スマートフォンシフトで音楽配信市場は激変

 着うた・着うたフルの人気によって、音楽配信の主流はパソコンからモバイルへと大きくシフト。先の「日本のレコード産業 2010」によると、着うた・着うたフルが全盛期の2009年には「モバイル」の音楽配信が、音楽配信の売上金額全体の87%を占めており、音楽産業全体でも欠かすことのできない存在となっていたことが分かる。そうした流れを受け、同年にはレーベルモバイルも、サービス名を取り入れて現在の「レコチョク」へと社名を変更している。

 しかしながらその後、モバイルの音楽配信は劇的な市場変化に見舞われることとなる。それは言うまでもなく、2008年に「iPhone 3G」が発売されて以降、急速に広がったスマートフォンの影響だ。

 中でもスマートフォンブームの火付け役となった、iPhoneシリーズを提供するアップルの影響は大きかった。アップルは元々iTunes Storeを持っていたことから、他社がiOS向けにダウンロード型の音楽配信サービスを提供することを、実質的に認めなかったのである。後に国内で主流となったiPhone向けの音楽配信サービスを提供できなかったことで、多くの音楽配信サービスを提供する企業が、ビジネス機会を失ってしまったのだ。

 一方のAndroidに関しては、音楽配信自体は開かれていたものの、パソコン同様インターネット上の楽曲を自由にダウンロードできる、オープンな環境となっていた。そのため、これまでクローズドな環境で、著作権保護の仕組みがしっかり働いていたフィーチャーフォン上で配信ビジネスを手掛けていた、レコチョクをはじめとした多くの事業者は、環境の違いに苦戦することとなったのである。

 フィーチャーフォンユーザーの減少に加え、スマートフォンがもたらした一連のパラダイムシフトにのみ込まれる形で、着うた・着うたを主体としたモバイルの音楽配信市場は一気に衰退。「日本のレコード産業 2016」によると、2015年にはフィーチャーフォンの「シングルトラック」の売上金額は約16億円となっており、たった6年で最盛期の3%にまで激減したことが分かる。レコチョクが着うた・着うたフルのサービスを終了するに至ったのも、そうした背景が大きく影響しているのは確かだろう。

 しかしながら一方で、スマートフォン向けの音楽配信が急速に伸びたかというと、そうではない。同じく「日本のレコード産業 2016」を見ると、PC・スマートフォン向けの「シングルトラック」の売り上げは、現在もなおフィーチャーフォンの2006年時点の水準に及んでいないのだ。その要因はいくつかあるが、YouTubeで音楽を楽しむ人が増えるなど、スマートフォンによる自由度の高まりによって、無料コンテンツの利用が大きく広がったことも、少なからず影響していると考えられる。

楽曲ダウンロードを主体とした「シングルトラック」の売上推移(日本レコード協会「日本のレコード産業 2015」「日本のレコード産業 2016」を基に作成)。急伸した着うた・着うたフルの市場だが、スマートフォンシフトの影響で激減したことが分かる
楽曲ダウンロードを主体とした「シングルトラック」の売上推移(日本レコード協会「日本のレコード産業 2015」「日本のレコード産業 2016」を基に作成)。急伸した着うた・着うたフルの市場だが、スマートフォンシフトの影響で激減したことが分かる
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