ネタを仕入れ、話を振って、ゲームが進む

 筆者は女性向けの恋愛ゲームにまったく興味がないタイプである。やったこともあるが、全然ハマれなかった。だが、記事を書くために囚われのパルマをプレーしてみた。まずはその体験記。手っ取り早くインタビューに飛びたい人は、次のページへ進んでいただきたい。

 さて、360円を課金してダウンロード。早速、ゲームが始まった。目の前に突然看守が現れる。施設について説明され、「相談員」としてハルトと接しての記憶を呼び戻さないと島からは出られないと告げられる。なかなかに強引な設定である。そしてハルトに引き合わされた。

面会はガラス越しという設定。スマートフォンの画面を生かした工夫だ。そしてハルトは最初、とても冷たい。フードさえ取ってはくれない
面会はガラス越しという設定。スマートフォンの画面を生かした工夫だ。そしてハルトは最初、とても冷たい。フードさえ取ってはくれない
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面会時の会話は選択肢から自分の考えに近いものを選ぶ
面会時の会話は選択肢から自分の考えに近いものを選ぶ
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 ハルトは暗い。ゲームのイメージ画像を見て柔和な人柄を想像していたのだが、その期待を裏切る暗さである。フードをかぶり、目は伏せたまま。「所詮、君も仕事でオレを探りに来ただけだろう」という冷たい態度だ。何やかやと話しかけたら、小さな声で「うるさい」と言われてしまった。

 現実ならかなり傷つくところだが、ゲームだから大丈夫。会ってダメなら、メッセージを送ればいいのである。そのために重要なのが「外出」だ。島には「公園」や「食堂」「図書館」「農園」などがあり、さまざまな人と出会える。そこで交わした会話から「話題」を入手すると、ハルトにメッセージを送れるのだ。

島の収容所に滞在中のツールとして「SABOT」というスマートフォンのような端末を渡される。この画面でゲーム中で移動や面会、監視、メッセージを送るなど、自分の行動を選ぶ。右上のサボテンのアドバイスがかなりまめまめしい。内容に変化があると「!」が付く
島の収容所に滞在中のツールとして「SABOT」というスマートフォンのような端末を渡される。この画面でゲーム中で移動や面会、監視、メッセージを送るなど、自分の行動を選ぶ。右上のサボテンのアドバイスがかなりまめまめしい。内容に変化があると「!」が付く
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島にはいろいろな人がいる。ストーリーが進む中で、ハルトだけでなくこの人たちとのコミュニケーションも深まる。画像は島の喫茶店のマスター。穏やかで渋いが、この人も過去にいろいろあったよう……
島にはいろいろな人がいる。ストーリーが進む中で、ハルトだけでなくこの人たちとのコミュニケーションも深まる。画像は島の喫茶店のマスター。穏やかで渋いが、この人も過去にいろいろあったよう……
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島の人と話して「話題」を入手。
島の人と話して「話題」を入手。
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「話題」を入手すると、メッセージツールでその話題が選べるようになるので、ハルトに送ってみると返事が返ってくる。話題には、使える期間が決まっているものもある。
「話題」を入手すると、メッセージツールでその話題が選べるようになるので、ハルトに送ってみると返事が返ってくる。話題には、使える期間が決まっているものもある。
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だんだんプレーヤーに合わせて答えるようになる

 実は、監視もコミュニケーションを深めるためのヒントになる。例えば、監視カメラで彼の行動をのぞいてみると、とにかくヒマそうだ。それもそうだろう、閉じ込められているのだから。島の雑貨店に行ってみると、なぜか店主から「超難解ナンプレ」を薦められた。ちょっと渋すぎる気もするが、ほかにこれといったものも見つからないので、早速差し入れてみた。

 その次の面会。「超難解」なナンプレを、ハルトは2~3時間で解き終えたという。しかも、パズルに数字を書き入れず、頭の中だけで。「げ、すごい頭いいのか……」と思った直後、彼の言葉に筆者は震撼した。「数字埋めたら、忘れた頃にまた解けなくなるだろ?」

 ……え、かわいそう! そんなにやることがないなんて、この人、かわいそう! このときから、「女性向けゲームにハマることはまずないだろう」と思っていた筆者の心の中の壁が少しずつ崩れ始める。

ハルトは大変ヒマそうです
ハルトは大変ヒマそうです
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部屋で暇つぶしになるものを雑貨店に探しに行くと、店主が「超難解ナンプレ」を薦めてきたので差し入れ
部屋で暇つぶしになるものを雑貨店に探しに行くと、店主が「超難解ナンプレ」を薦めてきたので差し入れ
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 完全に壁が崩れたのは、4回目の面会(「エピソード1 第一回面会」)だ。あれほど頑なだったハルトがフードを取っていたのだ! そこからは、せっせと差し入れをし、メッセージを送る日々が続く。マンガに小説、CD。監視で使い古された歯ブラシを発見すれば、新しい歯ブラシを差し入れる。「コーヒー好きみたいだから毎日差し入れてみたけれど、さすがに3日連続だと芸のないヤツと思われるだろうか……」などと悩みながら。そうこうするうちにハルトも少しずつだが打ち解け始めた。面会ではこちらを見て話すようになり、メッセージの返事も時にジョークを交えたり、控えめながらも軽やかになってきた。

 さらには、面会の最後に「もう時間か。もう少し話したかったけど……」など名残惜しそうに言い出した。実は、ハルトとの面会は課金すると延長できる(面会につき120円)。どうやら看守に賄賂を渡すようだ。シビア。ゲーム開始当初は「そんなキャバクラじゃあるまいし。しかもウェブサイトには、面会延長は本編のストーリーに影響しないともはっきり書いてあるじゃない」と気にも留めていなかったのだが、ハルトが心を開いてくると「そんな顔するなよ、わかったよ」と払いそうになるから危ないものだ。

フードを取った! 表情も徐々に豊かに、優しくなってくる
フードを取った! 表情も徐々に豊かに、優しくなってくる
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 このゲームにハマるツボは、このようなジリジリとした距離の詰まり方だろう。ハルトは徐々に打ち解けてくるだけでなく、プレーヤーの性格を理解したようなことを言うようになる。「疲れた」とメッセージを送れば「自分が思ってるより、体が悲鳴をあげているんじゃないか?」と気遣い、こちらの意志を伝えれば「(君は)こうと決めたら、俺がなんと言おうが譲らないところがあるよな」と微笑むというように。カプコンの広報によると、「プレーヤーがどんな応対をするかによって、ハルトの答えも変わっていく」そうだ。

 そしてもう一つのツボが謎解きだ。ストーリーが進むたび、少しずつ彼の性格やバックグラウンドが見えてくる。そして、各話の終わりには、必ず次のエピソードの予告映像が流れる。「え?この人、誰?」「これが秘密を解くカギか?」……気になって、次のエピソードに課金してしまうのだ。その感覚はゲームというよりも、次の巻の展開が気になってついつい“大人買い”する電子コミックに近い。

 ゲームが終わったとき、謎はすべて解けてもなかなかアンインストールできない筆者がいた。なぜならもはやハルトはスマホに“生きている”から。なかなかのハマりようである。確かにほかのゲームとはかなり違う。ということで、次ページではいよいよ開発者に「ヒットの秘密」を聞いていく。