70億円でDMM.comグループの傘下に

 バンクはプロモーションにおいてもアクセルを踏む。メルカリNOWの開始と同日、バンクはCASHの最低買取価格を1000円に引き上げるキャンペーンを始めた。どんな物でも、買い取り対象品であれば1000円以上の値がつく。「通常であれば1000円以下の査定額となる物でも、マーケティングコストと割り切って買い取る」(光本氏)。

 買取金額の上限の増額や、思い切ったマーケティング施策に踏み切れる理由は、同社が11月21日にDMM.comの傘下となったからだ。買収が明らかになった当日には、創業からわずか数カ月のバンクにDMM.comが70億円という巨額を投じたことが話題を呼んだ。光本氏は買収額として提示した70億円について「即時買取アプリの今後の市場規模も予測できないうえに、競合が表れるかも分からなかった。まったくロジカルな数字ではない」と率直に言う。だが、「感覚的には、それぐらいの資金がないと競合が現れたときに戦えない」(光本氏)ことを感じていた。

 というのも、CASHは初めてサービスを公開してから、わずか16時間34分で停止に追い込まれている。その理由は買い取りが殺到したからだ。その数なんと7万超。買取総額は3億6629万3200円に上った。このペースで買い取りを続けていては、資金が続かない。やむなくサービスの停止を判断した。

想定以上の買取品がオフィスに届いた。途方に暮れるバンクの光本勇介社長
想定以上の買取品がオフィスに届いた。途方に暮れるバンクの光本勇介社長
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小さなオフィスは届いた買取品で溢れ返ってしまった
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 この経験から光本氏は「今後、市場が広がる大きな可能性を感じるとともに資本力の勝負になる」ことを確信した。そんな時にDMM.comの創業者で取締役会長の亀山敬司氏から声がかかった。DMM.comグループは動画配信サービス、ソーシャルゲーム、オンライン証券会社など、さまざまなネット事業を展開。会員数は2700万人を超える。今年度の売上高は1969億円を見込む。この大手ネット企業の持つ資金力を武器とするために、光本氏は傘下に入ることを決めた。

 資金面だけではなく、プロモーションの強化にもDMM.comグループの資産を生かせる。CASHは11月からネット広告を活用した、アプリのダウンロード促進策を強化している。ネット広告は閲覧者数やクリック数、ダウンロード数など細かな数値を取得できる。この数値を基に広告を掲載するサイトや、配信対象者を改善するなどの運用によって、広告効率を高められる。

 ただし、それにはネット広告に関する豊富な知識を持つ人材を必要とする。ベンチャー企業であれば、そうした人材にまでは手が周りにくいもの。だが、バンクはDMM.comの広告運用部隊の協力を得ることができている。これにより、バンク側は「サービスの改善に注力できる」(光本氏)。こうした、DMM.comグループの資産をフル活用することで、メルカリの追随を振り切りたい考えだ。