明治はBean to Barではなく“Farm to Bar”!?

 昨今の消費トレンドも、大手がBean to Barに参入した理由として大きい。「日本ではシニア層が増えたことで、多少高くても良質で体に良いものを求める人が増えている。また世界的にも、原料がはっきり見えるもの、安心して食べられるものを求める風潮が強くなっている。シンプルで飾らず、徹底的に素材を磨き上げるBean to Barチョコレートはそのニーズにぴったり合致する」(明治 菓子商品開発部スペシャリティチョコレート担当の宇都宮洋之氏)

 さらに宇都宮氏によると、日本のチョコレートの原料となるカカオは7~8割がガーナ産で、似たような味になりがち。Bean to Barはいろいろな土地の希少なカカオ豆からチョコレートを作ることができるので、個性的な味が作り出せることも受けている要因だという。半面、一工場あたりの取引量が少ないので割高になり、高価なチョコレートが少量しか作れないというデメリットもある。

 たしかに、さきほど紹介したダンデライオン・チョコレートが店頭で販売している板チョコは1枚1200円程度、エミリーズチョコレート奥沢がイベントや自社サイトで販売している板チョコレートは1500円前後と、価格は大手の一般的な板チョコに比べると10倍近く高い。さらに、少ロット生産なので品切れになることも多い。

 そうしたデメリットを解決するため、明治では2006年から「メイジ・カカオ・サポート(MCS)」という活動を開始。これは特定地域のカカオ農園をまるごと自社で抱え、社員が実際に現地の農家に出向いて高品質なカカオ栽培を支援・指導する活動だ。さらに生産地の住民に対する生活支援を行ったり、他社よりも高い価格で買い取ったりすることで農家との信頼関係を築き、まとまった量の良質なカカオを安定調達できる体制を整えたという。「直接取引なので中間マージンが不要。だから高品質なチョコレートを買いやすい価格で多くの人に提供できる。大手だから可能なコストメリットがあり、Bean to Barの上をいく “Farm to Bar”」(宇都宮氏)と胸を張る。ブームになってから始めたわけではないのだ。

 大手だからできたことは、ほかにもある。Bean to Barで作ったチョコレートは、飾り気のないシンプルな形をしているものがほとんど。だが「明治 ザ・チョコレート」は1枚の小さな板チョコの中に、細かい山形、ドーム形、切り込みが入った形、細いスティック形と、4種類の形状になっている。「90年間、チョコレートを作り続けてきた明治には、口中の量で変化するチョコレートの味を長年にわたって研究してきた膨大なデータがある。そのデータを生かした型で成型し、同じ生地でも異なった味わいが感じられる新しい食べ方を提案したいと考えた」(明治 菓子商品開発部の山下舞子氏)。

 同社が日本人の好むチョコレートの種類を調べたところ、60%がミルクチョコレート、20%がダークチョコレート、20%がホワイトチョコや抹茶チョコなどの味付きチョコレートという結果が出た。そこでミルクチョコレートの消費が拡大すればシェアも拡大すると考え、2016年のリニューアルでは従来のダークチョコレート2品に加え、ダークミルクチョコレート2品を加えた。「データ通りならダークチョコレートの売り上げが少ないはずだが、不思議なことに4品の差がほとんどない」(佐藤専任課長)。購入層の比率は女性が多く、30~40代が多いのは予想通りだったが、20代女性に想定以上に売れているのも驚いた点だそうだ。ちなみにミルク系の2品もカカオは通常のミルクチョコレートの約2倍使用し、砂糖を減らして甘さ控えめにしている。「甘さではなく、カカオとミルクを味わう『ダークミルクチョコレート』という新しいカテゴリーを日本に広めていきたい」(佐藤専任課長)。2016年12月13日からはシリーズに「ジャンドゥーヤ」「フランボワーズ」も加わり、こちらも好調だという。

「メイジ・カカオ・サポート(MCS)」ではカカオ豆生産を持続可能にするために社員が生産国を定期的に訪問。井戸や蚊帳の寄贈、苗木センターの開設、ファーマー・トレーニング・スクールの開催などさまざまな支援を行っている
「メイジ・カカオ・サポート(MCS)」ではカカオ豆生産を持続可能にするために社員が生産国を定期的に訪問。井戸や蚊帳の寄贈、苗木センターの開設、ファーマー・トレーニング・スクールの開催などさまざまな支援を行っている
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丸くて厚みのあるドーム形の部分は舌に付く面積が大きく溶けるのに時間がかかるため、ミルクチョコレートの濃厚さが強く感じられる。細かいギザギザの部分は口の中で素早く溶けるため、カカオの香りがよりはっきりと感じられるという
丸くて厚みのあるドーム形の部分は舌に付く面積が大きく溶けるのに時間がかかるため、ミルクチョコレートの濃厚さが強く感じられる。細かいギザギザの部分は口の中で素早く溶けるため、カカオの香りがよりはっきりと感じられるという
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