ジャニーズ事務所退所以来、テレビでの活動が少なくなっていた元SMAPの3人が、72時間にもわたるライブ配信した「稲垣・草彅・香取3人でインターネットはじめます『72時間ホンネテレビ』」。配信元となったサイバーエージェントのインターネットテレビ局「AbemaTV」も注目された。AbemaTVとはどんなメディアなのか。以前から見ているITライターの青木恵美がAbemaTVの魅力を語る。

 11月2~5日、インターネットテレビ局「AbemaTV」で、ジャニーズ事務所を退所した元SMAPの稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾が72時間のライブ配信「稲垣・草彅・香取3人でインターネットはじめます『72時間ホンネテレビ』」を行った。AbemaTVでの映像配信に並行して、3人がSNSを学びつつ、随時情報発信を行い、キーワードのトレンド入りを目指す、というメディアミックスな企画で、配信前後には各所でニュースにもなったので、記憶している人も多いだろう。3人の情報を発信するウェブサイト「新しい地図」で公開された情報によると、総視聴数はAbemaTV過去最高の7400万超、Twitterトレンド入り総数は 総計107個(うち世界トレンド6個)、番組関連のワードツイート総数は508万超に達したという。

草彅剛、稲垣吾郎、香取慎吾の3人がライブで配信するということで、『72時間ホンネテレビ』は話題になった
草彅剛、稲垣吾郎、香取慎吾の3人がライブで配信するということで、『72時間ホンネテレビ』は話題になった
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 今回の件で、AbemaTVを初めて見た人、初めて知った人も多かったはずだ。AbemaTVとはどのようなメディアなのか。

地上波などよりゆるく見られるのが魅力

 AbemaTVは、スマートフォンやタブレット端末のアプリや、パソコンのウェブブラウザーで視聴する無料の映像配信サービスだ。YouTubeやNetflixなどのようにオンデマンドではなく、テレビ放送のように時間単位で映像を配信するサービスだ。なお、AbemaTVには、見逃した番組やタイムシフト放送を見られるオンデマンドサービス「Abemaビデオ」も併設されている。

 筆者の家では、いまや地上波やBS、CSなどのテレビ放送よりも「AbemaTV」を観ている時間のほうが長い。見始めた当初は、筆者と夫、それぞれがパソコンやスマートフォン、タブレット端末を使い、それぞれの見たい番組を見ていたが、今は、テレビにアマゾンの「FireTV」を接続して見るようになった。パソコンやスマホの画面は小さくて見ていると疲れるし、テレビのほうが食事や家族の団らん中にも見やすいからだ。そういえば、72時間ホンネテレビの際にも、「AbemaTVをテレビで見よう」というFireTVのCMが流れていた。

 最近では、格安SIMの「LinksMate」がAbemaTVの視聴時間が毎月の通信容量にカウントされない「カウントフリーオプション」も設けている。筆者はLinksMateを利用しているので、外出先でも気軽にAbemaTVが楽しめる。

筆者が居間のテレビに接続している「Fire TV(第一世代)」。AbemaTVやプライム・ビデオ、DAZNなどをテレビで楽しんでいる。ハイビジョン時代の今どき、Wi-Fi接続よりも有線LAN接続が、音も映像も安定する
筆者が居間のテレビに接続している「Fire TV(第一世代)」。AbemaTVやプライム・ビデオ、DAZNなどをテレビで楽しんでいる。ハイビジョン時代の今どき、Wi-Fi接続よりも有線LAN接続が、音も映像も安定する
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 地上波などのテレビ放送よりもAbemaTVを見るようになったのは、適度にゆるく、疲れないというのがある。テレビ放送は、コマーシャル(CM)も番組も、おしなべて音や映像のアピールが激しい。特に気になるのは、時折入る「デデン」とか「ピンポーン」といった効果音と、CMを見てもらうために、番組の内容をCM前後にまたがせる「CMまたぎ」。こうした要素がAbemaTVには少ない。

