意外だったのは「思いのほかかわいがられたこと」

津田:  ところで、Pepperを二足歩行のロボットにしなかったのはなぜですか?

蓮実:  二足歩行にすると、その制御だけでソフトウエアもハードウエアも大がかりになりますし、この大きさだと稼働時間がおそらく15分程度しかもちません。

 Pepperではバッテリーが足の部分に入っているんですよ。先ほどもお話ししたようにPepperはソフトバンクショップの店員にするつもりでしたから、連続で9~12時間は動いてくれないと困ります。つまり大容量のバッテリーが不可欠でした。無線で給電できるような技術が開発されれば状況も変わるでしょうが、Pepperを作ったのは4年も前ですからね。

開発者が語る「想定外はみんながPepperと握手すること」(画像)
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津田:  実際にソフトバンクショップにPepperが導入されたことで、ソフトバンクショップ、あるいはロボットを開発するうえで何か変化は生まれましたか?

蓮実:  今まではロボットってSFの中だけに存在するものでしたから、人が実際にこの大きさのロボットに対面したときにどんな反応をするのか、誰にも分かっていなかったんですね。その実データが得られただけでも大きな収穫。これだけで軽く5時間はしゃべれるほどです(笑)。

津田:  ユーザーの使い方として想定していなかったものはありますか?

蓮実:  もともと、アプリを開発することでさまざまな用途に対応できるように設計してありますから、ソフトバンクショップの店員のほかは、あまり具体的な使い方を想定していませんでした。変わった使われ方ということなら、Pepperを相方に漫才をしている人や、「世界初のロボット手品」とうたってステージに立っている人がいます。エンターテインメント系が目立ちますね。あとは、人手不足解消のために、自動車部品などの製造工場にPepperを導入してくださった企業もあります。

 Pepperを発売して一番意外だったのは「思ったよりかわいがられている」ってことですね。個人的に、不気味と感じる人がもっと多いと思っていました。

 Pepperは休止してうなだれているときも、よく見るとときおり指を動かします。そんな細かな仕掛けに驚くほどコストをかけています。でも、その無駄にも思えるような部分こそが、人間らしさ、生物らしさを演出する、ヒューマノイドとしての命。一方で気持ち悪さにつながる部分もあるからです。

津田:  確かに生きているような感じはしますよね。

蓮実:  その「生きているような感じ」こそが僕らには大事な部分です。機械とかデバイスではなく、ロボットを新種の生命としてとらえ、人間との付き合い方を考える。そこを僕らは大事にしているんです。

Pepperは休止してうなだれているときも、指を少しだけ動かしていたりする
Pepperは休止してうなだれているときも、指を少しだけ動かしていたりする
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(後編へ続く)

(文/稲垣宗彦、写真/志田彩香)

蓮実一隆氏、津田大介氏が登壇する「AI×ロボット」セミナーを開催
2017年11月2日(木)、3日(金・祝日)にベルサール東京日本橋で開催する「TREND EXPO TOKYO 2017」。2日には「最先端の開発者が語る AI&ロボットがいる“未来”のカタチ」というセミナーを実施します。登壇するのは、本記事に登場したソフトバンクロボティクスの蓮実一隆氏と、ゲームAI分野の第一人者であるスクウェア・エニックスの三宅陽一郎氏。コーディネーターはジャーナリストの津田大介氏が務めます。

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