Free to Playの逆を行く「お金を払う」安心感

 さらに言えば、エピソード課金という課金方法さえ、コミュニケーションに時間を掛けさせるための仕掛けだったようだ。平林氏いわく、「囚われのパルマでは、プレーヤーからお金をもらうという姿勢を最初から示した。その“壁”を乗り越えてきてくれた人たちだから、いいものさえ作れば、時間を掛けてもついてきてくれるはず」。プレーヤーをある意味、“ふるいにかけた”のだ。

 「その分、金額やそれに見合うコンテンツには心を砕いた」(平林氏)。1エピソード360円はかつてのコミックス1冊分、面会の延長にかかる120円は缶ジュース1本分といった具合に、支払うプレーヤーが実感しやすい金額を設定している。「ガチャのような運試しも楽しいと思う。ただ、囚われのパルマは払った分だけリターンがあるゲームにしたかった」(平林氏)。

カプコンCS第一開発統括第一開発部プロデューサーの平林良章氏と同部第三ゲーム開発室室長の原美和氏
カプコンCS第一開発統括第一開発部プロデューサーの平林良章氏と同部第三ゲーム開発室室長の原美和氏
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 「この発想のベースには、長年、コンシューマ向けにパッケージゲームを販売してきた会社ならではの考えが生きているかもしれない」と平林氏は話す。かつてのゲームは、パッケージで購入するのが一般的だったが、スマホ向けを含むオンラインゲームが一般的になって、基本プレーが無料のFree to Play、ゲーム内で使うアイテムやガチャに課金するアイテム課金、プレーするたびに課金する従量課金などが登場した。これらによってゲームを始めるハードルは低くなった。

 一方で、パッケージ販売には、支払う金額が最初から明確という安心感がある。本編のストーリーだけを楽しむなら、かかる金額は360円の6エピソード分、2160円で済む。もっと深く遊びたいと思ったプレーヤーは、面会延長やテレホンイベントなどの“お楽しみ”コンテンツに追加で課金すればいい。「ゲームの内容への共感で課金してもらえればいいですね」(平林氏)。

 「共感」というキーワードは、囚われのパルマのプロモーションにも生きている。カプコンのゲームタイトルは従来、雑誌やウェブ、テレビなどのメディアを中心にプロモーションを展開してきたが、囚われのパルマではTwitterも活用した。平林氏が「単にこちらから情報を発信するだけでなく、Twitterを介してプレーヤー同士が盛り上がってくれれば」と言うように、Twitterではプレーヤーが「#パルマ」を付けてゲームの感想や購入したグッズの写真、自作のイラストなどを投稿。それがゲームの魅力を広める口コミにもなっている。

 エピソード課金や1週間ごとの公開、Twitterでのプロモーションなど、囚われのパルマは同社にとっての新しい取り組みが詰まったタイトルだ。それがヒットしたことで、平林氏と原氏は「プレーヤーとの向き合い方、楽しみの提供方法に新たな可能性を感じた」と自信を示した。

 最後に、囚われのパルマの展望について聞いてみた。続編はあるのか。ハルト、アオイに続く第3の男性は出てくるのか。「ノーコメント。実はまだどうするか自体、検討中なんです」と平林氏。従来の女性向け恋愛ゲームのように、さまざまなタイプの男性をそろえるという単純な道は歩むつもりはないようだ。

(文/平野亜矢=日経トレンディネット)