Boston Dynamics社のロボットは見られず

 そしてBoston Dynamics社のFounder兼CEO・Marc Raibert氏が登壇。この日の基調講演で来場者が一番期待していたものは間違いなく彼のスピーチだ。国防高等研究計画局(DARPA)による支援を受け、2005年にNASAやハーバード大学と共同開発した四足歩行ロボット「BigDog」で一躍有名になった同社は、2017年6月にソフトバンクグループによる買収が発表され、グループの傘下に加わる予定だ。

Boston DynamicsのFounder兼CEO・Marc Raibert氏。同社の開発理念や目標を語ったあとは、協業が決まっている3社の代表が舞台に登場
Boston DynamicsのFounder兼CEO・Marc Raibert氏。同社の開発理念や目標を語ったあとは、協業が決まっている3社の代表が舞台に登場
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 Boston Dynamics社は、今月に入って「Bigdog」を大きく進化させた新たな四足歩行ロボット「Spot Mini」と、台の上に飛び乗ったり、バク宙まで決める二足歩行ロボット「Atlas」の動画を立て続けに発表。来場者の興味は当然のように「Spot Mini」と「Atlas」が稼働しているところを実際に見られるかもしれない、という期待に満ちていた。

 しかし結論から言えば、基調講演のステージにはBoston Dynamics社のロボットは登場しなかった。加えて、展示開場でも静止状態の「Atlas」と「Spot Mini」が展示されているのみ。稼働状態のものを見ることは叶わなかった。

展示会場に置かれていたBoston Dynamics社の二足歩行ロボット「Atlas」。残念ながら動いているところを観ることは叶わず
展示会場に置かれていたBoston Dynamics社の二足歩行ロボット「Atlas」。残念ながら動いているところを観ることは叶わず
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11月に動画が発表された最新型とは違うが、Boston Dynamics社の四足歩行ロボット「Spot Mini」。「生き物を思わせる気持ち悪い動き」で一躍世界に名を轟かせた「BigDog」の後継
11月に動画が発表された最新型とは違うが、Boston Dynamics社の四足歩行ロボット「Spot Mini」。「生き物を思わせる気持ち悪い動き」で一躍世界に名を轟かせた「BigDog」の後継
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 さて、Marc Raibert氏のスピーチは、Boston Dynamics社の概要説明からスタート。「人間の機能を持つロボット」を作ることを究極の目標とし、そこに至る道筋として、「将来的な展望」と「直近の目標」という2つの軸を持つことが大事と考えているという。

 「将来的な展望」とは、中長期的な計画で、ロボティクスにおける困難な問題を解決し、新機能へとつなげるための基礎的な研究。「直近の目標」とは、現在の技術を使って、今の世界に適用できる製品を開発することを指すという。

 例えば「Atlas」や「Spot Mini」でもカバーできる「直近の目標」としては、荷物の配送や警備、人々を楽しませるエンターテインメントでの利用が想定されている。さらに災害現場での作業、あるいは倉庫内での物流管理といったことがまもなく実現するそうだ。一方、「将来的な展望」は、建築現場での作業や、高齢者や障害者の介護に従事できる能力を獲得することだという。

Boston Dynamics社との協業する3社も登壇

 こうしたBoston Dynamics社の取り組みに対し、製品や技術の導入を早くも表明している企業が、セントラル警備保障、フジタ、竹中工務店の3社だ。

 セントラル警備保障の代表取締役執行役員社長・鎌田伸一郎氏は檀上で、「(同社は)Pepperもいち早く導入を決めるなど、ロボットへの関心は非常に高い」と話す。日本にある警備会社は、現在約9000社、54万人の警備員が働いており、2020年の東京五輪を控え、業界的には右肩上がりの状態だが、54万人全体の平均年齢が60歳を超えているのが現状だ。「Spot Mini」や「Atlas」のような高い機動性があれば、建物や施設内での巡回もこなすことができ、人手不足の解消に期待が持てる。

 セントラル警備保障が想定しているロボットの用途には、前述のステップ3「細かい作業をこなす手」をほとんど必要としない。しかも、既存のロボット技術、例えばPepperにBoston Dynamics社がすでに実現している高い機動力が加わるだけでも、警備の用途は実現できるのではないか。

 ただ歩き、動いているだけで人の目を釘付けにするBoston Dynamics社の技術が、Pepperのような実用製品として市場に投入される日は、おそらくそう遠くないはず。バッテリーの問題などはあるそうだが、人とロボットが協調して仕事をこなす――そんな時代の到来を予感させる基調講演だった。

(写真・文/稲垣宗彦)