ECは広告が伸び悩む中での新たな成長エンジン

 ヤフーは「Yahoo!トラベル」など一休と同じサービスを展開しているとはいえ、対象としている店舗やターゲット層は一休と大きく異なる。同じ事業内でのバッティングが少なく、補完関係が築けることも、買収に至った大きな要因といえるだろう。

一休とヤフーのサービスとでは対象とする店舗や顧客が異なることから、サービス間のバッティングが少ない(ヤフーの記者会見プレゼン資料より)
一休とヤフーのサービスとでは対象とする店舗や顧客が異なることから、サービス間のバッティングが少ない(ヤフーの記者会見プレゼン資料より)
[画像のクリックで拡大表示]

 ではなぜ、そもそもヤフーは一休などを買収し、EC事業の拡大を進めているのだろうか。その背景にあるのは、スマートフォンによる広告収益の構造変化だ。

 ヤフーは従来、パソコン向けのサービスを主体として展開してきており、近年まではYahoo! Japanの検索サービスからキーワード検索をした際に表示される「検索連動型広告」が広告事業を大きく伸ばしてきた。だがスマートフォンの普及が進み、スマートフォン上からYahoo! Japanを利用する人が増加するに伴って、その傾向に変化が起きているようだ。

 というのも、検索連動型広告の単価はスマートフォンよりもパソコンの方が高いことが多い。単純にユーザーがスマートフォンへ移行してしまうと、それだけで広告収入が落ちてしまうのだ。そのためヤフーも現在は、ポータルサイト上に直接表示するディスプレイ広告に力を入れることで、検索連動型広告の落ち込みをカバーしている状況だ。

パソコンからスマートフォンへのシフトによって、検索連動型広告の売り上げは減少傾向にある(ヤフー2015年度第2四半期説明会資料より)
パソコンからスマートフォンへのシフトによって、検索連動型広告の売り上げは減少傾向にある(ヤフー2015年度第2四半期説明会資料より)
[画像のクリックで拡大表示]

 主力事業の1つである広告を大きく伸ばすのが難しい中、同社が今後業績を大きく伸ばすための伸びしろとして目を付けたのが、EC事業だったわけだ。そして今回の一休の買収も、業績拡大を見据えたEC事業拡大の一環となっているのである。

 無論、一休の買収が大きな成果をもたらすかどうかは、今後のヤフーの取り組み次第でもある。一休の買収が成立すれば、創業者の1人である森正文社長が退陣することを表明しているだけに、買収の成否にはヤフー側のかじ取りが一層大きな影響を与えることになるだろう。まずは一休の店舗や顧客を維持しながら、いかに自社サービスと連携させてユーザーメリットを打ち出せるかが、勝負になってくるといえそうだ。

(文/佐野正弘)