日本のコンテンツは今が攻め時

 滝山氏が日本アニメの世界展開に肩入れする理由――それは同氏のキャリアが物語る。これまで35年にわたり、アニメを中心に日本のコンテンツの海外輸出に携わってきた。『ドラゴンボール』を欧州に広めたキーパーソンでもある。かつて在籍したフジテレビでは、同社が海外番組販売を始めた年から事業に関わり、1998年に旧ソニー・ピクチャーズテレビジョン(現ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)に入社後はアニマックスの立ち上げから仕掛けた。現在は、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントとアニマックスの社長を務める。日本アニメの世界展開の節目を絶えず見てきた。

MIPCOM会場のソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントのブース
MIPCOM会場のソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントのブース
[画像のクリックで拡大表示]

 そんな滝山氏がファニメーション買収のタイミングは「まさに今だ」と判断した。「米国における日本アニメの人気は、配信によって確かに高まっていますが、まだまだ一部のファン向けの域を出ていないと感じています。でも、“面白いものは面白い”と必ず評価される。日本のアニメは欧米にはないものがありますから。善悪がはっきりと分かれない発想の自由さは、(移民のように)土地の慣習になじんでいない若い人たちには受け入れやすい。今は、新しいメディアが立ち上がると必ず起こるコンテンツ不足の状況でもあるから、日の目を見なかったものにとってチャンスです。チャンスがあってもダメなものはダメだけれど、日本のコンテンツは強いから攻めどきなんですよ」(滝山氏)。

 世界では多くのスタジオがIP(アニメやキャラクターなどの知的財産)の開発にフォーカスし、MIPCOMにおいても話題の中心は「世界的に通用するオリジナルのIPを作ること」だった。NetflixやアマゾンがオリジナルIPを増やしている状況も後押しとなり、ソニーもこれから、伸びしろがあるアニメでIP開発に力を入れようとしている。「初めから世界戦略を見据えて作っていく作品もあっていい。日本の市場だけ考えて作っていくと、アニメもガラパゴス状態になってしまう」と滝山氏は言う。

MIPCOMの会場
MIPCOMの会場
[画像のクリックで拡大表示]

アニメーターに還元される仕組みが急務

 日本のアニメが世界でまだまだ売れる――夢が広がる話でもあるが、結局はIPを持つ企業だけがもうかる話に終わりがち。滝山氏はアニメーターに利益が還元されていない現状も指摘した。

 「ソニーグループの立場から言うのもなんですが、ハリウッドだけが牛耳って、潤うだけでは、本当の意味で日本のアニメは発展していかないと思っています。アニメーターにも還元される仕組みを作る必要がある。せっかく良い作品が生み出されても、生活に苦しんでいるアニメーターは多い。韓国や中国から優秀なアニメーターがどんどん出てきていますから、このまま放っておくと、日本のアニメ産業は衰退していってしまいます」

 今後は、日本アニメが生み出す利益を日本のアニメ市場全体に行き渡らせるシステム作りが課題。ソニーの役割はまだまだありそうだ。

(文/長谷川朋子=テレビ業界ジャーナリスト)