「あれだけの規模で市場に残れない」

 プラスワン・マーケティングによる楽天への事業譲渡ならびに今回の経営破綻は、業界関係者に衝撃を与えた。2017年3月末時点で40万件超の契約数を誇り、格安SIM市場で業界5位に着けていたにもかかわらず、あっけなく破綻した。大手MVNOの幹部も「あれだけの規模で市場に残れない。同じ轍は絶対に踏まないと気を引き締めた」という。

 今回の一件から教訓として言えることは、「身の丈に合った取り組みを進める」という当たり前のことだ。「端末事業と通信事業の両方を手掛けることは理想的で良かったが、大手の端末メーカーでも実現できていなかった。MVNO市場が伸び盛りとはいえ、有名タレントを起用した派手な広告展開や独自店舗(フリーテルショップ)の大々的な展開と相当に無理があった」(MM総研の横田英明常務取締役)。

プラスワン・マーケティングは有名タレントを起用した派手な広告を展開していた
プラスワン・マーケティングは有名タレントを起用した派手な広告を展開していた
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 歯車が狂い始めたのは、2017年4月21日に消費者庁の行政処分を受けてからだ。「業界最速」や「シェアNo.1」といった広告表示が優良誤認や有利誤認に当たると指摘を受け、顧客の獲得が思うようにできなくなった。事業の様々な部分で綻びが出始め、最終的には資金繰りの悪化で一気に転げ落ちた。

 これまでも一部で撤退や事業譲渡はあったが、大手の破綻は初めて。ただ、今回の一件は序章にすぎない。MM総研の横田常務取締役は「プロバイダーと同じ道をたどる」と指摘する。プロバイダーもインターネット接続ブームに乗って一時は数千規模のプレーヤーが参入したが、徐々に淘汰・集約されていった。「2018年はいよいよMVNOでも(撤退や事業譲渡の)動きが本格化する可能性が高い」(同)。

 携帯電話大手3社は格安スマホ対抗のガードを固めつつ、KDDI(au)やソフトバンクはサブブランドで市場を率先して奪いに来ている。MVNOは「大手も苦しくなってきており、中堅はさらに厳しい」(同)。「勝ち組」と「負け組」がはっきりと分かれてきており、そろそろ撤退や事業譲渡の決断を迫られるプレーヤーが登場しても不思議ではないというわけである。

 今後の課題は消費者保護だ。プラスワン・マーケティングは今回、「とりかえ~る」や「特別買取サービス」、「PREMIUM端末補償」の提供を中止するとした。通信回線の契約は楽天に譲渡したが、これらはプラスワン・マーケティングが継続してサービス提供していたものである。ユーザーが不利益を被るような事態が広がれば、MVNO全体の信用低下につながりかねず、丁寧な対応に期待したい。

(文/榊原 康=ITpro)