効率化しすぎると、大手チェーン店になってしまう

――ここ数年で、飲食ジャンルの店舗数が飛躍的に増えている(2011年度は17店舗、2016年12月時点で60店舗)。アパレルの不調を飲食で補うのが狙いなのか。

野田: 飲食事業を始めた以上、従業員のためにもその事業を拡大することが経営側の責任。アパレルの景気が良くても悪くても、考え方は変わりません。あまりマーケティング的な視点からは飲食事業を捉えていないし、いい店ができれば自ずと成功すると考えています。現在、ベイクルーズの飲食事業は約70億円。グループ全体の売り上げが約1000億円なので、まだまだアパレルが9割以上を占めている状態です。ただ、飲食が次の事業の柱になってくるのは間違いないでしょう。

――飲食事業としての売り上げ目標は設定しているのか。

野田: 一応ありますが、あまり大きな数字ではありません。飲食業界全体から見ると、ベイクルーズの飲食部門はまだまだ。(上場していないため)株主にコミットする必要もないので、明確な目標は設定せず、好きなことをやってきたらこうなった。でも、このやり方がベイクルーズらしいと思います。

――利益を追求して効率化しすぎると、ベイクルーズらしさがなくなる?

野田: 全部そぎ落として効率化してしまうと、ほかの飲食店と同じ。それこそ大手チェーン店のようになってしまう。付加価値をつける、さじ加減が重要です。だから、紋切り型で店を増やすようなことはしたくない。

20代はファッションよりも食にお金をかける

――2000年に飲食業を始めて、10数年たっている。アパレルと飲食の違いについて、発見したことは?

野田: 個人的には、どんなビジネスでも「客が何に対してお金を払いたいと思うか」「その欲求をどのように満たすか」が基本で、そこにフィットした事業ができれば、売り上げは絶対に上がると考えています。しかし、飲食業をやってみて分かったのは、席数と客単価、回転数という初期設定を間違うと、いくら頑張っても利益を出せないということです。洋服はトレンドや何かのきっかけで売れ始めるとどんどん加速し、小さい店舗でも1日200~300万、セール時には500万円くらい売れることもある。でも飲食では1日の売り上げの上限が例えば30万円と決まってしまったら、そこからさらに売り上げを伸ばすには、単価を上げるか、回転数を上げるか、営業時間を延ばすかしかありません。つまり、最初の立て付けが重要。それが飲食の難しさでしょうか。

――では、アパレルと比べて、飲食ならではの面白みは?

野田: 私見ですが、飲食は客の反応が早い。アパレルは、ブランド価値を作り、上顧客を作ってリピーターを増やしていかないといけないので、時間がかかります。まれに「テレビドラマで俳優の誰々さんが着てたから、このニットが1日に200枚売れました」ということもありますが、持続性がない。せいぜい1週間くらいの話です。でも、飲食店は一度火がつくとそのままどんどん上がっていく傾向にある気がします。いい商品が開発できたり、メディアに紹介されたりすると、そのまま人気がしばらく継続する。人が人を呼んでくるというか、いい店があると誰かに紹介したくなる心理が働くのではないでしょうか。ただ、飲食はそんなにもうかるビジネスではないということも分かりました。もうけようと思ったら、もっとほかのビジネスがあると思います。

――では、なぜベイクルーズは飲食を続けるのか? その原動力は?

野田: まず、食に対してお金をかける人が増えていること。さらにアパレル、特に僕らがやっているようなセレクトショップは、30代から40代が中心で、客層が限られています。それに比べて飲食は年齢や性別を問わず誰もがターゲットになり、多くの人に喜んでもらえるビジネスだと思っています。

――20代はファッションにお金をかけない時代になっている?

野田: 今の20代は古着店やフリマアプリを上手に活用しているので、ファッションにお金をかける人は昔に比べて少なくなったように感じます。でも、新しいパンケーキ店を開くと、10代、20代はたくさんやって来ます。