チェキを使った新しい撮影手法が続々

 このような現象が起こる理由を高井氏はこう分析する。「チェキや写ルンですで撮影した写真は、デジタル特有のビビッドな色合いではなく独特の味わいになる。それが撮影者にとって写真の個性になったり、面白さの追求につながる」。Instagramの利用者が拡大する中で「人と違った写真を投稿したい」という欲求が生まれた。この欲求に対して、チェキや写ルンですで撮影した写真の特徴が合致したようだ。

 実際、Instagram上ではユーザー主導でフィルムカメラを使った新しい撮影手法が日々生まれている。「フォト・イン・フォト」と呼ばれる手法もその1つ。その名の通り写真の中に、写真を写す手法を指す。例えば、海岸線の写真を撮影する際、画角に入る灯台を事前にチェキで撮影する。次に印刷したチェキを手で持ち、背景と一体化させて撮影することで、対象物の存在を際立たせる。そんな手法だ。アナログであるフイルム写真とデジタルメディアを組み合わせることで、新しい価値が生まれている。こうした現象がフィルムカメラの販売台数の増加につながっているわけだ。

Instagramではチェキを使った撮影手法「フォト・イン・フォト」が人気に。自社で運営するチェキの情報サイト「Cheki Press」でも紹介している
Instagramではチェキを使った撮影手法「フォト・イン・フォト」が人気に。自社で運営するチェキの情報サイト「Cheki Press」でも紹介している
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 ユーザー主導でInstagramを軸としてフィルムカメラが若者のライフスタイルに根付く中で、富士フイルムもこれを商機と捉えた。「Instagramがこれだけ普及すると、市場にも大きな影響を与える。そうしたサービスを積極的に使う世代が楽しめるように流れにしっかりと乗っていくことが重要と判断した」(高井氏)。その具体的な策の1つが正方形フィルムの採用だ。より個性豊かな写真を投稿したい。そんな消費者心理に、Instagramに最適化された正方形のフィルムが受け入れられると踏んだ。

 「これまでのチェキは財布に入れられる手軽さがあるので、リプリントしてカップルで所有するなどコミュニケーションツールとしての価値が高い。一方、正方形のフォーマットは90年代から写真愛好家に支持されてきた。より芸術性を求め、見られるために工夫をしている層を意識して開発した」(高井氏)。こうしてSQ10とSP-3が誕生した。

アパレルチェーンでもチェキを販売

 富士フイルムは新製品の開発に加えて、新たな販路の開拓にも乗り出している。Instagramの流行によって、チェキは「簡単に撮れるカメラ」から「おしゃれなカメラ」へと位置付けが変わっているからだ。例えば、国内では『ロフト』などでの販売を始めている。そうした店舗ではマスキングテープや文具と一緒に陳列しているという。複数のチェキを撮って、ペンやテープでデコレーションをした後に、スマホで撮影してInstagramに投稿する。そんな、若年層の利用シーンに即した展開をすることで販売の拡大を狙う。

 また、「米国ではチェキがクールな製品と捉えられている。そこで、アパレルチェーンの『アーバン・アウト・フィッターズ』で大々的に展開するなど、ファッションやライフスタイルと密接な業態の店舗へと販路を広げている」と高井氏は言う。