏は話す。

製菓材料を扱う富澤商店では「ヴァローナ ブロンド フェーブ ドゥルセ」という商品名で販売。150g入り(1019円、価格は編集部調べ)
製菓材料を扱う富澤商店では「ヴァローナ ブロンド フェーブ ドゥルセ」という商品名で販売。150g入り(1019円、価格は編集部調べ)
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 とはいえ、「日本において“第4のチョコレート”というキャッチフレーズで広告宣伝をしたことはない」(榎本氏)。ブロンドチョコレートとして商標登録もしておらず、現在市場に出回るブロンドの名を冠した商品も全て関知しているわけではないという。世界初の商品を手がけているわりには、あまり「仕掛けている」ようには感じられない。

 そう見えるのは、同社が製菓市場をメインターゲットとしているからだろう。同社の主要な取引先は洋菓子店やチョコレートの製造販売店で、一般消費者向けの商品はほとんど展開していない。ブロンド・ドゥルセも製菓材料店や同社のオンラインショップでしか販売していないという。同社によると、チョコレートはその風味によってそれぞれ相性の良い食材があり、ミルクに合わせやすい食材もあれば、ホワイトに合わせやすい食材もあるとのこと。「ブロンドチョコレートはホワイトチョコレートとは色合いも味も全く異なる。製菓の原材料としての使い方を提案するため、ブラック、ミルク、ホワイトに次ぐ新カテゴリーとして提案をしている」(榎本氏)という。

 同社は商品認知のためにリーフレットを作成し、相性の良いフルーツとの組み合わせや風味の特徴、さらにどのような用途に適した商品かを記載している。それによるとブロンドチョコレートはガナッシュという溶かしたチョコレートに生クリームを加える製法や氷菓類に最適だという。こうした案内を見るだけでもブロンドチョコレートをどんなターゲットに響かせたいのかが伝わってくる。

新しいものが好きな日本の消費者が反応

 ヴァローナ・ジャポンが製菓市場をターゲットとするのに対し、ネスレ日本は一般消費者を狙っている。新しいカテゴリーの商品を投入するにあたってキットカットを使ったのも、同社の商品として認知度が高いからだろう。ネスレ日本 コンフェクショナリー事業本部ビジネス開発部の竹内雄二部長は「新しいチョコレートを求めている消費者に対し、チョコレートへの関心が高まるバレンタインデーのタイミングに合わせて開発のスピードを上げた」と話す。

 ネスレ日本も「一般的な認識として、これまでのチョコレートはブラック、ミルク、ホワイトの3種類」(竹内部長)と考え、ルビーチョコレートは今までのチョコレートにはない特徴を持つ新しいカゴテリーとしている。コミュニケーションは異なるが、どちらもターゲットに向けて新しい種類のチョコレートであることを強調している点では同じだ。

 だが、ネスレ日本もヴァローナ・ジャポン同様に“第4のチョコレート”というキャッチフレーズは用いていない。また、全国チョコレート業公正取引協議会によると、日本においてはチョコレートと表示するために最低限必要なカカオなどの量を定めた規格はあるが、カテゴリーに関する公式な決まりはないという。

 いったいなぜ、“第4のチョコレート”という言葉がネット上で独り歩きしたのだろうか。

キットカット ショコラトリー サブリム ルビーは酸味の強いカカオ豆につきものの雑味が全くなく、まるで果汁が入っているかのようなフルーティーな味わい
キットカット ショコラトリー サブリム ルビーは酸味の強いカカオ豆につきものの雑味が全くなく、まるで果汁が入っているかのようなフルーティーな味わい
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ヴァローナ ブロンド フェーブ ドゥルセにはほのかな塩味と香ばしさがあり、塩キャラメル風味のビスケットのような後味を感じた
ヴァローナ ブロンド フェーブ ドゥルセにはほのかな塩味と香ばしさがあり、塩キャラメル風味のビスケットのような後味を感じた
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 推測される理由は2つある。まず1つは、海外でブロンド、ルビーが発表された際に“第4の”というフレーズが使われたことだ。そうしたフレーズがそのまま直訳され、広まった可能性がある。もう1つは、新しいものが好きという日本人特有の消費者心理だ。チョコレートはフルーツの風味を加えるなど、味にバリエーションがつけやすい。そのため、バレンタイン商戦に向けて新しい種類のチョコレートが毎年のように登場している。そんななか、既存の3種類のバリエーションではないブロンドとルビーが登場したことに、消費者が大きく反応したとも考えられる。

 確かに“第4のチョコレート”というフレーズには、専門的な説明がなくてもコンセプトの新しさを一言で伝えられる分かりやすさがある。チョコレート関連の新商品があまりに多く、メーカー側が消費者に新しさを伝えるのが難しい時代だからこそ、“第4のチョコレート”の分かりやすさが受けたのかもしれない。

(文/桑原恵美子)

■変更履歴
初出では「日本チョコレート工業協同組合」とありましたが、正しくは「全国チョコレート業公正取引協議会」でした。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。[2018/02/13 18:48]