 また、AbemaTVはテレビ放送に比べて、チャンネルの自由度や多様性があるのも面白い。AbemaTVでは、テレビ放送と違い、配信側の自由でいくつでもチャンネルが増やせる。現在20余りのチャンネルがあり、アニメやドラマ、スポーツや将棋・麻雀などが放送されている。スポーツの生中継などで突然チャンネルが増えたりもする。筆者は、DJたちが毎晩、生でプレイを行う「AbemaMix」を流したり、テレビでは難しそうなきわどい話題に言及するトーク番組やちょっとオトナなオリジナル番組、週末などに行うアニメやドラマの「一挙放送」を楽しみに見たりしている。ニュースチャンネルでは、24時間ニュースが放送されているのも、好きな時間にニュースをチェックできて便利だ。

AmebaTVアプリのトップ画面。起動するとAbema Newsチャンネルが開く。フキダシをタップすると、コメントが表示される
AmebaTVアプリのトップ画面。起動するとAbema Newsチャンネルが開く。フキダシをタップすると、コメントが表示される
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 番組にコメントを付ける機能があるのも特徴的だ。生中継の番組では、出演者がコメントにリアルタイムで返事をくれたり、リクエストに応じてくれたりと双方向に交流があったりもする。従来のテレビ放送を見慣れているととても新鮮で、自由に感じる。

 だからこそ、今回の「72時間ホンネテレビ」も配信が決定して以来、楽しみにしていた。

AbemaTVならではの取り組みが多数

 72時間ホンネテレビでも、地上波に比べて自由度が高いAbemaTVだからこその取り組みは多数あった。加えて、元SMAPの3人の人脈や知名度も生かしたコンテンツになっていたと思う。

 番組開始直後から、矢沢永吉のビデオメッセージが流れたり、きゃりーぱみゅぱみゅや山田孝之、市川海老蔵、堺正章、亀田興毅など、著名なゲストが続々登場した。森脇健児、キャイ~ン、山本耕史、三谷幸喜、佐藤浩市など、ゆかりの深い人々も多く出演していた。一方で、SMAPを脱退して以来、テレビ放送でのメンバーとの共演がなかったオートレーサーの森且行に3人が会いに行き、これまでのことを語らうシーンを数時間、ノーカットで流すといった企画など、AbemaTVだからこそ実現できたものとも言えそうだ。

72時間ホンネテレビで、3人が21年ぶりに森くんと再会した場面(写真はAbemaビデオから)。このとき「森くん」というワードがなんと、トレンド世界1位になっていた…
72時間ホンネテレビで、3人が21年ぶりに森くんと再会した場面(写真はAbemaビデオから)。このとき「森くん」というワードがなんと、トレンド世界1位になっていた…
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 72時間に及んだライブ配信だが、実はこの間、筆者が一番心配していたのがサーバーのダウンだった。実際に今年の初夏に放送された「AbemaTV1周年記念企画『亀田興毅に勝ったら1000万』」では、放送直前にアクセスが集中し、サーバーがダウンした。今回は、国民的アイドルという知名度や話題性、ファン層の広さ、長時間にわたる放送、などの要素から、1周年のときよりもはるかに多いアクセスが集中する可能性を想定し、何度かはサーバーが落ちるかなと思っていた。なので、今回、サーバーが一度も落ちなかったのには驚いた。これには、サイバーエージェントの藤田晋社長も自身のTwitterアカウントで、「国内の過去最高同時視聴数を記録したにも関わらず、3日間1度もサーバーを落とさなかったうちのエンジニアも褒めてください。よく頑張った!」とツイートしているくらいだ。

 72時間ホンネテレビを見たことをきっかけに、今後、AbemaTVを見る人も増えるだろう。当初こそ、実験的な番組が多かったAbemaTVのオリジナル番組だが、最近はだんだんクオリティーも上がってきているし、インターネットテレビという特性を生かそうという姿勢も大いに感じられて、見ていて楽しい。筆者としては、72時間ホンネテレビ以外にも面白いコンテンツがたくさんあるので、視聴をお勧めしたい。

 一方で、いつも気になるのが、AbemaTVが採算がとれているのかだ。サイバーエージェントの2017年通期決算を見ると、AbemaTVを含むメディア事業は、売上高が256億円で前年比17%増だが、営業損益は185億円減、そのうちAbemaTVなどは209億円減と大きな赤字になっているのだ。既にテレビ放送よりもAbemaTVを見ている時間が長くなった筆者としてはやや心配だ。ただ、現在はAbemaTVへの投資期と位置づけており、2018年度も引き続きAbemaTVへの投資を強化するとしている。AbemaTVならではの番組を作って新たなメディアとして定着してくれることを期待している。

(文/青木恵美)