「格安SIM」の通信速度、2018年は遅くなる?(画像)
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 大手携帯電話会社よりも通信コストが安く、通信会社(MVNO)ごとに特徴的なサービスが提供されている「格安SIM」。MVNOは基地局をはじめとした大手携帯電話会社のネットワーク設備に相乗りする形でモバイル通信サービスを提供しているが、MVNO自身が持つネットワーク設備や確保している帯域の状況によって、その通信速度は各社で異なる。

 特に、平日昼の12時台や18時台は利用が集中するため、通信速度が遅くなりやすい。速度の低下を防ぐには設備の設定や増強といった対策が欠かせず、MVNO各社の取り組みに左右される。

 今回は、日経トレンディネットの専門サイト「格安スマホはこう選べ!」が、2016年9月から2017年10月までの1年間、計測してきた格安SIMの通信速度テストの結果を振り返ってみよう。

 格安SIMの通信速度テストでは、およそ2カ月ごとに「IIJmioモバイルサービス(タイプD)」「楽天モバイル」「イオンモバイル」「OCN モバイル ONE」「LINEモバイル」「BIGLOBEモバイル(タイプD)」「mineo(Dプラン)」「FREETEL SIM」の8社の格安SIMについて実際に通信速度をテストしている。

 測定地点は東京都内の新宿駅周辺と秋葉原駅周辺、そして地方都市の例として長野県佐久市・佐久平駅周辺の3カ所だ。測定は毎回平日、通信速度が比較的良好な9時台と、通信速度が遅くなる12時台および18時台に実施。イードの速度測定アプリ「RBB SPEED TEST」とYouTube再生時の下り平均速度をそれぞれ測定することで、通信回線そのものの実力と、実際の利用環境における通信速度の双方を評価している。

 1年間の結果を振り返ることで、時期が及ぼす通信速度への影響や、各社の速度の変遷などを視覚化し、個々の測定では見えづらい格安SIMの長期的な通信品質の変化を捉えたい。

速度測定アプリの結果はどうだった?

 まずは、速度測定アプリ「RBB SPEED TEST」による結果から振り返ってみよう。各地点で5回ずつ下りの通信速度を測って平均値を算出。測定した3地点の全時間帯の平均値を以下の表にまとめてみた。

 なお、各測定で最も速かった数値は赤、遅かった数値は青で色分けしている。また、1年間の推移が分かりやすいようにグラフも作成した。

RBB SPEED TEST の下り平均速度一覧(16年9月から17年10月まで)
RBB SPEED TEST の下り平均速度一覧(16年9月から17年10月まで)
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RBB SPEED TEST の下り平均速度推移(16年9月から17年10月まで)
RBB SPEED TEST の下り平均速度推移(16年9月から17年10月まで)
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 2016年9月の測定(都内の新宿駅周辺・秋葉原駅周辺は9月30日、長野県佐久市・佐久平駅周辺は9月26日に実施)では、同月21日に正式サービスを開始したばかりのLINEモバイルが好調で、36.79Mbpsを発揮。OCN モバイル ONEをのぞく6社が10Mbps台にひしめくという状況だった。

 ところが、翌2017年1月から3月にかけて、各社の通信速度は低迷していく。17年3月はLINEモバイル以外の7社が10Mbps以下にまで遅くなってしまい、この傾向は以後半年近く続くことになる。

 直近の2017年10月に実施した測定では、全体の平均値が底を打った8月に比べて、8社とも速度が上がってきた。なかでも17年3月に4.36Mbpsまで落ち込んだBIGLOBEモバイルは、10月になると16.66Mbpsまで増速。7社で唯一、16年9月の速度を上回るレベルに達している。

 だが、他の格安SIMでは1年前の水準を下回る状況が続いている。例えば楽天モバイルの場合、16年9月の速度は19.17Mbpsだったが、17年10月は半分の9.75Mbpsにとどまっている。

YouTube再生時の速度はどうだった?

