クリエーター育成企画を年内に開始

――日本でもコミュニティーを形成することが戦略の要となるのでしょうか。

コックフィールド氏: そう考えています。例えば、日本では以前から格闘ゲームの動画が特に人気を博しています。そこで、2016年に格闘ゲーム業界で知名度の高い梅原大吾氏をグローバルのアンバサダーに迎えました。梅原氏はこれまで、リアルタイム動画の配信はしていませんでしたが、Twitchに設置した「DaigoTheBeasTV」というチャンネルを通じて初めてリアルタイム動画の配信に取り組んでもらい、新たな視聴者の獲得に努めています。

アンバサダーの梅原大吾氏は「DaigoTheBeasTV」をTwitchに開設
アンバサダーの梅原大吾氏は「DaigoTheBeasTV」をTwitchに開設
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――日本では「OPENREC.tv」や「YouTube」などの先行企業が優れた動画クリエーターの獲得でしのぎを削っています。

コックフィールド氏: 当社ではすでに知名度のある人を獲得するよりも、著名になる可能性を持つ人を見つけて、人気配信者へと育てるケースが増えています。例えば、国内では対戦型アクションゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』の成功を一例として挙げられます。このゲームは当初、日本ではそれほど人気ではありませんでした。ですが、新たに動画の配信者を発掘してきて、人気の動画配信者へと育てました。そうした活動が実を結び、2016年を通じて日本でもTwitch上で人気のタイトルとなりました。

トゥイッチAPACディレクターのレイフォード・コックフィールドⅢ世氏
トゥイッチAPACディレクターのレイフォード・コックフィールドⅢ世氏
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 動画配信者の教育体制を強化するための施策にも、新たに取り組み始めているところです。サービスの登録後に速やかに動画を配信できるように、利用法などを動画で学べるプログラムを開発しており、2017年末までに提供を始める方針です。

――日本展開に併せたサービスのローカライズについてはどう考えていますか。

コックフィールド氏: Twitchでは各国ごとにデータを集めて、カテゴリー名の表記などを最適化しています。細かい部分ですが、チャット機能の絵文字の呼び名もその1つ。グローバルでは日本発の「絵文字」という呼び名が定着しているため、「Emotes」という表記にしています。一方、日本ではチャットで使う絵文字は「スタンプ」という呼び名が定着していることが分かりました。そこで、日本ではスタンプという表記に変更しました。

 このような各国ごとの事情に合わせるために、2018年には国別にウェブサイトのデザインを変える取り組みを実施する計画です。動画プレーヤーやチャットといった根本的な機能を変えるわけではありませんが、より利用しやすいように適切なデザインを採用していく方針です。

――各国の利用者のニーズはどのように把握しているのでしょうか。

アラゴン氏: 各国ごとに動画クリエーターのネットワークを作り、当社の社員が中心となって、常に情報交換をしています。使うツールは国ごとに異なりますが、日本ではLINEなども使います。そこで、求める機能や新たな機能の意見を直接、得られる環境を作っています。

アラゴン氏(左)とコックフィールド氏(右)は各国ごとの慣習に合わせた、ローカライズを強化すると語る
アラゴン氏(左)とコックフィールド氏(右)は各国ごとの慣習に合わせた、ローカライズを強化すると語る
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 またサービスの利用者が一堂に会する「TwitchCon」という自社イベントも開催しており、そこには数万人が訪れます。そのようなリアルの場でも、実際に意見を聞いています。そうしたデータを基に、各国ごとに最適化すべきポイントの優先順位付けをしたリストを作り、対応を進めています。

――アマゾンと連携した施策を日本向けに考えていますか。

コックフィールド氏: アマゾンとは製品やサービスに革新をもたらすためにグローバルで取り組むことが一般的です。例えば、「Twitch Prime」もその1つ。アマゾンの有料会員組織「Amazon Prime」の会員が、Twitchと会員IDを連携することで、動画視聴時に広告を非表示にできるといった優遇を得られます。ですが、各国ごとにローカルの取り組みをすることはほとんどありません。ですから、日本のアマゾンと連携した施策も今は予定をしておりません。

(文/中村勇介=日経トレンディネット)