少量生産で個性的な味が売りの「Bean to Bar」チョコレートの人気が高まり、ついに大手メーカーの明治も参入するなど、激変しつつあるチョコレート市場(関連記事「スーパーで「高級板チョコ」が人気のワケ」)。

 そんななか、もう一つ、市場を動かしそうなのが、「ハイカカオ」(高カカオ)チョコレートだ。チョコレート市場は2011年から年々拡大しており、なかでもハイカカオチョコレートが健康イメージと相まって市場をけん引している。

 その人気の先駆けとなったのが、1997年に発売された森永製菓の「カカオ70」(2005年にリニューアルし、現在は「カレ・ド・ショコラ<カカオ70>」)。「ハイカカオチョコレート単品ではトップの売り上げ(※1)で、2016年は2011年比約260%(同社調べ・前年8月~7月の1年間累計・出荷ベース)とここ数年も売り上げが伸び続けている」(森永製菓 菓子食品マーケティング部 チョコレートカテゴリ 八木格マネジャー)という。

森永製菓の「カレ・ド・ショコラ<カカオ70>」(参考小売価格330円)
森永製菓の「カレ・ド・ショコラ<カカオ70>」(参考小売価格330円)
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 一方、ハイカカオチョコレートのブランド別累計販売金額で売り上げトップ(※2)は、明治の「チョコレート効果」シリーズ。1998年に “高ポリフェノールチョコ”として発売し、2006年からカカオ成分の比率が異なるハイカカオチョコレートを複数展開(現在は7アイテム)。2012年からの4年間で販売金額が約4倍になっている(下のグラフ参照)。

明治の「チョコレート効果」シリーズは現在7アイテムをラインアップ。写真は「チョコレート効果カカオ72%」 (参考小売価格220円)
明治の「チョコレート効果」シリーズは現在7アイテムをラインアップ。写真は「チョコレート効果カカオ72%」 (参考小売価格220円)
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ロッテも参入! “ハイカカオチョコ戦争”が激化(画像)
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 ちなみに日本チョコレート・ココア協会によると、チョコレートの「ハイカカオ」「高カカオ」表示に定義はない。「一般にカカオ分40~60%くらいまでのチョコレートが『ビター』『ブラック』『ダーク』などとネーミングされていたり呼ばれたりしているが、それ以上カカオ分が高いチョコレートについては一般的にはハイカカオ、高カカオなどということが多い」(同協会)。明治のウェブサイトを見ると、同社の代表的チョコレート「ミルクチョコレート」のカカオ分は35~40%。一般的なチョコレートのカカオ含有量は30~40%とすると、ハイカカオチョコレートはカカオ分がその2倍近く入っていることになる。そのため健康にいいとされているカカオポリフェノールが効率的にとれるうえ、相対的に砂糖や乳脂肪が少なくなることが人気の最大要因だ。

 そして2016年、ロッテもハイカカオチョコレートに参入。2016年10月11日、「スイーツデイズ おいしいハイカカオ74%<エクアドル&ガーナ>」(以下「おいしいハイカカオ74%」)を発売した。ハイカカオチョコレート市場では老舗で固定ファンが多い森永製菓、幅広いシリーズ展開で急激にシェアを広げている明治に対し、後発のロッテはどう差異化していくのか。

2016年10月に発売された「スイーツデイズ おいしいハイカカオ74%<エクアドル&ガーナ>」(55g、希望小売価格は230円前後)
2016年10月に発売された「スイーツデイズ おいしいハイカカオ74%<エクアドル&ガーナ>」(55g、希望小売価格は230円前後)
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※1:インテージSRI高カカオチョコレート市場2010年9月~2016年12月累計、※2:インテージSRI高カカオチョコレート市場2010年9月~2015年8月累計

20年かけて日本人好みのハイカカオを研究した森永

 まずは、日本の大手メーカーとしていち早くハイカカオチョコレートを発売した森永製菓に話を聞いた。

 森永製菓は1918(大正7)年に、日本で初めてカカオ豆からのチョコレートの一貫製造による日本初の国産ミルクチョコレートを発売したメーカー。いわば日本のBean to Barチョコレートの元祖ともいえる存在だ。ハイカカオチョコレートの先駆けになったのも同社で、1997年にカカオ70%の「カカオ70」を発売している。「発売当初は“健康のため”というよりは“おいしさ”重視。カカオのおいしさをシャープに引き出すために、カカオをより高配合したチョコレートを提供したいと考えた」(森永製菓 コーポレートコミュニケーション部 国近文子部長)。“コンビニやスーパーで気軽に買える素材重視のシンプルで高品質なプレミアムチョコレート”を追求した結果が、ハイカカオチョコレートだったというわけだ。「単にカカオ分が高いだけではなく、“日本人の口に合うおいしいハイカカオのチョコレート”を作るために、欧米人と違う日本人の嗜好を研究して完成させた。創業者の森永太一郎が掲げた『日本に西洋菓子を広めたい』という目標と、根底は変わっていない」(国近部長)。

