オリジナル番組から見えてくる各社コンテンツ戦略

 一方で、NetflixやHulu、アマゾン、dtvなど、各社はそろってオリジナル番組による囲い込みも強化している。ドラマだけでなく、アニメ、バラエティー、リアリティーショー、ドキュメンタリーなどと、一定層に向けてジャンルの幅を広げていることが最近の特徴だ。

 海外で人気のあるお見合い形式の恋愛リアリティーショーは『バチェラー』の日本版や『テラスハウス』などが挙げられる。アマゾンのプライム・ビデオで配信されている『バチェラー・ジャパン』はまもなくシーズン2の開始を控えているし、Netflixでは『テラスハウス』に続いて『あいのり』の新作も配信され、一定層から支持されているという。ドラマやアニメほど人気のあるジャンルではないが、各社共通の課題としている女性層を取り込めることからラインアップに加えられている。

プライム・ビデオでは2018年春から『バチェラー・ジャパン』のシーズン2の配信を開始する
プライム・ビデオでは2018年春から『バチェラー・ジャパン』のシーズン2の配信を開始する
[画像のクリックで拡大表示]

 ドキュメンタリーも最近動きがあるジャンルだ。決して売れ線ではないが、各社の動画配信サービスのブランドイメージを高めるからだろう。日本オリジナルのドキュメンタリーは、アマゾンのプライム・ビデオで4Kドキュメンタリーシリーズ『日本のこころに出会う』が配信されている程度で、ほかに目立つものはないものの、NetflixやHuluが、国際共同制作を目的に日本で開催されているドキュメンタリーの企画会議「Tokyo Docs」に2016年、2017年と2年続けて出席している。骨太のドキュメンタリー番組の展開も視野に入れていると見ていいだろう。

独り勝ちするライバルを蹴落とす米国の買収劇

 動画配信サービスが普及している米国では、ライバルを蹴落とそうとする動きも激しさを増しそうだ。独自の動画配信サービスを計画するディズニーがFOX買収を計画しているのは、独り勝ちするNetflixの対抗策であることは明らか。既存のコンテンツはもちろんのこと、IP(ドラマやアニメ、そのキャラクターなどの知的財産)の開発段階から囲い込みを始めようとしている。ライバルには、YouTubeが提供する定額制サービスのYouTube Redや、Facebookが開始したFacebookビデオなど、資本力のあるテクノロジー系企業も登場しているからだ。Facebookは2017年10月にフランス・カンヌで開催された番組コンテンツ見本市MIPCOMで、近々、世界展開を開始する考えを明らかにした。

Facebookのグローバルクリエイティブ戦略の責任者、リッキー・バン・ビーン氏は、同社最大の構想であるオリジナル番組制作の戦略について、同社制作ディレクターのダニエル・ダンカー氏と共にMIPCOM2017のキーノートセッションに登壇し、説明を行った (C) Y. COATSALIOU / 360 MEDIAS
Facebookのグローバルクリエイティブ戦略の責任者、リッキー・バン・ビーン氏は、同社最大の構想であるオリジナル番組制作の戦略について、同社制作ディレクターのダニエル・ダンカー氏と共にMIPCOM2017のキーノートセッションに登壇し、説明を行った (C) Y. COATSALIOU / 360 MEDIAS
[画像のクリックで拡大表示]
Facebookのグローバルクリエイティブ戦略の責任者、リッキー・バン・ビーン氏
Facebookのグローバルクリエイティブ戦略の責任者、リッキー・バン・ビーン氏
[画像のクリックで拡大表示]

 日本でも新たな大型のプラットフォームの誕生が控えている。日本経済新聞社、TBSホールディングス、テレビ東京、WOWOWら6社共同による定額制動画配信サービス「Paravi」が2018年4月からスタートする。しかし、6社の中には既にコンテンツプロバイダーとして他社の動画配信サービスにコンテンツを提供している企業や、自社の動画配信サービスを持っている企業もある。それなのに、共同で後発となる新たなサービスを立ち上げる狙いは何か。

 関係者は、「いずれプラットフォームが淘汰された時に、市場原理として流通側に価格決定権を握られる恐れがある。その対策として立ち上げる意味はあります。毛色の違ったコンテンツプロバイダー同士が組むことでバリエーションを作りながら、リスクを最小限に抑えることができるはず」と話す。

 国内外の動画配信サービスが乱立する中、今は、コンテンツ制作力と技術力、資本力の3つを併せ持つ企業だけが勢力を強めていく向きが強い。2018年、この乱立状態を打破する一手を打てるのはどこなのか。まずはそこに注目である。

(文/長谷川朋子=テレビ業界ジャーナリスト)