「写ルンです」もインスタ効果で売上増

 では、もう1つのフィルムカメラである写ルンですについてはどうか。実はこちらもInstagram効果で売り上げが伸びている。6月23日に3万個限定で発売した「写ルンです プレミアムキット」はすでに全数の出荷が完了するなど好調だ。

 写ルンですはチェキとは用途が少々異なる。先述した通りチェキはフォト・イン・フォトなど、スマホで撮影する際の工夫に使われることが多い。対して、写ルンですの場合は「写真をデータにしてスマホに取り込んでから、Instagramに投稿する人が多い」(高井氏)。

6月23日に発売した「写ルンです プレミアムキット」も全数の出荷が完了
6月23日に発売した「写ルンです プレミアムキット」も全数の出荷が完了
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 「写ルンですで撮影した写真は、写ルンですでしか出せない色合いになる。それが個性になるので、アプリなどで加工せずにそのまま投稿している」

 都内で働く会社員の谷畑朋美氏は写ルンですの魅力をこう説明する。谷畑氏も半年ほど前から写ルンですを愛用しており、やはり撮影した写真をInstagramに投稿しているという。色合いだけではなく「旅行先や飲み会で撮影したときに、より自然な表情を撮れるのもポイント」だと谷畑氏は続ける。というのも、「スマホを構えたときの方が、写真を撮られるという意識が強くなっている」(谷畑氏)からだ。むしろ、写ルンですで撮影した方がカメラを意識されずに自然な表情を撮れるという。その味を生かすために加工はしない。

 こうした利用ニーズに合わせて富士フイルムが7月から始めたのが、写真のダウンロードサービスだ。写ルンですを現像に出すと、撮影した写真を直接スマホでダウンロードできる。「SNSで写ルンですを楽しんでもらいやすい環境を提供したかった」と高井氏はサービス提供の狙いを説明する。キタムラやプラザクリエイトといった大手プリント事業者が同様のサービスを相次いで始めていることも、市場の盛り上がりを示している。

 富士フイルムの取り組みは、Instagramにより良い写真を投稿したいという消費行動を指す「インスタ映え」をうまくマーケティングに取り込んだ格好だ。インスタ映えという言葉は、承認欲求の表れなどと揶揄されることも少なくない。しかし、そうひとくくりにして自分自身には無用と判断するのは早計だ。そこには新しいマーケティングのヒントが眠っている。それに気付かなければ、むざむざ大きなチャンスを逃しかねない。

(文/中村勇介=日経トレンディネット)