パソコンやテレビからの利用を加味せず?

 なぜこのような事態に陥ったのか。山田氏は「Android利用者だけを、調査対象としていたため」と見る。なぜなら「AbemaTV利用者の6割超はiOSから利用する。Android利用者は4割程度にとどまる」(山田氏)。加えて、72時間ぶっ続けで放送する長時間番組だったため、通常の番組と比べて、パソコンやネットに接続したテレビなどから視聴される比率が大幅に多かったという。そのため、「統計手法には問題なくても、前提条件に偏りがあった。結果、実態とかけ離れた数値だった」(山田氏)ため、看過できなかったようだ。そして、その証左として具体的な視聴数の公開に踏み切ったのだろう。

 だが、そもそもビデオリサーチの調査は、パソコンからの利用者のデータも加味している。また、仮にAndroidアプリからの利用者が全モニターの2割だった場合、iOSの利用者も同等の出現率だろうという仮説の下、AbemaTVを利用したモニターを日本の人口分布に割り戻すのが、この手の調査では一般的だ。

 ビデオリサーチ側も信用問題に関わる調査だけに「かなり慎重に数字を推計していた」(関係者)。調査結果の文面でも「調査エリアや測定範囲の制限などがあるため、分析には少なからず荒っぽさを含んでいる」と言葉を選び、あくまで自社の調査サービスでの結果であることを明示していた。専門家の目から見ても「手法としては特段、問題はない」(ほかの調査会社関係者)。それでも、取り下げざるを得ないほどの猛抗議にあったのが実態のようだ。

 AbemaTVはまだ投資フェーズにある。12月18日付けの官報に掲載された決算公告から、AbemaTVの2017年9月期の最終損益は191億円の赤字であることが明らかになった。2018年度も引き続き200億円を投資する方針だ。

 こうした中、自社にとって都合の悪い調査会社の数値、一つひとつに目くじらを立てていては、焦りとも捉えられかねない。藤田氏は755で「視聴率換算には付き合わないと決めとこう」と投稿しながら、一方で株主総会では「視聴率にして5%くらい」と、やや一貫性に欠ける発言もしている。

 若者のテレビ離れが叫ばれる中、AbemaTVはネット時代の新しい動画のマスメディアを標榜する。テレビが60年以上をかけて築いてきた地位に追いつくのは容易ではない。だからこそ、周囲の声に惑わされることなく、腰を据えた事業展開が肝要ではなかろうか。

(文/中村勇介=日経トレンディネット)