一人しゃぶしゃぶはインバウンド狙い

――現在、アパレルブランドから派生したオリジナル業態とライセンス契約している業態があるが、さらに今後手がけたいと考えている分野はあるか。

野田: オリジナルが第1フェーズ、ライセンスが第2フェーズだとすると、今第3フェーズとして力を入れているのは、アパレルとひもづかず海外からの輸入でもない、全く新しいブランドを作っていくこと。その一つが、2016年に表参道にオープンした「しゃぶしゃぶ 山笑ふ」です。

 これまでは職人が必要という理由で、和食には手を出していませんでした。優秀な職人を採用し、和食店を継続的に運営していくのは難しい。職人に辞められたら、その店は成り立たなくなりますから。一方で、海外で飲食業を展開したいという思いもずっと持っていました。だから、和食の中でも客が自ら調理するしゃぶしゃぶなら海外で成功する可能性があるのではないかと考えました。海外、特に欧米の方は、みんなで一つの鍋をつつくのをとても嫌がる。だから、「しゃぶしゃぶ 山笑ふ」のように、一人鍋というスタイルが好まれるのではないか。実験も兼ねて、インバウンド狙いで表参道に出店しました。

一人用の鍋が、カウンターを囲むようにぐるりと配置されている。ランチはすき焼き(1450円)、牛・豚盛り合わせのしゃぶしゃぶ(1500円)、ディナーは黒毛和牛ロースのしゃぶしゃぶ(4800円)などがある
一人用の鍋が、カウンターを囲むようにぐるりと配置されている。ランチはすき焼き(1450円)、牛・豚盛り合わせのしゃぶしゃぶ(1500円)、ディナーは黒毛和牛ロースのしゃぶしゃぶ(4800円)などがある
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――実際に、海外からの観光客は入っているのか。

野田: かなり入っています。ただ、インバウンドでいえば、ルークスの表参道がもっとも多く、7割くらいが海外からの観光客。インバウンド向けのグルメサイトで評価が高いのが、要因となっているようです。

――しゃぶしゃぶ、ルークスに限らず、海外出店の計画は具体的にあるのか。

 

野田: 何年までに何店舗、というような事業計画は持っていません。ただ、飲食業はタイミング。いい物件が見つかれば考えるかもしれない。

今後は「専門店」を増やしたい

――物件といえば、表参道への出店が特に目立っている。この土地にこだわる理由は?

野田: ルークスの表参道店である程度の実績を出したので、物件の情報がよく入ってくるようになりました。2017年春には新しく海外から持ってくるブランドを表参道にオープンさせる予定です。

――中長期的にはこういう業態をやりたい、という理想はあるのか。

野田: 専門店を増やしたいと思っています。複合店というか、メニューがあれもこれもあるような店は魅力がない。そういう複合店は商圏が狭い。専門店なら顧客がわざわざそのために来るので。商圏の広がりと扱っているメニューの相関関係というのは、肌感覚的には身についたと感じています。

――具体的に、専門店にすると商圏はどれくらい広がる?

野田: ルークスであれば、商圏は中国にまで広がっています。一般的な話をすると、半径1キロ圏内であればあれもそれもそろっている店のほうが便利ですが、10キロ、20キロで考えると専門店でなければお客はとれない。あれもこれもある店に、20キロ先からわざわざやってこないのではないでしょうか。

写真/シバタススム
写真/シバタススム
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――アパレルの飲食参入というトレンドはまだまだ続くと思うか?

野田: 飲食は参入障壁の低い業界で、料理上手な女性がカウンターだけの店を借りて料理を作って出したら、小料理店として成立します。でも、アパレル企業にはもともと飲食を運営するスキルがないので、参入しても生き残るのはなかなか難しいでしょう。アパレルの仕事をしていると海外に行くことも多く、海外のエディターが教えてくれた地元の人気店に行ったりもします。そこで得た知見を、社会に還元したいんです。そうしないと、おいしいものを食べることができたという自己満足に終わってしまうので。それも、僕らが飲食をやっている一つの理由かもしれないですね。

(文/樋口可奈子)