 続いて、YouTube再生時の下り平均速度を振り返ってみよう。

 計測方法は、Lufesu Inc.の「通信速度モニター」を使って1秒ごとの最大通信速度を画面に表示した状態で、YouTubeアプリで動画を再生し、その様子をHecoratの動画キャプチャー「AZスクリーンレコーダー」で記録。AZスクリーンレコーダーで録画された動画を再生して1秒ごとの通信速度を目視で集計し、動画の読み込みが終了するまでの平均速度を算出する、という方法を採っている。

 YouTube再生時の下り平均速度についても、3地点の全時間帯の平均値を以下の表にまとめた。RBB SPEED TESTと同様に、各測定で最も速かった数値は赤、遅かった数値は青で色分け。1年間の推移が分かりやすいようにグラフも作成している。

YouTube再生時の下り平均速度一覧(16年9月から17年10月まで)
YouTube再生時の下り平均速度一覧(16年9月から17年10月まで)
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YouTube再生時の下り平均速度推移(16年9月から17年10月まで)
YouTube再生時の下り平均速度推移(16年9月から17年10月まで)
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 グラフで分かるように、前ページでまとめたRBB SPEED TESTの結果に対し、YouTube再生時の下り平均速度には、特定の時期による影響があまり見られない。

 2016年9月にサービスインしたLINEモバイルは、2017年5月まで好調をキープ。楽天モバイルも、2017年5月まではYouTube再生時の通信速度が徐々に速くなっていたことが分かる。

 ところが2017年7月になるとLINEモバイルと楽天モバイルは大きく失速し、10月の時点でも5月の速度を下回ったまま。一方で、7~8月から10月にかけて大幅にスピードアップしてきたのが、OCN モバイル ONEとBIGLOBEモバイルだ。

 OCN モバイル ONEは2016年9月の時点ではYouTube再生時の速度が8社で最も遅かったが、その後は順調に速度を上げ続け、直近の2017年10月におけるYouTube再生時の下り平均速度は8社中トップの10.00Mbpsという結果に。

 もう一つのBIGLOBEモバイルは、2017年8月までの速度は2~3Mbps台にとどまっていたものの、2017年10月はRBB SPEED TESTの結果と比例するように7.61Mbpsまで向上しており、設備増強の効果が表れているようだ。

 この2社に、ゆるやかに速度を上げてきたmineo、7月の落ち込み以降速度を上げつつあるLINEモバイルを含めた4社では、他の4社との差が広がりつつある。実利用環境の通信速度には、2極化の傾向が表れ始めている。

2018年春までに通信速度は回復するか?

 ネットワークの実力を知るためのRBB SPEED TESTによる結果からは、2017年1月~3月の間に、各社の速度が低下している様子が読み取れた。気がかりなのは、2017年10月に実施した直近の測定で、多くの格安SIMが16年9月の水準に達していないことだ。

 年度が替わる3月から4月にかけては生活が変化する時期でもあり、このタイミングに合わせてスマホを購入しようと考えている人もいるだろう。各社の通信速度が1年前の水準を下回ったままで2018年の春先を迎えれば、2017年の同時期よりもさらに通信速度が遅くなる可能性もある。

 そうなれば、ユーザーの利便性が損なわれるのはもちろん、速度が低下した格安SIMや、市場全体のイメージも低下しかねない。この2~3カ月でどこまで通信環境を改善できるかが、2018年の格安SIM市場を占う上でひとつのポイントとなるだろう。

 明るい兆しもある。例えば、OCN モバイル ONEは2017年の5月と9月にデータの送受信を制御する施策を相次いで取り入れているが、その効果もあってか、YouTubeの動画再生をはじめとした実利用環境はこの1年間で大きく改善されている。

 また、BIGLOBEモバイルも17年8月から10月にかけての改善が目覚ましい。半年もたてば勢力図ががらりと変わってしまうところに、競争の激しさが垣間見える。

 次の1年間で、格安SIMの通信品質はどのように変化するのだろう。日経トレンディネットでは、今後も引き続き通信速度をチェックし、格安SIMサービスの実態を明らかにしていきたい。

(文/松村武宏)

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