ヒット楽曲予測ができるAI“DJ”も登場か

 では、ラジオが番組の中でAIを育てることで、何が期待できるのか。

 J-WAVEは10月20日の放送回からTommyに「ざっくりリクエスト」を任せ、「秋の夜長にしっとりした曲をかけて」などとリクエストすると、自動で選曲できる体制を築いている。これまで放送した膨大な楽曲に「放送日」「ボーカルの性別」「テンポ」「コード」などのフラグを立てて、スタッフがTommyにせっせと入力。“J-WAVEクオリティー”を保った選曲ができるように育てているところだ。今のところ、AIによる選曲は想像の範囲内だが、ゆくゆくはTommyがヒット予測をする計画もある。

 「これから売れそうなアーティスト予測」はこれまで人間の経験則や勘に頼っていたところが大きかったが、ストリーミング再生回数やソーシャルメディア上のブーム曲線などを可視化することで、データからトレンド予測することも求められている。それをTommyにやってもらおうという構想もある。「もし予測が外れても、それはそれでラジオっぽい。ラジオは“隅っこ感”があるので、許される空気があります。だから、何でもトライしていこうと思います」と小向氏は話す。

 TommyはJ-WAVEらしく、英語は堪能だが、日本語はカタコトな女子というキャラクターが設定されている。ビジュアルは作成中だ。TBSラジオは、フラッシュアニメ「秘密結社 鷹の爪」の生みの親でもあるFROGMAN氏がかかわっていることもあり、一歩先んじた形だ。既にドッチくんのビジュアルも発表されている。

FROGMAN氏とドッチくん
FROGMAN氏とドッチくん
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 FROGMAN氏はドッチくんのキャラクター設定に対するこだわりも強い。「キャラクターについては持論があって、人間関係に置き換えて考えます。例えば、ドラえもんはみんなの“親友”、萌え系アニメは“恋人”でしょう。だから、萌え系アニメのファンは、お金を投じてどんな遠いところでも駆けつけてしまうんです。鷹の爪のキャラクターは、クラスにいる面白いヤツ。(恋人のように)大枚をはたいて、熱烈に抱きしめる存在ではない……こんなふうに考えていくと、ドッチくんは近所にいる出来が悪い面白い子供のようなイメージ。受け答えが拙くてもかわいげがあるし、むしろツッコミ待ちができるようなキャラクターに育てたいんです」(FROGMAN氏)。

 島根県に長く住んだ経験があり、島根県ネタを持ち味にしてきたことから、ユニークな視点でAIのアイデアも語る。「僕以上に島根に詳しくなっていくのも面白いかも。『それは島根3つ分ですね』と何でも島根基準の殺し文句があってもいいかもしれませんね。八百万神の発想で、無生物に生命を与えて独り歩きさせられるのは日本のお家芸。キャラクターにこだわることで、世界に先駆けて、日本が生活密着型のAIの使い方を発見できるかもしれません」(FROGMAN氏)。

 最新のテクノロジーやイノベーションに精通したゲストも登場する両番組。通常のラジオ番組として聞くのも面白いが、AIの使い方の可能性を感じながら聞くこともお勧めしたい。

(文/長谷川朋子=テレビ業界ジャーナリスト)