目指したのは1対1のコミュニケーションを重視するゲーム

 話を聞いたのは、ゲームのプロデュースを担当したカプコンCS第一開発統括 第一開発部プロデューサーの平林良章氏と、開発を担当した同社同部 第三ゲーム開発室室長の原美和氏だ。2人によると、囚われのパルマは開発に関わった女性メンバーたちから自発的に生まれた企画だという。

 原氏によると「メンバーに共通していたのは、時間をかけて1対1のコミュニケーションを深めていくゲームを作りたいということ」。背景には、従来の女性向け恋愛ゲームへのアンチテーゼがあった。例えば、従来のゲームでは、複数のイケメン男性が登場し、序盤からプレーヤーに対して最高レベルの好感度で接してくるものが多い。会話などを交わす中で、徐々に相手との信頼関係や親密度を深めていく現実世界との大きな違いだ。また、プレーヤーである女性の性格が「小悪魔タイプ」や「甘えん坊の妹タイプ」など定型だったり、画面上にプレーヤー自身がキャラクターとなって登場したりすることにも、原氏たちは違和感を感じていた。「これではプレーヤーが感情移入するのは難しい」(原氏)。

 だからこそ、囚われのパルマはそれらすべてで逆を行く。登場する男性はハルト(またはアオイ)ただ1人。ゲーム序盤は親密度も低い。「ハルトに至っては“塩対応”と言っていい」(原氏)。画面はプレーヤーの視界になっており、プレーヤー自身を示すキャラクターは出てこない。

面会でもメッセージでも選択肢は2~3つ用意してあるが、回答のトーンに大きな差はない。選択肢はユングのタイプ論などを参考に決めたという
面会でもメッセージでも選択肢は2~3つ用意してあるが、回答のトーンに大きな差はない。選択肢はユングのタイプ論などを参考に決めたという
[画像のクリックで拡大表示]

 「会話やメッセージを交わす際、ユーザーが選ぶ回答もフラットなものにした」と原氏。ゲームによっては、相手に与える印象が明らかに異なりそうな回答の選択肢が並ぶが、囚われのパルマはその差が小さい印象だ。原氏によると「選ぶ回答に正解がないことも特徴」という。男性向け、女性向けを問わず、一般的な恋愛ゲームでは、対象となる異性を振り向かせたり告白させたりするのが目的のため、選択肢には相手の好感度を上げる“正解”がある。だが、「囚われのパルマでは、どの答えを選んでもハルトやアオイが受け止めてくれる設定」(原氏)。最終的な結末は3パターンあるが、ゲーム中に選ぶ回答によって嫌われたり関係が壊れたりすることはないそうだ。

ハルトやアオイはAIに近い

 また、平林氏は、囚われのパルマに登場するハルトやアオイのことを「AIに近い」と話す。この種のゲームでは、プレー中にユーザーが選ぶ選択肢がゲームの結末を左右するが、囚われのパルマの場合、結末に直結しない会話やメッセージもすべて蓄積。それを元に、プレーヤーの性格などを分析し、ハルトやアオイの反応を変化させていくという。

 例えば、ハルトやアオイと交わすメッセージには「つぶやき」といわれるものがある。「疲れた」「何してる?」「会いたい」など、いつでも何度でも送れる“話題”だ。これらはストーリーとはまったく関係ないが、ハルトやアオイの反応には影響を与える。「プレーヤーが何度も『疲れた』と送っていれば、プレーヤーを気遣うメッセージが送られてくる。同じゲームをしていても、あなたと私のスマホにいるハルトは別人ということになります」(原氏)。

 ストーリーの始まりは全員同じ。結末は3パターン。だが、その過程では無数の分岐点があり、ユーザーが選んだ選択肢の組み合わせによって無数の性格の「ハルト」や「アオイ」が生まれるというわけだ。

「つぶやき」で「疲れた」と送ってみた。最初のうちはそっけないが、何度か送るうち、励まされた
「つぶやき」で「疲れた」と送ってみた。最初のうちはそっけないが、何度か送るうち、励まされた
[画像のクリックで拡大表示]