 「ハイカカオチョコレートのブームは過去何回もあった。2004年ごろに『チョコレート・ダイエット』という本が話題になったときには、高カカオチョコレートの売り上げが一気に伸びたが、ブームが終息するのも早かった」と、森永製菓の八木格マネジャーは振り返る。しかし「カレ・ド・ショコラ<カカオ70>」は、チョコレートダイエットのブームが終わったあとにじわじわリピーターが増え、売り上げを伸ばしている。2013年にはテレビ番組(「たけしのみんなの家庭の医学」)でハイカカオチョコレートが高血圧の予防改善に役立つと紹介され、高血圧に不安を持つ50~60代の男性もハイカカオチョコレートを購入するようになった。

 「入口は『健康のため』でも、『食べたらおいしかった』『クセになる』という人が多いことが、継続購入につながっているのでは」と八木マネジャーは見ている。おいしくなくても健康のためにガマンして食べているのであれば、ほかに健康によさそうな食品が出ると、そちらに移るからだ。

 「ブームの最中にハイカカオチョコレートを食べ始めた人たちには、もしかしたら『あまりおいしくないけれどダイエットのため』という、味のトレードオフ(二律背反)があったのかもしれない。その中で『カレ・ド・ショコラ<カカオ70>』を知り、ハイカカオチョコレートのおいしさを知っていただけたのではないかと見ている。今回のハイカカオのブームは長く、3年くらいハイカカオチョコレートの売り上げが伸び続けている。ハイカカオならではのおいしさを知っていただくことが、食べ続ける習慣に結びつき、健康にもつながると思う」(八木マネジャー)

1997年に発売されたカカオ70%のハイカカオチョコレート「カカオ70」。2005年に「カレ・ド・ショコラ<カカオ70>」にリニューアル
1997年に発売されたカカオ70%のハイカカオチョコレート「カカオ70」。2005年に「カレ・ド・ショコラ<カカオ70>」にリニューアル
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森永製菓の「カレ・ド・ショコラ<カカオ70>」を薄い板状にしたのは口溶けの良さや口に入れた時の香りの立ち方などを細かく計算した結果だという
森永製菓の「カレ・ド・ショコラ<カカオ70>」を薄い板状にしたのは口溶けの良さや口に入れた時の香りの立ち方などを細かく計算した結果だという
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2層構造でハイカカオの苦みを閉じ込めた?

   1964年に初のチョコレート製品「ガーナミルクチョコレート」を発売した後、1979年に「パイの実」、1984年に「コアラのマーチ」、1994年に「トッポ」など、独自性のある チョコレート注入型菓子を次々にヒットさせているロッテ。その同社がハイカカオの食べにくさを解消するために編み出したのが、二層構造だ。「『健康のためにハイカカオのチョコレートを食べたい』というニーズが急増しているが、ハイカカオだと苦味が強すぎて食べにくいという声も多い。健康的とはいえ、お菓子なのでやはり情緒的な楽しさも加味したいと考え、 “ハイカカオなのにおいしいチョコレート”を約1年間かけて研究した」(ロッテ マーケティング統括部 第二商品企画部 新商品企画室 萩生田雅尚主査)。

 「おいしいハイカカオ74%」は、外側の甘めのチョコレート(ガーナ産カカオ豆)の中に、やや苦みの強いチョコレート(エクアドル産カカオ豆)を閉じ込めた2層構造にした。「2層構造なので、舌の上で溶けた瞬間に甘みとほどよい苦みが融合し、食べ始めとかんだ後で味わいが変化する。最初から混ぜて成型する従来のチョコにはない、より複雑なおいしさが味わえる」(萩生田主査)。研究段階では、カカオの産地と割合の組み合わせ、外側のチョコレートと内側のチョコレートの比率などを変えて約100パターン も試作。2種類のチョコレートそれぞれの口どけや硬さを微調整し、スムーズかつ一体感のある食感を実現したという。ハイカカオチョコレート市場は今、激戦区だが、販売直後から反応は上々だそうだ。

