関係を深める時間を稼ぐための「謎解き」

 原氏をはじめとする開発陣は、「現実世界と同じように、時間を掛けてコミュニケーションを深めていく喜びやときめきをプレーヤーに味わってほしい」と考えていた。そのため、全部で6つあるエピソードを1週間に1つのペースで公開していった。まとめて公開してしまうと、一気に最後までやり進めてしまうプレーヤーは多い。公開間隔をあえて開けることで、エピソードに付き1週間はやり込んでもらえるようにしたのだ。

 「ただ、これはリスクが大きいやり方だった」と平林氏は言う。なぜなら、途中でプレーヤーが飽きてしまう恐れがあるからだ。ハルトやアオイとの関係が深まる前にプレーヤーが「もういいや」「全然振り向いてくれない」と投げ出すことは十分考えられた。「そこで、コミュニケーションが深まるまでプレーヤーの心をつなぎとめる仕掛けをいろいろ考えました」(平林氏)。

 その中の一つが、謎解きの要素を入れたこと。会話やメッセージを交わすうちに、ハルトやアオイの記憶が少しずつ戻り、彼の正体や過去が明らかになっていく。しかも、各エピソードの終わりには必ず「予告編」映像を付けた。次のエピソードで出てくるせりふや小道具、登場人物を“チラ見せ”することで、期待を高めている。もし「ハルトがなかなか心を開いてくれない」と不満に思っても、先が気になって続けてしまうようにする仕掛けだ。

メッセージで送れる話題にはストーリーと直結しないものも多い。ちなみに「テレビを見るのは好き?」という話題が出てきたが、筆者は「いやいや、監禁されている部屋にはテレビはないし、記憶もないのにその質問は無神経だろう」と思って聞けなかった
メッセージで送れる話題にはストーリーと直結しないものも多い。ちなみに「テレビを見るのは好き?」という話題が出てきたが、筆者は「いやいや、監禁されている部屋にはテレビはないし、記憶もないのにその質問は無神経だろう」と思って聞けなかった
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こちらが「テレホンイベント」のメニュー。エピソードを終えるごとに選べるテレホンイベントが増えるほか、240円の課金で得られるシチュエーションもある
こちらが「テレホンイベント」のメニュー。エピソードを終えるごとに選べるテレホンイベントが増えるほか、240円の課金で得られるシチュエーションもある
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 島で得られる話題や前述した「つぶやき」の中に、本編のストーリーと直結しない要素をたっぷり盛り込んでいるのも、プレーヤーをつなぎ止める仕掛けの一つ。例えば、メッセージで送れる話題には「猫は好き?」とか「占いって信じる?」といったものがある。どんどんストーリーを進めたい筆者は「こんな質問を送っているヒマはない」と無視してしまったが、次のエピソードの公開日までに時間をもてあました人ならば、こういう会話まで楽しみ尽くすだろう。

 ストーリーと直結しない要素として「テレホンイベント」もある。これは本編とは無関係の架空のシチュエーションで、ハルトやアオイと電話するというもの(実際は通話機能は使わず、音声が流れるのみ)。囚われのパルマでは、ハルトの声を『ヤング ブラック・ジャック』の間黒男役などで知られる梅原裕一郎氏が、アオイの声を『マクロスΔ(デルタ)』のハヤテ・インメルマン役などで知られる内田雄馬氏が演じており、しかも端末はスマホ。ゲーム内のメッセージや面会とは違う、恋人同士の電話気分が味わえるというわけだ。シチュエーションの中には、「仕事で失敗して叱られてしまった」「自分が一人ぼっちのような気がした」など、深夜に1人ゲームをやっているとふと選びたくなるようなものも用意されている。

“妄想”を手助けするための“リアル”

 そして、開発者が最も力を入れたのが、ハルトやアオイとのやりとりを徹底的にリアルにすることだった。囚われのパルマは、孤島、記憶喪失、監視など、設定こそ現実離れしているものの、コミュニケーションの手段は徹底的に現実に近づけている」(原氏)。ハルトやアオイとの面会をガラス越しにしたのは、スマホ画面という枠を逆手に取って違和感をなくすためものだし、ゲーム内のメッセージツールのデザインは、多くの人が普段から使っているであろうLINEなどのアプリを意識した。また、最近のスマホゲームでは珍しく、エピソードごとにダウンロードする形を取った。オフラインで動くので、たとえ電波環境が悪い場所でもハルトやアオイとの会話が途切れることはない。

 ハルトやアオイの動きにも徹底してこだわった。ハルトやアオイ以外のキャラクターはほとんど動かない「絵」なのに対し、ハルトやアオイは目線や表情、話しているときの舌まで動く。実は、筆者がプレーして一番驚いたのがここだった。過去にプレーしたどのゲームと比べても、囚われのパルマでは感情を示す動きが小さい。泳ぐ目線や緩む口元など、微妙な動きで喜びや悲しみを伝えてくる。「1つずつは短いモーションのセット。それを組み合わせて動きを表現している。ハルトとアオイで共通して使っているモーションも一部あるが、2人はタイプが違うので、キャラクターごとに作った」(原氏)。その実装には、長年にわたってゲームを手がけてきた同社のエンジニアならではの技術が生きているという。

「囚われのパルマ」に女子がハマる理由をとことん探った(画像)
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スマートフォンを操作したり食事をしたりするときの動きもとても人間に近い