ロボットは人類が初めて開発した「目的のない道具」

津田: 2014年にPepperを発表し、孫正義社長が「これからはロボットだ」とおっしゃった時点では、正直、みんな困惑気味だったと思います。しかし、その後、ロボットやAIに関するブームが来て、孫社長の先見性には驚かされました。

 一方で、ソフトバンクとしては、Pepperの発売以降もIoTへの進出、半導体開発企業である「ARM」の買収と、事業を広げ続けていますね。孫社長のロボット開発に向かう姿勢に変化はありませんか?

津田大介氏
津田大介氏
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蓮実: 取材用のコメントではなく本心から言いますが、ロボット開発に向ける孫の熱意は全く衰えていません。ただ、当初はロボットという未知のものに対するロマンだけがあればよかったんですが、Pepperを出し、その難しさをリアルに感じるようになったがゆえの変化はありますね。

津田: 問題点や改善点、現在の限界も見えてきたわけですね。

蓮実: そうなんです。6月に発表したボストン・ダイナミクスの買収もそうした限界点を超えるためのものですし、ロボティクス関係ではそれ以外の、まだ表に出ていない活動にも取り組んでいます。

 ただ、ロボットは言うなれば人類が初めて開発した「目的のない道具」だと思います。Pepperについても、あらゆるテクノロジーを組み合わせて生み出されていますが、何か目的が設定されているわけではありません。

津田: 最近話題の「Amazon Echo」や「Google Home」もそのものに目的はないですし、見方を変えればロボットみたいなものですよね。

蓮実一隆氏
蓮実一隆氏
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蓮実: おっしゃる通り、手がついていないだけでロボットですよね。要するに音声のコマンドを解釈してくれるというだけの存在で、目的らしい目的はないですから。

 機械と接するのに音声が楽だと感じる人ならスマートスピーカーは最適でしょうし、僕みたいに機械に話しかけているところを聞かれたら恥ずかしいと感じる人にはキーボードやタッチパネルで命令できるスマートフォンのようなデバイスが向いています。同じように、生き物と触れ合うような感覚が味わいたい人なら、ロボットを使えばいい。ロボットはAIだったりクラウドだったり、そうしたもののインプット、アウトプットの手段のひとつであって、特定の目的を持っているわけではないんです。

 だからこそ、僕らはロボットに手や足、顔がついている意味を重要に思っています。ロボットだからこその体験をいかに生み出せるか、そのためには何が必要かを重点的に研究するようになりました。