 「ビターチョコレートの市場はごく小さかったが、ここ数年のハイカカオブームで各社が次々に新商品を投下しており、市場が急激に広がっている。購入している中心は、従来のチョコレートよりも年齢が高めの50代から60代女性。男性シニア層などこれまでチョコレートをそれほど食べなかった人にも購入が見られ、健康意識の高い人に継続購入されやすいのも特色。ハイカカオチョコレートが、今後のチョコレート市場を拡大する可能性を秘めている」(同社)。

「おいしいハイカカオ74%」はカカオの味わいや香りがより体感できる2層構造のひと口チョコ。外側には日本人になじみの豊かなコクがあるガーナ産カカオ豆、内側には独特の華やかな香りと心地よいほろ苦さがあり個性の強いエクアドル産カカオを使用
「おいしいハイカカオ74%」はカカオの味わいや香りがより体感できる2層構造のひと口チョコ。外側には日本人になじみの豊かなコクがあるガーナ産カカオ豆、内側には独特の華やかな香りと心地よいほろ苦さがあり個性の強いエクアドル産カカオを使用
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ハイカカオ戦争の争点は「より高カカオ+機能性」に?

 ハイカカオブームが長く続いている理由のひとつが、味の向上だ。かつては「体にいいけど、苦くて食べづらい」と思われていたが、売れ筋のハイカカオはどれも言われなければわからないくらい食べやすい。むしろ一般的なチョコレートよりもコクと深みがあり、おいしいくらいだ。そしてハイカカオを食べ慣れると、もう以前の一般的なチョコレートでは満足できなくなり、よりカカオ分が高いチョコレートが食べたくなる。そうしたニーズを反映し、森永製菓も明治もさらにカカオ分の多いチョコレートを次々に投入。明治は「チョコレート効果」のラインアップに86%、95%を加え、森永製菓は「カレ・ド・ショコラ」のシンプルな食べやすさの延長で完成させたカカオ分88%の「カレ・ド・ショコラ<カカオ88>」を発売している。

 またカカオ分70%以上のチョコレートに、別の健康食材をプラスした製品も多く出ており、森永製菓も生きたビフィズス菌BB536約100億個を配合した「ビフィズス菌チョコレート」を2016年10月に発売している。その背景には、ロッテのメガヒット商品「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」があるようだ。同商品は2015年10月に発売され、出荷数累計が2016年12月までの14カ月間で3000万個を突破。「100円以下の低価格帯チョコレートではこのようなヒット商品が時々誕生するが、300円以上の高価格帯でこれだけ売れ、しかも継続購入されている例はこれまでなく、驚いている」(ロッテ)という。

 一方、明治は2016年7月に「高カカオとアーモンドで食物繊維たっぷり」をキャッチフレーズにした「アーモンドチョコレートカカオ70%」を発売。森永製菓も2016年8月に健康効果で注目されている「クルミ」と「ザクロ」をハイカカオチョコレートにプラスした「カカオ70×くるみ」「カカオ70×ざくろ」を発売している。「ダイエットを意識している方が、お菓子やチョコレートを食べる時に感じるちょっとした後ろめたさが、ハイカカオチョコレートの健康イメージで払拭されているのだと思う。ブームとはいえ、実際にはまだハイカカオチョコレートのおいしさをご存じない方も多い。より広く知っていただくためにも、春以降も健康素材との組み合わせなどラインアップも強化していきたい」(国近部長)。

明治の「チョコレート効果カカオ86%」「チョコレート効果カカオ95%」(いずれも参考価格220円)
明治の「チョコレート効果カカオ86%」「チョコレート効果カカオ95%」(いずれも参考価格220円)
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健康に良いとされる食材をプラスした明治の「チョコレート効果オレンジ&大豆パフ」(参考価格は各220円)
健康に良いとされる食材をプラスした明治の「チョコレート効果オレンジ&大豆パフ」(参考価格は各220円)
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カカオ分を88%配合した森永製菓の「カレ・ド・ショコラ<カカオ88>」(希望小売価格330円)
カカオ分を88%配合した森永製菓の「カレ・ド・ショコラ<カカオ88>」(希望小売価格330円)
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2016年8月に「カレ・ド・ショコラ カカオ70」シリーズから発売された「カカオ70×くるみ」「カカオ70×ざくろ」(各330円)
2016年8月に「カレ・ド・ショコラ カカオ70」シリーズから発売された「カカオ70×くるみ」「カカオ70×ざくろ」(各330円)
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森永製菓の「ビフィズス菌チョコレート」(希望小売価格250円)
森永製菓の「ビフィズス菌チョコレート」(希望小売価格250円)
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(文/桑原恵美子)